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資本利益率 徹底解説『ROEの死角と本当の稼ぐ力』

財務・会計 第30回

財務・会計・財務分析 00213分23秒2026年2月14日公開

「企業の収益性をはかる指標って色々ありますよね。例えばA社はROEが25%でB社は10%。これだけ聞くともうA社の圧勝に思えませんか?」。動画はこんな問いかけから始まります。このページでは動画の流れにそって、ROE、総資本事業利益率(ROA)、経営資本営業利益率、総資本経常利益率の4つの指標と、ROEの落とし穴をまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。

ROE25%のA社とROE10%のB社、どちらが優れている?

動画は、こんな問いかけから始まります。企業の収益性をはかる指標はいろいろあるけれど、中でもよく聞くのがROE(自己資本利益率)。A社はROEが25%、B社は10%。これだけ聞くと、A社の圧勝に思えませんか。でも、もしB社のほうがずっと健全な経営をしているとしたら――。今回は、この数字の裏にある物語を読み解いていきます。

講師は、資本利益率の指標を、会社を別々の角度から照らすスポットライトにたとえます。ライトを1つずつ点灯して、会社の全体像を立体的に浮かび上がらせる、という進め方です。登場するのは次の4つです。

ROE自己資本利益率当期純利益 ÷ 自己資本株主の成績表ROA総資本事業利益率事業利益 ÷ 総資本会社全体の効率経営資本営業利益率営業利益 ÷ 経営資本本業だけの稼ぐ力総資本経常利益率経常利益 ÷ 総資本一発屋ではない持続力
動画は4つの指標を、会社を照らす4つのライトにたとえます。

ROE:株主の成績表

最初は、多くの投資家が注目するROE(自己資本利益率)です。聞き手が「株主の成績表みたいなイメージでしょうか」と言い、講師は「株主の視点から見た最も直接的なリターンを示す指標」と応じます。計算式は次のとおりです。

ROE(%)= 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100

株主が出資したお金(自己資本)を元手に、会社が最終的にいくら儲けたか。その効率を見る指標です。ここでいう当期純利益は、聞き手が言い換えるように、売上から人件費・材料費・広告費・税金まで、ありとあらゆるコストを差し引いて最後に会社に残った利益です。講師によれば、これは株主への配当の原資になったり、内部留保として成長投資に回ったりします。だから株主からすれば、自分たちが出したお金でどれだけ効率よく稼いでくれたかを知りたい、その答えがROEだということです。

たとえばROEが10%なら、自己資本100億円に対して10億円の純利益を生んだことになります(10 ÷ 100 × 100 = 10%)。

(補足:動画にない話です。分母に、期末の自己資本を使うか、期首と期末の平均を使うかは、資料により異なります。また動画は「株主資本」とも言いますが、自己資本と株主資本は、範囲が少し違う用語として整理されることがあります。)

ROEの落とし穴:借入で高く見せられる

シンプルで分かりやすいから、みんなが注目するわけですね。でも、ここに落とし穴があるんですよね。

そこが今日の核心です。実はROEは、意図的に高く見せることができてしまうんです。

講師の説明はこうです。銀行から借入れをして他人資本を増やすと、総資産は増えますが、分母の自己資本の割合は相対的に小さくなる。聞き手が、利益が同じでも分母の自己資本が小さくなればROEは跳ね上がるのか、と確かめ、講師は「その通りです」と応じます。講師はこれを財務レバレッジを効かせると呼び、テストで高得点を取るために答えをこっそり見てしまうようなもの、とたとえます。

結果の数字は立派でも、土台はもろいかもしれません。借金が多ければ金利負担が重く、景気が悪くなったときには返済に窮するリスクも高まります。だからROEが高いからといって、手放しで素晴らしい会社だと結論づけるのは危険だ、というのが動画の主張です。聞き手も、ROEの高さが企業の隠れたリスクを示している可能性すらある、とまとめます。

(補足:動画の単純化の訂正です。借入れをしただけでは、自己資本の金額は変わりません。下がるのは、総資本に占める自己資本の割合です。ROEが高く出るのは、同じ規模の事業を、より少ない自己資本で動かしているときです。自己株式の取得などで自己資本そのものを減らした場合にも、分母が小さくなってROEは上がります。)

数字で確かめてみましょう。次の設例は、動画にはないものです。総資本はどちらも1000、事業利益(のちほど説明します)はどちらも100、借入れの利率は4%、税率は30%と仮定し、特別損益はないものとします。

無借金の会社借入のある会社自己資本1000500他人資本(借入)0500事業利益100100支払利息(4%)020当期純利益7056ROE7.0%11.2%総資本1000・税率30%と仮定した設例
同じ事業利益でも、自己資本が少ないほどROEは大きく出ます。

事業利益が同じ100、つまり総資本に対する稼ぐ力は同じなのに、ROEは7.0%と11.2%に開きます。借入れのある会社は、事業利益100から利息20を引いた80に税金がかかり、純利益は56。これを自己資本500で割るので、56 ÷ 500 = 11.2%です。無借金の会社は、70 ÷ 1000 = 7.0%です。

ところが、不況で事業利益が30に落ち込む年には、逆転が起きます。無借金の会社は30に税金がかかって純利益21、ROEは2.1%。借入れのある会社は、30から利息20を引いた10に税金がかかって純利益7、ROEは1.4%です。事業利益を総資本で割った3%が、借入利率の4%を下回ったためです。講師が話した土台の脆さは、こうした場面で表に出ます。

ROA:経営者の視点で会社全体を見る

株主の視点だけでは偏ってしまう。そこで登場するのが、会社全体の視点から効率を見る総資本事業利益率、通称ROAです。聞き手が「株主の視点からいわば経営者の視点に切り替わるそんな感じですかね」と言い、講師も「ええ、そう捉えていいでしょう」と答えます。

ROA(%)= 事業利益 ÷ 総資本 × 100

分母は、自己資本から総資本に変わります。総資本とは、株主からのお金(自己資本)も、銀行からの借金(他人資本)もすべて含めた、会社が事業に使うお金の総額です。持っているお金を全部使って、どれだけ稼げたかという会社の総合力を見ます。

分子の事業利益は、本業の儲けである営業利益に、預金の利息や持っている株式の配当金といった金融収益を足したものです。総資本には金融資産も含まれるので、そこから生まれるリターンも利益に含めて、資産全体の効率を見よう、という考え方だと講師は説明します。

(補足:動画にない話です。事業利益に含める金融収益の範囲は、資料により細部が異なります。)

講師は業種による違いにも触れます。巨大な工場を持つ製造業と、パソコン1つで仕事をするIT企業では、ROAの平均値は大きく違う。製造業は多くの資産が必要なのでROAは低めに出がちだが、その分安定した収益を生む。IT企業は少ない資産で大きな利益を上げる可能性があるので、ROAは高くなりやすい。だからROAを見るときは、業界の特性を理解することが大切だ、という話です。聞き手は、ホテルや航空のように設備投資が欠かせない業界でROAが高い会社があれば、相当経営がうまいと判断できる、と応じます。

(補足:動画の説明は一般的な傾向の話です。同じ業種の中でも会社ごとの差は大きいので、比べるときは同業他社や自社の過去の数字と並べるのが安全です。)

ここでROEの話に戻ります。講師が、ROEは高いのにROAが低い会社があったとしたら、と投げかけると、聞き手は、借金をたくさんして少ない自己資本で何とか利益を出している状態かもしれず、財務レバレッジに頼りきった危うい姿が見えてくる、と答え、講師は「ご名答」と受けます。ROEとROAを並べるだけで、財務戦略やリスクの度合いまで透けて見える、というわけです。

(補足:ROEの分子は当期純利益、ROAの分子は事業利益で、税金や利息の分だけ分子が違います。上の設例では、ROAは同じ10%なのに、ROEは無借金で7.0%、借入ありで11.2%でした。ROEとROAの差は、あくまで借入れ依存度を疑うきっかけとして使うものです。)

経営資本営業利益率:本業だけの稼ぐ力

でも、本業と関係のない土地を持っていて、それが遊休資産になっていたら、ROAの数字は悪化しますよね。

素晴らしい。次の指標への完璧なブリッジです。本業そのものの純粋な稼ぐ力を見るのが、経営資本営業利益率です。

経営資本営業利益率(%)= 営業利益 ÷ 経営資本 × 100

ここで大事なのが分母の経営資本です。講師によれば、総資本から、事業に直接使われていない資産を引いたものです。動画が挙げる例は、将来の値上がりを期待して持っているだけの土地、建設途中の建物(建設仮勘定)、本業とは関係のない投資目的の有価証券などです。これらは会社の資産ではあるものの、日々の営業活動で利益を生んではいません。分子も、金融収益を含めず、本業の儲けである営業利益だけを使います。

レストランの客席と厨房

聞き手は、これをレストラン全体の資産から、隣に買ったままの空き地や内装工事中のフロアを除いて、いま客席と厨房だけでどれだけ稼いでいるかを見るようなもの、とたとえ、講師は「最高の例え」と受けます。経営資本は、そのレストランの厨房と客席、つまり事業でいま実際に動いている資産だけを指します。

講師は実例も紹介します。都心の一等地に巨大な遊休地を持ち、ROAは業界平均以下だった会社。ところが経営資本営業利益率を計算すると、競合のトップ企業を大きく上回っていた。遊休資産が全体の効率を引き下げていただけで、事業そのものは非常に優良だった、という話です。聞き手は、全身のCTスキャン(ROA)で影が見つかったが、精密検査(経営資本営業利益率)をしたら心臓も内臓も健康だった、という健康診断にたとえます。講師は、この指標を現場の効率を測る最もシャープな物差しだと言います。

数字で見てみましょう。これも動画にない設例です。総資本1000のうち、遊休土地が200、建設仮勘定が100とします。営業利益は70、受取利息・配当金は5です。

総資本 1000経営資本 700客席と厨房にあたる資産除く 300遊休土地 200建設仮勘定 100総資本事業利益率 = 75 ÷ 1000 = 7.5%(事業利益=営業利益70+受取利息・配当金5)経営資本営業利益率 = 70 ÷ 700 = 10%(分子は営業利益70だけ)
遊休資産が大きいと、総資本で割る指標は低く見えます。

(補足:経営資本として何を除くかの細部は、資料により異なります。経営資本は、総資本から建設仮勘定と投資その他の資産(資料によっては繰延資産も)を引いて求める、とされることが多いようです。引く項目の細部は資料により異なるので、問題文の定義に従ってください。設例では、遊休土地と建設仮勘定を除く簡略化をしています。)

総資本経常利益率:一発屋ではない持続力

最後のピースは総資本経常利益率で、講師は、企業の持続的な収益力を見るための指標だと紹介します。

総資本経常利益率(%)= 経常利益 ÷ 総資本 × 100

分母はROAと同じ総資本で、分子が経常利益に変わります。聞き手は、また新しい利益が出てきたと言い、営業利益、事業利益、そして経常利益と整理します。講師の利益の整理は次のとおりです。

  • 営業利益:本業の儲け。
  • 経常利益:営業利益に、預金の利息のような財務活動の損益を足し引きしたもの。
  • 当期純利益:経常利益に、不動産の売却益のように、その年だけの特別な利益や損失を加減し、最後に税金を引いたもの。
営業利益 90本業の儲け(経営資本営業利益率の分子)+受取利息・配当金10 = 事業利益 100総資本事業利益率の分子-支払利息20 = 経常利益 80総資本経常利益率の分子±特別損益(この年は0)= 税引前当期純利益 80ビルの売却益などは、ここで加わる-税金24 = 当期純利益 56ROEの分子
営業利益から当期純利益までの階段です(数値は動画にない設例)。

(補足:動画は「財務活動の損益」と簡単に言っています。経常利益は、営業利益に営業外収益(受取利息・配当金など)を足し、営業外費用(支払利息など)を引いたものです。)

聞き手は、経常利益を、突発的なラッキーパンチやアンラッキーな事故を除いた、会社の実力どおりの普段どおりの利益だと言い換え、講師は「会社のパフォーマンスを平熱で見るための利益」と応じます。たとえば、ある年に本社ビルを売却したとします。最終的な当期純利益はものすごく大きくなりますが、来年も続くわけではありません。ROEの計算に使う当期純利益は、こうした一過性の要因で大きくぶれることがある、という指摘です。

設例で確かめます。上のROEが11.2%だった借入れのある会社が、別の年に本社ビルの売却益100を特別利益として得たとします。

項目通常の年売却益のあった年
経常利益8080
特別利益0100
当期純利益(税率30%)56126
ROE(期首の自己資本500で計算)11.2%25.2%
総資本経常利益率8.0%8.0%

ROEは11.2%から25.2%へ跳ね上がりますが、会社の実力が上がったわけではありません。総資本経常利益率は、どちらの年も8.0%のままです。動画の冒頭のA社のROE25%も、こうした事情を疑って見る価値がある、ということになります。

講師は、企業の価値は将来にわたって継続的に生み出すキャッシュフローで決まるという考え方が基本であり、その意味で総資本経常利益率は企業の長期的な価値を評価するうえで重要な示唆を与える、と説明します。

(補足:経常利益は会計上の利益で、キャッシュフローそのものではありません。減価償却費や運転資本の増減などの影響で、両者は一致しません。総資本経常利益率は、持続的な収益力を見る手がかりの1つと読むのが無難です。)

誰が、どの時間軸で見るか

4つの指標が出そろったところで、聞き手が整理します。同じ資本利益率という名前でも、誰がどの時間軸で見るかによって、まったく違う顔を見せる、という整理です。

指標聞き手の見立て
ROE株主から見た短期的なリターン
ROA経営者から見た会社全体の資産効率
経営資本営業利益率事業部長から見た本業の現場力
総資本経常利益率長期的な投資家から見た持続可能性

(補足:右の列は、動画の中での見立てです。公式の分類ではないので、まずは各指標の分子と分母を整理して覚えておくと、混同しにくくなります。)

だからこそ、1つの指標だけで判断してはいけない、と講師は言います。指標を組み合わせ、時系列で推移を追いかけることで、企業の経営状態が立体的に見えてくるからです。たとえば、ROAは横ばいなのに経営資本営業利益率が下がっているなら、本業の収益性が悪化していて、それを金融収益などでカバーしているのではないか、という仮説が立てられます。

この仮説を、設例の数字で確かめてみます。経営資本700、総資本1000のまま、営業利益が70から60に減り、受取利息・配当金が5から15に増えたとします。事業利益は75のまま、ROAは7.5%で変わりません。一方、経営資本営業利益率は、70 ÷ 700 = 10%から、60 ÷ 700 = 約8.6%へ下がります。

最後の問い:2つの指標の高低から、財務状況を推測する

動画は、今日の知識を使えば答えられるはずの問いを視聴者に投げかけて終わります。動画の問いは、ある企業の2つの資本利益率の高低の組み合わせから、財務状況を推測させるものです。ここでは、動画の中盤で話題になった、ROEは高くROAは低い場合で考えてみましょう。中盤では、講師と聞き手が、借入れを増やして少ない自己資本で利益を出している、財務レバレッジに頼った状態かもしれない、と話しました。

上の設例では、借入れのある会社のROEが、無借金の会社より高く出ました。ただし、事業利益が落ちる年には、その優位が逆転することも見ました。ROEの数字は、ROAと並べて見る習慣をつけましょう。

まとめ

この回のまとめ

  • ROEは「当期純利益 ÷ 自己資本」。株主の成績表だが、借入れが多い(自己資本が少ない)と高く出る。動画は、高いROEが隠れたリスクを示すことがあると話す。
  • ROAは「事業利益 ÷ 総資本」。事業利益は営業利益に金融収益を足したもの。業種で水準が違うため、業界の特性とあわせて見る。
  • 経営資本営業利益率は「営業利益 ÷ 経営資本」。遊休資産などを除いて、本業だけの稼ぐ力を見る。
  • 総資本経常利益率は「経常利益 ÷ 総資本」。特別損益を含まないので、一過性の要因に左右されにくい。
  • 1つの指標だけで判断せず、組み合わせと時系列で見る。ROEが高くてROAが低いときは、借入れへの依存を疑う(補足のとおり、あくまで手がかり)。
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