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損益分岐点分析の公式をまとめて解説(CVP分析)『損益分岐点と営業レバレッジ』

財務・会計 第27回

財務・会計・管理会計・意思決定 00613分42秒2026年2月14日公開

「利益がプラスマイナス0、つまりトントンになる売上高はいくらなのか」。動画はこんな問いかけから始まります。このページでは動画の流れにそって、変動費比率と限界利益率、損益分岐点売上高の公式、損益分岐点比率と安全余裕率、営業レバレッジ、試験で出る6つのタイプ、そして最後の思考実験をまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。

利益がトントンになる売上高は、いくら?

「利益がプラスマイナス0、つまりトントンになる売上高はいくらなのか」。動画は、事業の採算を見るための強力なツールとして損益分岐点分析(CVP分析)を取り上げ、その計算式を1つ1つ見ていきます。試験対策はもちろん、実際のビジネスでも大事な考え方だと動画は言います。

講師が強調するのは、公式を丸暗記することではありません。売上高・変動費・固定費・利益という4つの要素がどう絡み合うかを読み、その企業がどれだけ儲けやすい構造なのか、不況にどれだけ強いのかを数字で読み解く力をつけることです。動画の流れは次のとおりです。

  • 基本の式:売上高-変動費-固定費=利益
  • 変動費比率と限界利益率
  • 損益分岐点売上高の公式
  • 安全性を測る損益分岐点比率と安全余裕率
  • 利益の伸び方を測る営業レバレッジ
  • 試験で出る6つのタイプと、最後の思考実験

出発点は、カフェの損益

動画が出発点と呼ぶ式は、とてもシンプルです。売上高-変動費-固定費=利益。動画は、カフェを経営している場面を設例にします。売上が100万円、コーヒー豆やカップ代などの変動費が40万円、家賃や人件費などの固定費が50万円とすると、100-40-50で利益は10万円です。

売上高 100変動費 40豆・カップ代など限界利益 60限界利益率 60%固定費 50家賃・人件費など利益10100 - 40 - 50 = 10(単位:万円)
売上から変動費を引いた残り(限界利益)で固定費を払い、そのまた残りが利益です。

変動費は売上に応じて増減する費用、固定費は売上が変わっても同じようにかかる費用です。ここまでは素直に計算できます。ただ、聞き手はこう切り出します。

売上が上がるたびに変動費も計算し直すのは、ちょっと面倒です。売上と変動費の関係を、もっとシンプルに捉えられませんか?

いい点ですね。そこで登場するのが、変動費比率という考え方です。

変動費比率と限界利益率:売上100円のうち、手元に残るのは?

変動費比率は、売上高に対して変動費が何%を占めるかという割合で、動画ではα(アルファ)で表すことが多いと説明されます。カフェなら40÷100で0.4、つまり40%です。これを使うと、基本式は売上高×(1-変動費比率)-固定費=利益と書き換えられます。

この(1-変動費比率)の部分が限界利益率です。カフェなら1-0.4で0.6、つまり60%。動画は、売上が100円増えるごとに60円が、固定費と利益に回るという意味だと言います。売上高から変動費を引いた残りが限界利益で、限界利益率は限界利益÷売上高でも求められます(60÷100=60%)。

聞き手は、売上の中から先に変動費の分を取り除き、残った部分を計算するイメージだとまとめます。これなら売上がいくらになっても、変動費比率さえ分かれば利益をすぐ計算できる、という便利さです。

損益分岐点売上高:利益に0を入れるだけ

損益分岐点は、利益が0になる点です。先ほどの式の利益のところに0を入れて整理すると、動画が「試験でも必ず問われる」と呼ぶ重要な公式が現れます。

損益分岐点売上高の公式

  • 損益分岐点売上高 = 固定費 ÷(1-変動費比率)
  • つまり、固定費を限界利益率で割る。
  • カフェなら 50 ÷ 0.6 ≈ 83.3万円

聞き手は、このカフェは月に約83.3万円売らないと赤字になり、この数字が経営者が毎月最初に超えなければならないハードルになる、とまとめ、講師が「はい。そうです」と応じます。確かめてみましょう。売上が83.3万円なら限界利益は83.3×0.6で約50万円。固定費50万円をちょうど払い終えて、利益は0です。

金額売上高(万円)固定費 50売上総費用損益分岐点現在の売上 10083.3100安全余裕
売上線と総費用線の交点が損益分岐点。現在の売上との差が安全余裕です。

(補足:動画では触れていませんが、この計算は「変動費は売上に比例して増え、固定費は売上が変わっても一定」という単純化のうえに成り立っています。実際の企業では、売上が大きく変わると固定費も変わることがあるため、あくまで目安の計算です。)

安全性を測る2つの指標:崖っぷちからの距離

聞き手が切り出します。最低限の目標は分かったが、今の自分たちはそのハードルからどれくらい離れているのか、つまり事業の安全性が気になる、と。講師は、2つセットの指標を紹介します。

1つめの損益分岐点比率は、損益分岐点売上高が現在の売上高の何%にあたるかを示します。計算式は損益分岐点売上高÷実際の売上高。(補足:動画は「現在の売上高が損益分岐点売上高の何%の位置にあるか」と言いますが、式の向きは、この計算式のとおりです。)カフェで実際の売上が100万円なら、83.3÷100で83.3%です。動画によれば、この比率は低いほど赤字から遠く、経営が安定しています。もし99%なら、売上がほんの少し落ちただけで赤字に転落する、綱渡りの状態です。

2つめの安全余裕率は、現在の売上があと何%落ちたら赤字になるか、という余裕を示します。計算式は1-損益分岐点比率。カフェなら1-0.833で16.7%です。実際、売上が100万円から16.7%減ると約83.3万円で、ちょうど損益分岐点に重なります。

現在の売上高 100 を 100% として損益分岐点比率83.3%16.7%安全余裕率損益分岐点売上高 ÷ 売上高83.3% + 16.7% = 100%安全余裕率 = 1 - 損益分岐点比率
危険度(比率)と安全度(余裕率)は、足すと100%の裏表です。

崖っぷちから、どれだけ安全な場所にいるか、という見方ですね。危険度が83.3%なら安全度は残りの16.7%。鏡映しの関係で、どちらかを計算すればもう片方もすぐ分かる。

その関係性を理解しておくことが大切です。損益分岐点比率と安全余裕率は、足すと必ず100%になります。セットで覚えておきましょう。

営業レバレッジ:自転車か、ロケットか

聞き手は、ビジネスの面白さは守りだけではなく、売上が増えたとき利益がどれだけ爆発的に増えるかという攻めの視点にもある、と話を進めます。そこで出てくるのが営業レバレッジです。動画は、事業の性格が自転車なのかロケットなのかを示すものだと、たとえます。

自転車とロケット(動画のたとえ)

自転車型は、固定費が低い事業です。ペダルをこいだ分だけ着実に進み、売上が上がれば利益も素直に増えますが、爆発力はありません。ロケット型は、固定費という巨大なエンジンを積んだ事業です。打ち上げ、つまり損益分岐点を超えるまでは大変ですが、いったん軌道に乗れば、わずかな追加の売上で大きな利益に届きます。動画は、装置産業や大規模な研究開発が必要なIT企業などをロケット型の例に挙げ、ハイリスク・ハイリターンだと言います。

計算式は限界利益÷利益です(ここでの利益は営業利益)。カフェなら60÷10で6倍。動画では、値が大きいほど固定費が大きい構造で、売上が10%振れただけで利益が30%、40%と跳ね上がる可能性があります。一方で、売上が少し減ると重い固定費がのしかかって、利益が一気に吹き飛ぶ危険も潜んでいる、と動画は言います。

自転車型:固定費が小さい(固定費10)利益 50 → 56営業レバレッジ 1.2倍+12%ロケット型:固定費が大きい(固定費50)利益 10 → 16営業レバレッジ 6倍+60%どちらも売上100・限界利益率60%(単位:万円)売上が10%増えたときの利益の伸び方
同じ10%の売上増でも、固定費が大きい会社ほど利益は大きく動きます(動画にない設例)。

聞き手が、営業レバレッジとさっきの安全余裕率には関係がありそうだと気づきます。講師は「その通り」と答え、営業レバレッジは安全余裕率の逆数、つまり営業レバレッジ=1÷安全余裕率だと説明します。カフェなら1÷0.167で約6倍となり、限界利益÷利益の値と一致します。

安全余裕率が低い、つまり余裕のない状態ほど、営業レバレッジは高くなる。崖っぷちで戦っているときこそ、一発逆転のホームランの威力が最大になる、ということですか?

まさにそうです。余裕がないのは損益分岐点に近いところで商売をしている状態で、莫大な固定費をようやく払い終えたところ。追加の売上から得られる限界利益が、ほぼ丸ごと利益に変わるので、利益の増え方が劇的になるんです。

(補足:確かめてみます。カフェで売上が10%増えて110万円になると、利益は110×0.6-50で16万円。10万円から60%増で、6倍×10%と合います。売上が10%減って90万円なら利益は4万円で、60%減です。なお、この「安全余裕率の逆数」が成り立つのは、1-損益分岐点比率が利益÷限界利益に等しいからです。カフェなら損益分岐点比率は固定費÷限界利益=50÷60、安全余裕率は10÷60です。また、損益分岐点を超えたあとは、売上が増えた分の限界利益はどの水準でも全額が利益になります。レバレッジが大きいのは、土台の利益が小さく、同じ増加額でも伸び率が大きく見えるためです。)

(補足:動画の単純化の訂正です。営業レバレッジが大きいことを固定費が大きい構造と説明していますが、同じ会社でも売上の水準で値は変わります。カフェの売上が200万円なら、利益は200×0.6-50で70万円、営業レバレッジは120÷70で約1.7倍まで下がります。固定費が大きくても、損益分岐点から十分に離れていれば、レバレッジは小さくなるということです。)

試験で出る6つのタイプ

聞き手が、実際の試験ではどんな切り口で出るのか、変動費や固定費がいつもきれいに分かっているわけではないですよね、と尋ねます。講師は、応用の仕方が問われ、典型的なパターンは大きく6つに分けられると紹介します。次の表は、動画の整理に、動画にはないカフェの数字を添えたものです(単位は万円)。なお、6つの分け方は動画の整理で、出題がこの6つに限られると決まっているわけではありません。

タイプ動画の説明カフェで試すと
1損益分岐点売上高を直接求める。公式に当てはめるだけ50÷0.6≈83.3
2損益分岐点比率や安全余裕率を求める。ここまでが基本83.3%と16.7%
3目標利益を達成する売上高を求める目標20なら≈116.7
4経常利益ベースで求める固定費55とみなして≈91.7
5コストなどが変化した後の値を求める固定費52として≈86.7
6連立方程式で、固定費と変動費比率を突き止める固定費50、比率0.4

タイプ3:目標利益から売上高を逆算する

基本式の利益のところに目標を入れ、売上高をXとして方程式を解きます。動画の例は利益1,000万円ですが、カフェの規模に合わせて目標利益を20万円にしてみます。0.6X-50=20で、X=70÷0.6≒116.7万円。116.7×0.6で約70万円、そこから固定費50万円を引くと、たしかに20万円です。

タイプ4:経常利益ベース

この分析で扱う利益は、通常は営業利益です。しかし問題によっては経常利益で問われ、そのときは営業外の収益や費用を、基本的には固定費の一部として調整して計算すると動画は言います。

(補足:動画にない設例です。調整の向きは、営業外費用は固定費に足し、営業外収益は固定費から引くと考えます。カフェに営業外費用8万円、営業外収益3万円があるとすれば、固定費を50+8-3=55万円とみなして、55÷0.6≒91.7万円です。営業外の費用が収益を上回る分(ここでは5万円)だけ固定費が増えるので、営業利益ベースの83.3万円より約8.3万円高くなります。実際の問題では、営業外損益の扱いが問題文で指定されていることがあるため、その指示に従ってください。)

タイプ5:条件が変わったあとの値

動画の例は、人件費が10%上がったら損益分岐点はどうなるか、広告宣伝費を500万円増やしたら目標利益に必要な売上はいくらか、といったシミュレーションです。変動費比率や固定費の数字を問題文の指示どおりに書き換えて、もう一度基本の式に当てはめ直します。たとえば、カフェの固定費のうち人件費が20万円で、それが10%上がるとします。固定費は52万円になり、損益分岐点売上高は52÷0.6≒86.7万円です。

タイプ6:連立方程式で探偵になる

前期と今期の売上高と利益、この2つの情報だけから、隠れた固定費と変動費比率を突き止める問題です。動画は、前期のデータで式が1本、今期のデータでもう1本作れて、未知数は固定費と変動費比率の2つだから、連立方程式で必ず解けると言います。

連立方程式の設例(動画にない設例)

  • 前期:売上90、利益4 今期:売上120、利益22
  • 限界利益率をk、固定費をFとすると、90k-F=4、120k-F=22
  • 2式を引くと30k=18。k=0.6、変動費比率は0.4
  • F=90×0.6-4=50。今期でも120×0.6-50=22で、一致する。

(補足:この解き方は、固定費と変動費比率が前期も今期も同じだという前提で成り立ちます。問題文で確かめましょう。)

どのタイプも、最初のカフェで見た基本式、売上高-変動費-固定費=利益を、どう使いこなすかが問われている、というのが動画の結論です。

最後の問い:黒字のはずなのに、現金が減っていく

聞き手は、これらの式はただの数学のパズルではなく、企業の健康状態を映すレントゲンのようなものだと言います。講師は、損益分岐点比率が80%だと報告するだけでなく、なぜ比率が高いのか、固定費が重すぎるのか、商品1個あたりの儲けが少ないのかと、数字の裏側にある原因まで考えることが大切だと続けます。

そして動画は、最後の思考実験を投げかけます。ある会社は、計算上の損益分岐点売上高をちゃんと達成していて、帳簿上は黒字のはずです。それなのに、手元の現金はどんどん減り、資金繰りは悪化の一途をたどっています。損益分岐点の計算式だけでは見えない、ビジネスのもう1つの側面とは何か、という問いです。動画は答えを示していません。

(補足:動画は答えを示さないので、考え方の一例を書きます。損益分岐点分析は、売上や費用を損益計算の数字で扱います。売上が計上されても、掛けで売っていれば現金はまだ入っていません。たとえばカフェの売上100万円のうち30万円が未回収で、変動費40万円と固定費50万円は全額その月に現金で払ったとします。利益は10万円の黒字ですが、現金は70-40-50で20万円の減少です。ほかにも、在庫の積み増しや借入金の返済のように、利益には表れずに現金を減らす動きがあります。利益と現金のズレを見るための道具が、キャッシュフロー計算書です。)

まとめ

この回のまとめ

  • 基本式は売上高-変動費-固定費=利益。変動費比率で書き換えると、売上高×(1-変動費比率)-固定費=利益。(1-変動費比率)が限界利益率。
  • 損益分岐点売上高は固定費÷限界利益率。カフェなら50÷0.6≈83.3万円。
  • 損益分岐点比率は損益分岐点売上高÷実際の売上高で、低いほど安定。安全余裕率は1-損益分岐点比率で、両者を足すと100%。
  • 営業レバレッジは限界利益÷利益で、安全余裕率の逆数。余裕が小さいほど大きく、売上の増減に対して利益が大きく動く。
  • 動画は試験を6つのタイプに整理した。どれも基本式の応用で、タイプ6は連立方程式で固定費と変動費比率を求める。
  • 損益分岐点の計算は損益計算の話。黒字でも現金が減ることがあり、別の見方が要る(補足)。

動画の締めくくりは、計算式の裏側で何が起きているのかを考える問いでした。公式を覚えたら、数字の向こう側にある事業の姿まで読む。その視点を持って、もう一度動画を聞いてみてください。

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