リスク選好と共分散・相関係数の基本『投資家心理と相関係数の計算ロジック』
財務・会計 第6回
「中小企業診断士の一次試験に向けて勉強を進めている、あるいはビジネスの必須知識としてファイナンスの基礎をしっかりアップデートしたいと思っているあなた」。動画はこんな呼びかけから始まります。このページでは動画の流れにそって、リスク回避的・中立的・愛好的という投資家の3タイプと、共分散・相関係数の計算ロジックをまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。
「投資家の心理」と「数字のロジック」を一緒に学ぶ回
動画は、ファイナンスの基礎を固めたい人への呼びかけから始まります。今回のテーマは、一見すると全く違う2つのもの、投資の世界の人間の心理と数字のロジックを掛け合わせて探求することです。専門用語や数式が並ぶと身構えてしまう人も多いけれど、暗記ではなく、直感的に「なるほど」と腹落ちする状態を目指す、と宣言されます。
動画が掲げる今回のミッションは2つです。
- 人間側の心理:投資家がリスクとリターンをどう天秤にかけているか。これがリスク選好です。
- 数字側のロジック:複数の投資を組み合わせたポートフォリオで、データがどう連動するか。そのものさしが共分散と相関係数です。
動画は、この2つは「切っても切り離せない関係」だと言います。心理の話が、最後には数字の話へとつながっていきます。
投資家は3タイプ:回避的・中立的・愛好的
まず心理の側からです。動画は、投資家と一口に言ってもリスクに対する考え方で大きく3つに分類され、同じリターンを前にしても、どのタイプかによって決断が全く違うものになる、と説明します。
- リスク回避的投資家:同じリターンならリスクの小さい投資を選ぶ。同じリスクならリターンの大きい投資を選ぶ。一般的な感覚に最も近いタイプだ、と聞き手も言い添えます。
- リスク中立的投資家:同じリターンが得られるなら、リスクの大きさは一切問わない。聞き手は、感情を挟まず純粋にリターンの結果だけを見ている状態、と言い換えます。
- リスク愛好的投資家:確実なリターンよりも、あえて不確実性の高い(リスクの高い)リターンを好む。確実な利益よりも、もしかしたらすごく大きな利益になるかもしれない、その「ブレ幅」自体を好むタイプです。
確実なリターンよりも、あえて不確実性、つまりリスクの高いリターンを好む投資家なんです。
確実にもらえる利益よりも、もしかしたらすごく大きな利益になるかもしれない、そのブレ幅自体を好むわけですね。
動画は、リスナーのあなたに、この3つのうちどのタイプに近いでしょうか、と問いかけます。自分ごととして考えるだけでも、投資理論が少し身近になる、という狙いです。
単に「投資家」と書いてあったら
ここで動画は、用語の読み方についてのポイントを1つ挙げます。効率的フロンティアの理論など、金融の理論で単に「投資家」と書かれている場合です。
単に「投資家」とだけ書かれているケースは、通常はこのリスク回避的投資家をさしているんです。
学問の前提が、人間は基本的にリスクを避けたがるものだ、となっているわけですね。
そういうことです。
つまり、問題文に「投資家」としか書かれていなければ、まずリスク回避的を想定して読む、というのが動画の整理です。
たとえ話(動画にない設例)
「確実にもらえる50万円」と「コインの表なら100万円、裏なら0円のくじ」を比べます。くじの期待値は、0.5×100万円+0.5×0円=50万円で、確実な50万円と同じです。ブレのない50万円を選ぶのがリスク回避的、どちらでもよいのがリスク中立的、くじに魅力を感じるのがリスク愛好的、と考えるとつかみやすくなります。
(補足:動画は「同じリターン」と言いますが、投資の結果は事前に決まっていません。正確には、状況ごとの結果を確率で重みづけして平均した期待リターン(期待収益率)が同じとき、と読むのが自然です。上の設例の「期待値が同じ」も、この意味です。)
| タイプ | 期待値が同じなら | 動画のポイント |
|---|---|---|
| リスク回避的 | リスクの小さいほう | 理論で「投資家」とあれば通常これ |
| リスク中立的 | どちらでもよい | リスクの代償を問わない |
| リスク愛好的 | リスクの大きいほう | ブレ幅そのものを好む |
ポートフォリオと「連動性」
ここから動画は中盤戦に入ります。現実の投資では、1つのものに全額をつぎ込むことは少なく、通常は分散させます。このように2つ以上の証券を組み合わせたものをポートフォリオと呼びます。
そして、ポートフォリオを組むうえで最も重要になるのが、複数の証券の値動きの関連性を測ることです。お互いがどう連動して動くのか。そこで登場するのが、共分散と相関係数という指標です。
出ましたね、共分散と相関係数。なんだか急に数学っぽくなってきました。
大丈夫です。順に紐解いていきましょう。まずは共分散ですね。
動画は、共分散を、2つのデータのばらつき、つまり差の方向性と度合いを表す指標と紹介します。
(補足:この言い方は少しゆるいので、整理しておきます。分散は、1つの証券の収益率の散らばり(偏差を2乗して確率で重みづけして足したもの)です。共分散は、2つの証券の偏差を掛け合わせて、2つの動きの連動の方向と度合いを見るものです。もし2つの証券が同じものなら、共分散は分散と一致します。動画の数字で計算すると、証券Aの分散は0.3×2²+0.5×0²+0.2×(−3)²=3です。)
偏差と共分散の公式
共分散の計算には偏差を使います。動画は、まず偏差の意味を確認します。
実際の収益率から期待収益率を引いたものですよね。
その通りです。予想していた平均ラインから、実際の結果がどれくらいずれたか、という幅のことです。
共分散の公式(動画の説明)
共分散=Σ(証券Aの偏差×証券Bの偏差×発生確率)。これをすべての状況について足し合わせます。Σ(シグマ)は「全部足す」記号です。
(補足:偏差を確率で重みづけして足すと0になります。動画の数字で計算すると、証券Aは0.3×2+0.5×0+0.2×(−3)=0、証券Bは0.3×11+0.5×(−1)+0.2×(−14)=0です。偏差は「期待収益率からのズレ」なので、ズレの平均は0になる、ということです。)
3つの状況で、共分散を計算する
動画は、テキストの具体的な数字を使って、実際に計算します。状況は3つで、ここでは好況・普通・不況と呼びます。確率は、好況が30%、普通が50%、不況が20%です。
| 状況(確率) | 偏差(A、B) | A×B×確率 |
|---|---|---|
| 好況(0.3) | A +2%、B +11% | 2×11×0.3=6.6 |
| 普通(0.5) | A 0%、B −1% | 0×(−1)×0.5=0 |
| 不況(0.2) | A −3%、B −14% | (−3)×(−14)×0.2=8.4 |
| 合計 | 3つを足す | 6.6+0+8.4=15 |
途中には、見逃したくないポイントが2つあります。まず、普通のケースです。
証券Aの偏差が0だから、0×(−1)×0.5で、結果は0になりますね。
実はそこ、すごく重要なポイントなんです。片方の偏差が0、つまり予想通りぴったりだった場合、結果も必ず0になります。
どちらかが0なら、掛け算だから全部0になるわけですね。
そういうことです。
次に、不況のケースです。ここは動画も「計算の一番のハイライト」と呼びます。証券Aは−3%、証券Bは−14%で、両方とも予想を下回っています。−3×−14=42、これに確率0.2を掛けて8.4です。
両方ともマイナスで悪かったとしても、掛け合わせるとプラスになる点に注意が必要です。
同じ方向にずれているなら、一緒に上振れしても一緒に下振れしても、プラスの力として計算されるんですね。
まさに、方向性が同じだということを表しています。
3つを足して、証券Aと証券Bの共分散は15になる、というのが動画の結論です。
(補足:動画にない対比です。もし証券Bの偏差の符号がすべて逆で、−11%、+1%、+14%だったとすると、各状況の積はすべて符号が逆になり、共分散は−15になります。共分散がプラスなら同じ向きに動く傾向、マイナスなら逆向きに動く傾向を表します。)
共分散を比べやすい形にする:相関係数
ここで動画は、15という数字の弱点を取り上げます。
共分散が15になったのは分かったんですが、この15という数字だけ見せられても、他のデータと比較しにくくないですか?
非常に鋭いですね。それが共分散の弱点なんです。だからこそ、他のデータとも比較できるように、−1から1の間の値に標準化してあげる必要があるんです。
それが相関係数ですか?
はい。ギリシャ文字のローで表される相関係数です。
相関係数ρ(ロー)の公式(動画の説明)
相関係数ρ=共分散÷(証券Aの標準偏差×証券Bの標準偏差)
動画の設例では、証券Aの標準偏差を√3、証券Bを√76とします。すると、ρ=15÷(√3×√76)で、約0.99になります。
(補足:偏差から計算し直します。証券Aの分散は3、証券Bの分散は0.3×11²+0.5×(−1)²+0.2×(−14)²=76なので、標準偏差は確かに√3と√76です。√3×√76は約15.10、15÷15.10で約0.9934です。)
ここで動画は、少しマニアックな話を挟みます。ある資料の計算過程では、本来√76となるべきところが√75と誤植されていることがあるのではないか、と推測するのです。どの資料なのかは動画からは分かりませんが、計算で確かめられます。もし√75なら、15÷(√3×√75)=15÷15=ちょうど1になってしまいます。動画の約0.99は、76を使った正しい数字だと分かります。計算には細部の注意が必要、という教訓です。
(補足:共分散が「比較しにくい」理由も確かめておきます。偏差を%ではなく小数(0.02、0.11など)で書くと、同じ設例の共分散は15ではなく0.0015になります。ところが相関係数は、どちらの書き方でも約0.9934のままです。共分散は単位や散らばりの大きさに左右されますが、相関係数は標準偏差で割るので、単位に左右されません。)
相関係数の読み方:−1から1まで
動画は、相関係数ρが意味する値動きの連動性を、値の範囲ごとに整理します。基本は、絶対値が大きいほど相関は強いということです。
| ρの値 | 呼び名 | 値動き |
|---|---|---|
| 1 | 完全な正の相関 | 全く同じ動き |
| 0より大きく1より小さい | 正の相関 | 同じ方向に動く |
| 0 | 無相関 | お互いの動きに関連性がない |
| −1より大きく0より小さい | 負の相関 | 逆の方向に動く傾向 |
| −1 | 完全な負の相関 | 全く逆の動き |
今回の約0.99は、0より大きく1より小さいので正の相関です。しかも1に非常に近いので、証券Aと証券Bはかなり強く連動している、と読めます。負の相関は、片方が上がれば片方が下がる傾向がある状態です。
試験の注目点(動画の整理にそって)
- 動画では、偏差は「実際の収益率−期待収益率」と整理されている。
- 動画の共分散の整理は、偏差×偏差×発生確率の合計。片方の偏差が0なら、その状況の値は0。マイナス同士を掛けるとプラス。
- 動画では、共分散を標準化したものが相関係数で、−1から1の範囲。絶対値が大きいほど相関は強い。
- 動画では、単に「投資家」とあれば通常はリスク回避的投資家をさす、と説明されている。
動画の最後の問い:ρ=1とρ=−1、どちらで組む?
動画は、リスナーへの問いかけで終わります。もしあなたが一般的なリスク回避的投資家だとしたら、相関係数ρが1の組み合わせと−1の組み合わせのどちらでポートフォリオを組むのが賢いでしょうか、というものです。
全く逆の動きをする資産を組み合わせる意味について、ということですね。
はい。全体としてのリスクがどうなるのか、ぜひご自身で想像を膨らませてみてください。
動画は答えを示さないので、ここで補足しておきます。
(補足:動画にない話で、設例です。リスク(標準偏差)がどちらも10%の2つの証券を、50%ずつ組み合わせます。ポートフォリオのリスクは、√(0.5²×10²+0.5²×10²+2×0.5×0.5×ρ×10×10)で計算でき、ρ=1なら10%、ρ=0なら約7.07%、ρ=−1なら0%になります。ポートフォリオの期待収益率は各証券の期待収益率の加重平均で、ρには左右されません。ですから、リスクを嫌うリスク回避的投資家にとっては、ρが小さい(逆の動きに近い)組み合わせのほうが有利、と考えられます。ただし、ρ=−1ぴったりの組み合わせは、理想化した設例です。)
ここで、前半の心理の話と後半の数字の話がつながります。リスク回避的な投資家は、なるべく連動しない(できれば逆に動く)証券を組み合わせることで、同じ期待リターンのまま全体のリスクを下げようとします。動画が「切っても切り離せない関係」と言っていた2つは、こういうことです。
まとめ
- 投資家は、リスクへの考え方で回避的・中立的・愛好的の3タイプに分かれる。
- 回避的は同じリターンならリスクが小さいほうを選ぶ。中立的はリスクを問わない。愛好的は不確実性そのものを好む。
- 動画では、理論で単に「投資家」とあれば通常はリスク回避的をさす、と説明されている。
- ポートフォリオは2つ以上の証券の組み合わせ。値動きの連動性を測るのが共分散と相関係数。
- 偏差は実際の収益率−期待収益率。共分散は、偏差×偏差×発生確率をすべての状況で足し合わせる(動画の例は15)。
- 片方の偏差が0ならその項は0。両方マイナスでも掛け合わせるとプラスで、同じ方向のズレとして計算される。
- 相関係数ρは、共分散を2つの標準偏差の積で割って−1から1にそろえたもの(動画の例は約0.99)。
- ρが1に近いほど正の強い相関、0は無相関、−1に近いほど負の強い相関。
動画は、偏差の掛け合わせや標準化という計算式に隠された意味を理解すれば、暗記に頼らずに済む、と振り返ります。聞き手は、この知識は単なる試験対策にとどまらず、ビジネスや個人の意思決定でリスクをコントロールする感覚を養うものだと感じた、と言い添えます。
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