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損益分岐点分析の基本(CVP分析)『利益管理の必須ツール』

財務・会計 第28回

財務・会計・管理会計・意思決定 00714分5秒2026年2月14日公開

「あなたが新しい事業を始めたとします。…売上は順調に伸びてて、数字上は利益が出てるように見える。でも月末に口座を見てみると、あれなぜかお金が残ってないみたいな」。動画はこんな場面から始まります。このページでは動画の流れにそって、変動費と固定費、営業レバレッジ、限界利益、損益分岐点売上高の求め方、複数商品のときの限界と価格競争への活用、最後の問いをまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。

儲かっているようで、儲かっていない?

動画は、新しい事業を始めた場面から入ります。オンラインストアでもカフェでもかまいません。売上は順調に伸びていて、数字の上では利益が出ているように見える。それなのに月末に口座を見ると、なぜかお金が残っていない。この「儲かっているようで儲かっていない」という不安を、はっきりした地図に変えるための道具が、今回の損益分岐点分析です。

動画ではCVP分析、つまりコスト・ボリューム・プロフィット分析とも呼ばれる、と紹介されます。事業の費用構造を解剖して、売上がいくらを超えたら赤字から黒字に変わるのか。その「魔法の数字」を見つける分析です。このページも、動画の流れにそって進めます。

動画は、最初の作業である「費用を2つに分ける」という一見単純なことに、その会社の経営戦略が映し出される、とも予告します。まずはそこからです。

費用を2つに分ける:変動費と固定費

変動費は、売上や生産量に比例して増減するコストです。製品の原材料費、商品の仕入れ原価、売上に応じて支払う販売手数料が典型例で、記号はVC(バリアブル・コスト)。聞き手は、パン屋なら小麦粉やバター、ネットショップなら商品が売れるたびにかかる決済手数料や送料をイメージします。売れなければ発生しないコストです。

一方の固定費は、売上があってもなくても、事業を続ける限り一定額かかるコストで、記号はFC(フィクスド・コスト)。オフィスの家賃、正社員の人件費、設備の減価償却費、サーバー代などです。

種類動き方動画の例
変動費(VC)売上や生産量に比例原材料費・仕入れ原価・販売手数料
固定費(FC)売上に関係なく一定家賃・正社員の人件費・減価償却費・サーバー代

聞き手は、パンが1つも売れない日でも、お店の家賃とパン職人さんの給料は払わなければならない、と言います。いわば事業を動かし続けるための維持費のようなものです。ところが、ここで聞き手が現実的な疑問を挟みます。

現実の費用は、こんなにきれいに2つに分けられるものですか。営業担当者の基本給は固定費でも、売上に応じたインセンティブは変動費ですよね。

素晴らしい指摘です。そこが、この分析の最初の落とし穴であり、面白いところでもあります。多くの費用は、固定費と変動費の両方の性質を持っていて、混合費などと呼ばれます。電気代も、基本料金の部分と、使った分だけかかる部分がありますよね。

ということは、この費用分解は、経営者の判断が問われる部分になるわけですね。

まさにそうです。混合費をどう分けるかで、算出される損益分岐点は大きく変わります。だから、どの費用が何に連動して動くのかを深く理解することが、正確な分析の鍵になります。

コスト構造がビジネスモデルをつくる

動画は、固定費と変動費の比率、つまりコスト構造は、その会社のビジネスモデルの根幹だとまで言います。例に挙がるのが、ソフトウェア会社と飲食店です。

ソフトウェア会社は、開発費という莫大な固定費が最初にかかります。しかし一度完成すれば、追加で1本売るための変動費、つまりコピー代やダウンロードの通信費は、ほぼゼロに近い。聞き手は、飲食店ならコーヒー1杯ごとに豆やミルクの変動費がかかる、と対比します。講師は、この違いが営業レバレッジの考え方につながると言います。

ソフトウェア会社のように、固定費の割合が高くて変動費が低い事業は、営業レバレッジが高い状態です。動画によれば、損益分岐点を超えるまでは大きな赤字が続きますが、一度超えれば、売上の増加がほぼそのまま利益に直結する、爆発的な収益性を秘めています。聞き手が、これはハイリスク、ハイリターンな構造ということか、と整理し、逆に、飲食店のように変動費比率の高いビジネスは、1つ1つの利益は少なくても、売上が落ち込んでも影響が限られる、ローリスク・ローリターンな構造だと言い換えます。

自社のコストを分解するだけで、事業の体質まで見えてくるんですね。

そうなんです。単に会計上のルールとして分けるのではなく、戦略的に自社のコスト構造を理解することが、とても大切になってきます。

(補足:この2つは分かりやすい典型例です。実際には飲食店にも家賃や人件費といった固定費があり、割合は業種や会社ごとに異なります。また、営業レバレッジの値は同じ会社でも売上の水準で変わります。固定費の割合が高いと値が大きくなりやすい、という目安です。)

限界利益:固定費の山を崩す武器

次の重要語が限界利益です。動画は、この分析の心臓部と呼びます。計算式は、売上高−変動費。商品を1つ売って得た売上から、その商品の仕入れや製造にかかった変動費だけを引いた部分です。

パン屋の例では、300円のパンが売れて、材料費である変動費が100円なら、限界利益は300−100=200円です。聞き手が確かめ、講師は「その通り」と応じます。この200円こそが、家賃や人件費といった固定費の大きな山を切り崩す唯一の武器になる、と動画は説明します。商品が1つ売れるたびに、固定費をどれだけ回収できたかを示す指標が、限界利益だということです。

パン1個(売値300円)の中身変動費 100円限界利益 200円(約67%)月の限界利益の合計が、固定費100万円を超えたら利益固定費 100万円① 60万円:赤字② 100万円:トントン③ 140万円:超えた分が利益
限界利益は、固定費の山を削っていく力です(棒の数字は動画にない例)。

たとえ:限界利益は「山を削る道具」

固定費は、毎月かならず乗ってくる大きな山です。パンが1個売れるたびに、限界利益の200円ぶんだけ山が削れます。山が100万円なら、100万円÷200円=5,000個で削りきれます。そこから先の1個1個が、そのまま利益になります。(動画にない設例です。)

だから見るべきなのは、売上高の大きさだけではなく、限界利益をどれだけ稼げているか。売上高が大きくても、変動費も同じくらいかかっているなら、固定費の山は崩れません。

動画は、売上高に対する限界利益の割合である限界利益率を、重要なKPIにする企業が多いと言います。パンの例では200円÷300円で、約67%。売上が1円増えるごとに、約67銭が固定費の回収と利益に貢献します。率を上げるには、値上げか変動費の引き下げですが、値上げはお客さんが減るかもしれず、変動費を下げようと安いものに変えれば、品質が落ちて満足度が下がるかもしれません。聞き手は、このジレンマの中で最適なバランスを探すのが経営者の腕の見せどころだ、とまとめます。

利益(P)は、限界利益で固定費をすべてカバーしきった後に、ようやく生まれます。売上高(S)、変動費(VC)、固定費(FC)で書けば、P=S−VC−FCです。

損益分岐点売上高を求める

役者がそろいました。損益分岐点は、損益がプラスマイナス0、つまり収支トントンになる売上高です。利益が0になる点ですから、限界利益=固定費となる点でもあります。限界利益で稼いだ総額が、固定費の山の大きさとちょうど等しくなった瞬間が、損の領域と益の領域を分ける境界線です。

損益分岐点売上高の求め方

  • 利益=売上高×限界利益率−固定費
  • 利益が0のとき、売上高×限界利益率=固定費
  • よって損益分岐点売上高=固定費÷限界利益率

動画の例は、固定費が月100万円で、パン屋のように限界利益率が67%の場合です。100万円÷0.67で、答えは約149万円。このパン屋は、月に約149万円の売上を達成して初めて収支がトントンになります。

売上高総費用固定費 100万円損益分岐点 150万円0100200300売上高(万円)← 赤字黒字 →
売上高の線と総費用の線が交わる点が損益分岐点です(動画にない設例:固定費100万円、変動費は売上の3分の1)。

(補足:149万円は、限界利益率を0.67に丸めたことで出た数字です。200円÷300円は正確には3分の2なので、100万円÷(2/3)=150万円になります。個数で考えても、100万円÷200円=5,000個、5,000個×300円=150万円です。図は150万円で描きました。このあとの動画の「49万円」「51万円」も、149万円を基準にした丸めのぶんだけ、厳密な値とずれます。)

現在地の把握と、未来のシミュレーション

この数字が分かると、経営状況をその場で把握できます。動画では、たとえば今日の売上がまだ100万円なら、あと49万円売らないと赤字だ、という見方ができるとします。また、いま200万円売り上げているなら、損益分岐点との差額51万円に限界利益率をかけた分が利益になっている、とも言います。式にすると、利益=(売上高−損益分岐点売上高)×限界利益率です。

この数字が分かっていると、経営状況をリアルタイムで把握できるんですね。

まさにそれが、損益分岐点分析の最大のメリットのひとつです。漠然とした不安が、具体的な行動目標に変わります。さらに、未来のシミュレーションにも使えるんです。

(補足:厳密に計算すると、売上100万円なら利益は100万円×2/3−100万円=約−33.3万円の赤字、売上200万円なら約+33.3万円の黒字です。動画のやり方(51万円×0.67)は約34万円で、丸めのずれです。)

シミュレーションの例として、動画は2つを挙げます。新しいオーブンを導入して固定費が月10万円増えたら、損益分岐点はいくら上がるか。新しい業者を見つけて変動費比率を5%下げられたら、どれだけ利益が出やすくなるか。

(補足:動画にない数字で確かめます。固定費が10万円増えると、損益分岐点は10万円÷(2/3)=15万円上がって165万円です。変動費比率は約33.3%なので、動画の「5%」を5ポイント下がると読めば、限界利益率は約71.7%、損益分岐点は約139.5万円です。相対的に5%減という意味なら約146万円で、動画はどちらかを示していません。)

動画の整理にそって:確認しておきたい点

  • 動画では、変動費は売上に比例して増減し、固定費は売上に関係なく一定とされる。
  • 動画では、限界利益は売上高−変動費、限界利益率は限界利益÷売上高。
  • 動画では、損益分岐点売上高は固定費÷限界利益率。限界利益=固定費となる点。

万能ではない:複数の商品とセールス・ミックス

ここで聞き手が、少し意地悪な質問をします。この分析も万能ではないはずだ。カフェなら、限界利益率の高いコーヒーと低いサンドイッチでは、売れるものの構成によって全体の利益構造が大きく変わりそうだ、と。

非常に重要なポイントです。多くの企業は複数の製品やサービスを扱っていて、限界利益率もそれぞれ違います。そのため、厳密な損益分岐点を1つに定めるのは正直むずかしい。通常は、過去の販売実績などから平均的なセールス・ミックスを仮定して、加重平均した限界利益率を使って計算します。

ということは、高利益率の商品の売れ行きが急に悪くなって、低利益率の商品ばかり売れるようになったら、会社全体の損益分岐点は、計算上よりも上がっているんですね。

その通りです。

この点を動画にない数字で確かめます。コーヒーの限界利益率を80%、サンドイッチを40%とし、固定費は月100万円とします。売上がコーヒー7対サンドイッチ3なら、加重平均の限界利益率は0.7×80%+0.3×40%=68%で、損益分岐点は100万円÷0.68≒約147万円。売上の構成が4対6に変わると、限界利益率は0.4×80%+0.6×40%=56%に下がり、損益分岐点は約179万円まで上がります。商品の値段も固定費も変わらないのに、売れ筋が変わっただけで、約32万円も動くのです。

売上の構成が変わると損益分岐点も動く① コーヒー7:サンドイッチ3コーヒー 70%サンド 30%限界利益率 0.7×80%+0.3×40%=68%損益分岐点売上高 約147万円② コーヒー4:サンドイッチ6コーヒー 40%サンド 60%限界利益率 0.4×80%+0.6×40%=56%損益分岐点売上高 約179万円
コーヒー80%・サンド40%は動画にない仮定です。構成だけで約32万円動きます。

だから動画は、損益分岐点を一度計算して終わりにせず、製品ミックスの変動を見ながら定期的に見直す必要がある、と言います。完璧な未来予測ツールではなく、自社の収益構造を理解して次の一手を考えるための思考のフレームワークだ、ということです。聞き手は、これを、静的なモデルだから現実の動的な変化に合わせて使いこなしていく必要がある、と言い換えています。

守りだけでなく、攻めにも使える

動画は、この分析は攻めの戦略にも使える、と続けます。競合が価格競争を仕掛けてきたとき、自社の損益分岐点などを把握していれば、どこまで価格を下げても耐えられるかという体力勝負の限界点が分かる。聞き手は、根性論ではなくデータに基づく判断だと受け止め、事業の健康状態を示す人間ドックの基準値のようだとも表現しました。

動画にない設例で限界点を出します。パンは1個300円、変動費は100円、固定費は月100万円で、いまは月6,000個売れており、値下げしても個数は変わらないと仮定します。利益ゼロになる価格は(100万円÷6,000個)+100円=約266.7円です。現実には値下げで個数も変わるので、考え方だけをつかむ単純な設例です。

パンの価格1個の限界利益月の利益(6,000個)
300円200円20万円
280円180円8万円
270円170円2万円
約266.7円約166.7円0円

動画の最後の問い:あえて損益分岐点を高くする企業とは

動画は最後に、問いを投げかけます。ここまでは、損益分岐点を下げて、より少ない売上で利益を出せる筋肉質な体質にすることが良い、という前提で話してきました。しかし、あえて戦略的に損益分岐点を高くする企業もある。たとえば巨額の投資をして最新の工場を建てたり、大規模な研究開発に資金を投じたりすることです。これらは固定費を大幅に増やし、損益分岐点を一気に引き上げます。

損益分岐点を高くするということは、赤字になるリスクを、自分から高めるということですか。

ええ。巨額の投資や大規模な研究開発は、すべて固定費を大幅に増やして、分岐点を一気に引き上げる行為です。では、どんな企業が何を狙って、そんな一見無謀にも見える戦略をとるのか。そのリスクの先にある巨大なリターンとは何か。ぜひ今日の話をヒントに考えてみてください。

動画は答えを示さないので、ここで1つの考え方を補足します。数字は動画にない設例です。同じ事業に、固定費の小さい案(固定費60万円、限界利益率40%)と、固定費の大きい案(固定費150万円、限界利益率70%)があるとします。

0利益売上300万円で利益は同じ150万円約214万円固定費大案固定費小案0100200300400500売上高(万円)
固定費の重い案は、分岐点が高い代わりに、超えたあとの伸びが大きくなります(動画にない設例)。
売上高固定費小案の利益固定費大案の利益
200万円20万円−10万円
300万円60万円60万円
500万円140万円200万円

損益分岐点は、小案が150万円、大案が約214万円です。売上300万円で利益は同じ60万円になり、伸びなければ大案が損をして、伸びれば大案が大きく勝ちます。売上が300万円から10%増えて330万円になると、利益は小案が72万円(20%増)、大案が81万円(35%増)です。この伸びの大きさが営業レバレッジで、一般に限界利益÷利益で表されるとされ、300万円のときは小案が2.0、大案が3.5です。

固定費の重い構造は、売上が伸びる見込みがあるなら強い武器になり、見込みが外れれば重い荷物になります。最初に出てきた営業レバレッジの話が、ここでつながります。

まとめ

  • 損益分岐点分析(CVP分析)は、売上がいくらを超えたら赤字から黒字になるかを見つける分析。
  • 費用は変動費(売上に比例)と固定費(一定)に分ける。混合費の分け方には判断が入り、結果が変わる。
  • 固定費の割合が高く変動費が低い事業は、営業レバレッジが高い(動画では、ハイリスク・ハイリターンと整理)。
  • 限界利益=売上高−変動費。固定費を回収する力。損益分岐点売上高=固定費÷限界利益率。
  • 動画の例(固定費100万円・限界利益率67%)は約149万円。補足:厳密には2/3で150万円。
  • 複数の商品は、セールス・ミックスを仮定して加重平均の限界利益率で計算する。構成が変われば分岐点も動くので、定期的に見直す。
  • 最後の問い:あえて固定費を増やして損益分岐点を高くする企業は何を狙うのか。

動画は、漠然とした不安を具体的な行動目標に変える、利益管理の必須ツールとしてこの分析を紹介しました。数字の意味を、自分のたとえで言えるようになるまで、くり返し聞いてみてください。

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