生産性指標 徹底解説『労働生産性を3つの計算式で分解』
財務・会計 第31回
「生産性が高いって聞くと、まあなんとなく効率が良いみたいなイメージが湧くじゃないですか」「え、そうですね。でも具体的に何をどう測ってどう分析するのか」。動画はこんな会話から始まります。このページでは動画の流れにそって、付加価値額の計算、労働生産性と資本生産性、5つの関連指標、そして労働生産性を3つの式に分解する考え方をまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。
「生産性が高い」は、何を測っているのか
動画は、こんな会話から始まります。「生産性が高いって聞くと、まあなんとなく効率が良いみたいなイメージが湧くじゃないですか」「え、そうですね。でも具体的に何をどう測ってどう分析するのか」。この回のテーマは、企業の経営分析で大事な生産性の指標です。動画では、生産性を、企業が人や物といった資源をどれだけうまく使って価値を生み出しているかを示す、いわば企業の実力を測る指標だと紹介します。理解すると、その企業の強みや課題が見えてくる、という入り口です。
定義は、動画ではとてもシンプルです。生産性=産出量(アウト
(補足:JIS Z 8141:2022(生産管理用語)でも、生産性は投入量に対する産出量の比率とされます。備考では、分子には通常、生産量・生産金額・付加価値が、分母には労働量が使われ、投入資本・設備・原材料などの量を使うこともある、と説明されています。)
(補足:動画は理由まで述べていません。売上高には、外部から仕入れた原材料や外注費の分も含まれ、自社が新たに生み出した価値とは言えないため、とされます。)
そして投入する資源は、大きく人と物に分けられます。人に注目するのが労働生産性、物に注目するのが資本生産性です。
- 労働生産性=付加価値額÷従業員数。従業員1人当たりが、どれだけの付加価値を生み出したかを示します。
- 資本生産性=付加価値額÷有形固定資産。企業が持つ有形固定資産が、どれだけ付加価値を生み出しているかを示します。動画では、パーセン
テージで表すこともあると触れています。
(補足:資本生産性の分母は、動画では有形固定資産です。資料によっては総資本や設備など別の分母で説明されることがあるため、試験では問題文の式や定義に従ってください。)
付加価値額の計算:動画が示す2つの方法
では、肝心の付加価値額はどう計算するのでしょうか。動画は、大きく2つの方法があると説明します。
付加価値額は重要なキーワードですね。計算方法は、どうなっているんですか。
大きく2つあります。1つは比較的シンプルな方法で、営業利益に人件費と減価償却費を足します。
もう1つは。
もう少し詳しい方法です。経常利益に、人件費にあたる項目、支払利息から受取利息を引いたもの、賃借料、租税公課などを足し合わせます。
- 簡単な方法:付加価値額=営業利益+人件費+減価償却費
- 詳しい方法:付加価値額=経常利益+人件費など+(支払利息−受取利息)+賃借料+租税公課など
項目が多くて戸惑いますが、動画は、企業を取り巻く関係者の利益を合わせたものと捉えると分かりやすい、と整理します。関係者とは、株主、従業員、銀行、国などです。企業が生み出した価値が、最終的に誰の取り分になるのかを積み上げている、というイメージです。
(補足:動画の整理を、項目に当てはめてみた例です。)
| 足す項目 | 主な受け取り手 |
|---|---|
| 経常利益 | 株主・企業自身 |
| 人件費 | 従業員 |
| 支払利息−受取利息 | 銀行などの貸し手 |
| 租税公課 | 国・自治体 |
| 賃借料 | 土地・建物などの貸し主 |
(補足:付加価値額の求め方は、売上高から外部で買った原材料や外注費などを引く控除法と、利益や費用を積み上げる加算法に分けて説明する資料が多いとされています。動画の2つは積み上げ型です。また、動画の詳しい方法では減価償却費が挙げられていませんが、積み上げ型では減価償却費も加える説明の資料が一般的とされます。どの項目を含めるかは資料により異なるので、試験では問題文に示された式に従ってください。)
以降の計算を確かめるため、ここで動画にない設例を置きます。A社は、従業員40人、売上高5億円、営業利益2,000万円、人件費9,000万円、減価償却費1,000万円、有形固定資産2億4,000万円です。簡単な方法で付加価値額を求めると、2,000+9,000+1,000=1億2,000万円になります。
基本の2つと、関連する5つの指標
動画は、基本の2つ(労働生産性と資本生産性)に加えて、生産性を深く理解するための関連指標が5つあると続けます。A社の数字で並べてみましょう(補足:表の数字はすべて、動画にない設例です)。
| 指標 | 式 | A社の値 |
|---|---|---|
| 労働生産性 | 付加価値額 | 300万円 |
| 資本生産性 | 付加価値額 | 50% |
| 1人当たり売上高 | 売上高 | 1,250万円 |
| 付加価値率 | 付加価値額 | 24% |
| 資本装備率 | 有形固定資産 | 600万円 |
| 1人当たり人件費 | 人件費 | 225万円 |
| 労働分配率 | 人件費 | 75% |
- 1人当たり売上高:従業員1人がどれだけ売上を稼いでいるか。
- 付加価値率:売上高のうち、どれだけが付加価値になったかという割合。動画では企業の収益力を示すと説明されます。
- 資本装備率:従業員1人当たり、どれくらいの有形固定資産(設備)を使っているか。動画では労働装備率とも言うとされます。
- 1人当たり人件費:従業員1人当たりの平均人件費。
- 労働分配率:生み出した付加価値のうち、人件費として従業員にどれだけ分配されたかを示す割合。
聞き手は、たくさんの指標が出てきたけれど、バラバラに存在するのではなく互いに関連しているんですよね、とまとめ、ここが一番面白いところだと言います。講師は「そうなんです」と受け、特に労働生産性は、他の指標を使って3つの違う側面から分解できると話を進めます。この関係性の理解が分析の鍵、というのが動画の中心です。
分解式①:売上の「量」と「質」
1つ目は、労働生産性=1人当たり売上高×付加価値率です。
掛け算してみると、売上高÷従業員数に付加価値額÷売上高を掛けるので、売上高が消えて、付加価値額÷従業員数になりますね。労働生産性そのものです。
ご名答です。
動画では、1人当たり売上高は従業員の売上貢献度、つまり「量」、付加価値率はその売上の「質」だと説明されます。この両方が労働生産性を決める、という見方です。
(補足:設例での確かめです。A社は1,250万円×24%=300万円でした。従業員は同じ40人、付加価値額も同じ1億2,000万円で、売上高が10億円のB社を考えると、1人当たり売上高は2,500万円、付加価値率は12%です。2,500万円×12%=300万円と、労働生産性は同じ数字になります。A社は売上は小さいが質で稼ぐタイプ、B社は量で稼ぐタイプです。同じ労働生産性でも、中身は違うことがあります。)
分解式②:設備の「量」と「質」
2つ目は、労働生産性=資本装備率×資本生産性です。従業員1人当たりの設備(資本装備率)と、その設備が付加価値を生み出す力(資本生産性)の掛け算です。
1人当たりの設備がすごく充実していても、その設備自体の稼ぐ力、資本生産性が高くないと、結局、労働生産性は上がらないということですね。
その通りです。まさにそういう関係です。
動画のたとえ:道具
講師は、「どんなに良い道具を持っていても使いこなせなければ意味がない」というのに似ていると説明します。聞き手は、設備投資の量と質の両方が大事だとまとめています。
(補足:設例での確かめです。A社は600万円×50%=300万円。もし有形固定資産を2倍の4億8,000万円にしても、付加価値額が1億2,000万円のままなら、資本装備率は1,200万円、資本生産性は25%になり、1,200万円×25%=300万円です。設備を増やすだけでは、労働生産性は変わりません。)
分解式③:人件費とのバランス
3つ目は、労働生産性=1人当たり人件費÷労働分配率です。今度は割り算になります。
1人当たり人件費を労働分配率で割る。これも計算すると、確かに労働生産性になりますね。どう解釈すればいいんでしょうか。
コストとの関係を示しています。たとえば、高い給与、つまり1人当たり人件費を払っていても、労働分配率が適切にコントロールされていれば、高い労働生産性を維持できると読み解けるんです。
逆に言うと、給料をただ安くすれば生産性が上がるかというと、そういう単純な話ではないということですね。
まさに。高い給与を払うことが成長への投資になるのか、それとも単なるコストで終わってしまうのか。その企業の姿勢が、この式から透けて見える気もします。
(補足:動画の説明の単純化を直しておきます。この式は、定義から必ず成り立つ関係で、原因と結果を表すものではありません。たとえばA社で、付加価値額を変えずに1人当たり人件費を225万円から255万円に上げると、労働分配率が75%から85%に上がるだけで、255万円÷85%=300万円と労働生産性は変わりません。逆に、1人当たり人件費を200万円に下げた場合を、簡単な方法の付加価値額で考えます。人件費が1,000万円減る分、営業利益が1,000万円増えるので、付加価値額は1億2,000万円のままです。労働生産性は300万円で変わらず、労働分配率が約66.7%に下がるだけです。人件費を削っても、労働生産性は上がらないという点は、動画の結論と同じ向きです。)
3つの分解式を、動画の整理にそって並べ直します(A社の数字は動画にない設例です)。
| 分解式 | 見える側面 | A社の計算 |
|---|---|---|
| 1人当たり | 売上の量と質 | 1,250万円 |
| 資本装備率 | 設備の量と質 | 600万円 |
| 1人当たり | コストとの関係 | 225万円 |
どの式も答えは同じ労働生産性(300万円)です。違うのは、どの角度から中身を見るかです。売上の量と質を見たいなら①、設備の使い方を見たいなら②、人件費とのバランスを見たいなら③、と使い分けると、数字の裏にある理由を考えやすくなります。
試験の注目点(動画の整理にそって)
- 動画では、生産性の産出には売上高ではなく付加価値額を使うと整理される。
- 労働生産性は、3つの式に分解できる。1人当たり売上高×付加価値率、資本装備率×資本生産性、1人当たり人件費÷労働分配率。
- 掛け算の2つは、共通の項目(売上高、有形固定資産)が約分で消える仕組み。3つ目は割り算で、人件費が消える。
- 動画では、労働生産性と資本生産性に加えて、関連指標を5つに整理している。
動画の最後の問い
動画の終盤は、こんな振り返りです。生産性という1つの言葉の裏には、売上、利益、設備、人件費といったさまざまな要素が絡み合っています。聞き手は、企業の経営活動そのものを映し出す鏡のようだとまとめます。そして講師は、関係性を理解し、なぜその数値になっているのかを考えることで、表面的な数字の奥にあるその企業のストーリーを読み解ける、と話します。
最後に、聞いている人への問いかけがあります。「もしあなたが企業の健全性を素早くチェックするとしたら、今日取り上げた生産性指標の中でまず最初にどれを見ますか?そしてその理由は何でしょうか?」。動画は答えを示しません。
(補足:動画にない一例です。3つの分解式でつながっているので、どこから入っても他の指標へ広げられます。たとえば労働生産性から入り、売上の量と質、設備、人件費のどこが効いているかを順にたどる、という見方もあります。)
まとめ
- 生産性は、投入量に対する産出量の比。動画では、産出に付加価値額を使い、売上高そのものではない。
- 付加価値額の計算は、動画では2つ。簡単な方法は営業利益+人件費+減価償却費。詳しい方法は経常利益を出発点に、関係者の取り分を積み上げる。含める項目は資料により異なる。
- 労働生産性=付加価値額÷従業員数。資本生産性=付加価値額÷有形固定資産。
- 関連指標は5つ。1人当たり売上高、付加価値率、資本装備率、1人当たり人件費、労働分配率。
- 労働生産性の分解は3つ。1人当たり売上高×付加価値率(量と質)、資本装備率×資本生産性(設備の量と質)、1人当たり人件費÷労働分配率(コストとの関係)。
- 3つの式は定義から成り立つ関係で、原因と結果ではない。賃上げや賃下げだけで労働生産性が決まるわけではない。
動画の終盤では、聞き手が「数字の表面だけに一喜一憂せず、その数字がどんな仕組みで成り立っているのかを理解することが本質的な分析の第一歩」とまとめ、講師は「それこそが生産性分析の最大の魅力」と応じます。式の関係を、1つずつ手を動かして確かめておきましょう。
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