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リスクとリターンの計算公式『投資リスクの本質「ばらつき」と標準偏差』

財務・会計 第7回

財務・会計・ポートフォリオ・デリバティブ 00619分36秒2026年2月21日公開

「リスクという言葉を聞いて、真っ先に何を思い浮かべますか?」。動画はこんな問いかけから、投資の世界のリスクとリターンへ入ります。このページでは動画の流れにそって、期待収益率の計算、リスクを「ばらつき」と捉える考え方、偏差・分散・標準偏差を求める5つのステップ、試験での表の使い方をまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。

「リスク=危険」という常識を手放す回

動画は、毎日の合間に耳で学んでいる人へのねぎらいから始まり、今回のテーマ、証券投資のリスクとリターンに入ります。最初の問いは「リスクという言葉を聞いて、真っ先に何を思い浮かべますか」。多くの人は「危険」「損をするかもしれない怖いもの」と答えるでしょう。動画は、日常会話ではたしかにその意味で使うけれど、投資の世界ではその常識が覆る、この認識のずれを直すことが今回の最大の鍵だと言います。

もう1つの狙いは、数字アレルギーをなくすことです。公式を丸暗記しようとするから難しく見えるだけで、言葉と計算の裏にある論理さえ押さえれば、実はとてもシンプルだと動画は強調します。今回の道のりは次の3段階です。

  • リターン:確率で重みづけした平均、つまり期待収益率。
  • リスク:期待収益率からのばらつき(収益率の変動)。
  • ばらつきを数値にする指標:標準偏差。5つのステップで求める。

動画は設例を1つだけ使い、最後まで同じ数字で進めます。ここでも、その流れにそって見ていきましょう。

リターンは「確率で重みづけした平均」

証券投資のリターンは、投資で得られる収益のことです。ただし市場は不確実で、預金のように「この金額が必ず儲かる」と確定しているわけではありません。好況なら高い収益率、不況なら思ったほどの利益が出ないこともあります。そこで動画は、複数の未来の状況が想定される場合に、それぞれの状況の収益率を発生確率で重みづけして平均したもの、つまり期待収益率を、投資の世界ではリターンと呼ぶ、と整理します。

期待収益率(リターン)の計算(動画の説明)

Σ(発生確率×収益率)。すべての状況について足し合わせます。

公式を見るとシグマっていう記号が出てきますよね。あれを見るとうーっとなる方もいると思うんですが。

シグマですね。あれは全く怖がる必要のない記号なんです。

動画によると、Σは「全部足す」という指示にすぎません。考えられる全シナリオの結果を、最後にまとめて足し合わせるという合図です。

設例:証券Aの期待収益率は8%

動画の設例です。市場のシナリオは3つで、ここでは好況・普通・不況と呼びます。確率は、好況が30%、普通が50%、不況が20%で、合計は100%。証券Aに投資すると、収益率は好況で10%、普通で8%、不況で5%になると想定します。確率と収益率をかけて、全部足します。

期待収益率=3+4+1=8%10%好況確率30%0.3×10=38%普通確率50%0.5×8=45%不況確率20%0.2×5=1期待収益率 8%
確率で重みづけして足すと、期待収益率(リターン)は8%です。
状況(確率)収益率確率×収益率
好況(0.3)10%0.3×10=3
普通(0.5)8%0.5×8=4
不況(0.2)5%0.2×5=1
合計3つを足す3+4+1=8

こうして、証券Aの期待収益率(リターン)は8%と求まります。動画はこの8%を、不確実な未来に対する最も妥当な着地点だと説明します。聞き手は、確率を重みづけして平均的に見込める実力を1つの数字で表したものだ、と言い換えます。

リスクは「危険」ではなく「ばらつき」

ここで疑問が出てきます。

期待収益率が8%だとしても、それはあくまで計算上の平均ですよね。実際に手にするリターンがぴったり8%になるわけじゃないですよね。

その通りです。現実の結果は8%という基準点から必ず上下にずれます。

動画はここから、リスクの話に入ります。冒頭のリスクは危険という常識は捨ててください、と言ったうえで、証券投資のリスクとは期待収益率という基準点から結果がどれだけ乖離しうるか、つまり収益率の変動であり、直感的に言えば結果のばらつきだと定義します。基準点から結果がどれだけ離れうるか、その変動の度合いそのものを、投資の世界ではリスクと呼びます。

(補足:「必ず上下にずれる」は少し言い過ぎです。動画の設例でも、普通のときの収益率は8%ちょうどで、ずれは0です。正確には、期待収益率と一致しない状況があるとき、結果は基準点からずれます。どの状況でも収益率が同じ投資なら、ばらつきはなく、リスクは0です。)

通勤時間のたとえ

聞き手が、身近なたとえを出します。期待収益率を、毎日の通勤時間の平均だと考えてみるのです。平均は30分とします。講師は、このたとえを「非常に的確な例えです」と受けます。

平均はどちらも30分電車通勤:毎日ほぼ30分(ばらつき小)車通勤:日によって20〜40分(ばらつき大)20分30分40分
平均が同じでも、結果のブレ幅は違います。このブレ幅がリスクです。

たとえ話(動画より)

ここでいうリスクは、事故に遭う危険性ではありません。ある日は道が空いていて20分、ある日は渋滞で40分かかる、その10分の振れ幅がリスクです。電車通勤は毎日ほぼ30分なのでばらつきが小さく、低リスク。車通勤は平均すれば30分でも日によって20分や40分になるので、ばらつきが大きく、高リスクです。

ここで言うリスクとは、事故に遭う危険性のことじゃないんですよね。

ええ、違いますね。

動画のまとめは、期待値が同じでも、その結果の読めなさを数値にしたものがリスクだ、というものです。平均という1つの数字だけでは、その裏にある不確実性の大きさは測れません。そこで、ばらつきを具体的な数値にする指標が必要になります。

(補足:動画の「危険ではない」は、投資理論のリスクの定義の話です。標準偏差は、期待収益率より上にずれる場合も下にずれる場合も、同じ「ばらつき」として数えます。得になるずれも、数値の上ではリスクに入る、ということです。日常の「損をする危険」とは意味がちがうので、試験の計算問題では「リスク=標準偏差」と読み替えましょう。)

標準偏差は5つのステップ

ばらつきの指標が標準偏差です。公式を見ると、全体が大きなルート(平方根)で覆われ、中にΣがあり、かっこの中で引き算して、2乗して、さらに確率をかけます。動画も、一見すると非常に難しそうな数式に見えると認めたうえで、手順さえ追えば複雑ではないと言い、5つのステップに分けます。リスナーのあなたにも、数式を暗記するのではなく、頭の中に表を作るイメージで、なぜその計算をするのかを追ってほしい、と呼びかけます。

1偏差を出す(収益率−期待収益率)+2、0、−32偏差を2乗する4、0、93発生確率をかける1.2、0、1.84足し合わせて分散を出す35ルートで元の単位に戻す√3≒1.73%
証券Aの数字で、5ステップを順に追うとこうなります。

標準偏差の公式(動画の説明をまとめたもの)

標準偏差=√Σ(発生確率×(収益率−期待収益率)²)。かっこの中が偏差、2乗して確率をかけて足したものが分散、全体にルートをかけたものが標準偏差です。

ステップ1:偏差を出す

最初は偏差です。偏差とは、それぞれの状況の収益率が、真ん中の基準である期待収益率からどれだけずれているかを測る、シンプルな引き算です。証券Aの期待収益率は8%でした。

状況収益率偏差(収益率−8%)
好況10%10−8=+2
普通8%8−8=0
不況5%5−8=−3

基準点からの距離が、+2、0、−3と出ました。ここまでは簡単です。

ステップ2:なぜわざわざ2乗するのか

公式では、求めた偏差をここで2乗します。聞き手も、ずれをそのまま足せば全体のばらつきが出そうな気がするのに、と疑問を投げかけます。

なんでわざわざ2乗するんですか?

もし今のずれ、+2、0、−3をそのまま足すとどうなると思いますか?

2+0+(−3)だから、−1になっちゃいますね。

プラスのずれとマイナスのずれが互いに相殺されてしまうんです。

聞き手は、極端な例として、+100のずれと−100のずれがあったら足すと0になり、ばらつきがないという間違った結論になってしまう、と挙げます。講師は、上にずれても下にずれても基準から離れているという事実は変わらないと受けます。そこで聞き手が、全部を2乗してマイナスの符号をなくし、純粋なばらつきの大きさとして扱うのですね、と整理し、講師が「まさにそれです」と肯定します。計算すると、2乗した偏差は、好況が4、普通が0、不況が9です。

(補足:動画の−1は、確率をかけない単純な足し算の結果です。確率で重みづけして足すと、0.3×2+0.5×0+0.2×(−3)=0になります。偏差を確率で重みづけして足した合計は、いつも0になります。重みづけをしても、プラスとマイナスのずれが打ち消し合って、ばらつきが見えなくなる、というわけです。なお、符号を消すだけなら絶対値でも可能です。2乗を使う理由は、数学的な扱いやすさなどと説明されることが多く、資料により説明の仕方が異なります。このページでは、動画の説明にとどめます。)

ステップ3・4:確率をかけて足し合わせる=分散

次は、リターンの計算と同じ発想です。2乗した値に、それぞれの発生確率をかけて、全部足します。

状況(確率)偏差の2乗×確率
好況(0.3)(+2)²=44×0.3=1.2
普通(0.5)0²=00×0.5=0
不況(0.2)(−3)²=99×0.2=1.8
合計3つを足す1.2+0+1.8=3

この3が分散です。ずれを数値にして、マイナスを消すために2乗し、確率をかけて足し合わせた結果が、分散の3だ、というのが動画の整理です。ここで、聞き手が気づきます。

途中で2乗しちゃったじゃないですか。これって単位が、本来のパーセンテージの世界から歪んじゃっていませんか?

お見事です。まさにその通りなんです。

ステップ5:ルートで元の単位に戻す

動画によると、分散の3はばらつきの大きさを表す指標ですが、2乗されているため、元の期待収益率の8%と同じ次元では比べられません。そこで最後の仕上げとして、分散に平方根(ルート)をかけて、元の単位に戻します。これが、公式の全体が大きなルートで覆われている理由です。

分散の3にルートをかけた√3が、元のパーセンテージの次元に戻った標準偏差であり、証券Aのリスクの大きさです。

(補足:√3は約1.73なので、証券Aの標準偏差は約1.73%です。単位も確かめておきます。分散は「%の2乗」の単位をもっていて、ルートをかけると「%」に戻ります。通勤時間で、動画にない数字を使って試してみます。車通勤が20分・30分・40分になる確率が25%・50%・25%だとすると、平均は30分、分散は0.25×(−10)²+0.5×0²+0.25×10²=50で、単位は「分の2乗」です。ルートをかけると約7.07分になり、「ふだんの通勤時間から7分ほどブレる」と読めます。電車通勤はほぼ毎日30分なので、標準偏差は0分に近くなります。)

標準偏差で比べると見えること

ここからは、動画にない設例です。標準偏差は、期待収益率が同じ証券のリスクを比べるときに役立ちます。証券Bは、好況で14%、普通で8%、不況で−1%になるとします(確率は証券Aと同じ30%・50%・20%)。

期待収益率はどちらも8%証券A:標準偏差 約1.73%5%8%10%証券B:標準偏差 約5.20%−1%8%14%
点の大きさは確率の大きさ、帯は期待収益率±標準偏差の幅(動画にない設例)。
証券収益率(好況・普通・不況)期待収益率/標準偏差
証券A10%・8%・5%8%/約1.73%
証券B14%・8%・−1%8%/約5.20%

(補足:証券Bの期待収益率は0.3×14+0.5×8+0.2×(−1)=8%で、証券Aと同じです。偏差は+6、0、−9。2乗は36、0、81で、確率をかけると10.8、0、16.2。足すと分散は27で、標準偏差は√27、約5.20%です。期待収益率が同じでも、標準偏差が大きい証券Bのほうが、結果のばらつきが大きく、リスクが高いと読めます。)

試験では「表を埋める」作業に落とす

動画は、試験対策の視点も出します。電卓を使わずに、ルートの細かい小数を手計算で正確に求めるのは現実的ではありません。動画は、作問する側もそれを理解していて、選択肢は工夫されていることがほとんどだと説明します。たとえば、ルートをかける前の分散の値(今回なら3)が選択肢に並んでいたり、ルートの値がおよその整数になるように、きれいな数字で作られていたりするそうです。ですから、手計算でルートが出せないからと、パニックになる必要はありません。求められているのは暗算の能力ではなく、ばらつきを数値にするための論理的なプロセスを理解しているかどうかだ、というのが動画の主張です。

(補足:出題の傾向についての動画の見立てです。実際の問題は年度や出題形式で異なるので、過去問で確認しておくと安心です。)

そこで動画が勧めるのが、表を作るアプローチです。状況、確率、収益、偏差、偏差の2乗、確率をかけた値を、左から右へ順番に埋めていきます。設例の証券Aで並べると、次のようになります。

列好況・普通・不況意味
収益率10・8・5各状況の結果
偏差+2・0・−3期待収益率8%とのずれ
偏差の2乗4・0・9符号をなくす
×確率1.2・0・1.8足すと分散3

リスクの計算と聞くと構えちゃいますけど、意味を理解して表を埋める作業だと思えば、むしろ筋道を立ててパズルを解いていくみたいで、少し楽しくなってきそうですね。

そう言っていただけると嬉しいです。

動画の最後の問い:リスクへの恐れの正体

動画は最後に、試験対策の枠を少し超えた問いを投げかけます。新規プロジェクトを立ち上げたり、未知の領域に挑戦したりするとき、私たちが漠然と抱く恐れや不安にも、今日学んだ考え方は当てはまるのではないか、というものです。

私たちがリスクと呼んで恐れているものの正体は、実は単に、結果がどうなるか読めない、つまり結果がばらつくことを過剰に恐れているだけなのかもしれません。

リスク=危険という感情的な思い込みから自由になって、それを測定可能なばらつきとして客観視する、ということですね。

動画は、ばらつきの幅を感情論ではなく論理的なフレームワークで分解できれば、最悪のシナリオでもこの程度のずれ、つまり標準偏差の中に収まる、と冷静に数値を把握でき、未知の挑戦への見方も変わるかもしれない、と語ります。

(補足:標準偏差は「最悪でもこの範囲に収まる」ことを保証する数字ではありません。設例でも、不況のときのずれは−3%で、標準偏差の約1.73%より大きくなっています。標準偏差は、ずれの大きさの目安です。また、想定したシナリオと確率が正しいことを前提にした数字でもあります。)

試験の注目点(動画の整理にそって)

  • 動画では、リターンは確率で重みづけした平均=期待収益率で、Σは「全部足す」記号と説明されている。
  • 動画では、証券投資のリスクは危険ではなく、期待収益率からのずれ(結果のばらつき)と整理されている。
  • 動画では、標準偏差は、偏差を出す→2乗→確率をかける→足して分散→ルートで元に戻す、の5ステップとされている。
  • 動画では、偏差をそのまま足すと相殺されるため2乗し、分散は2乗の単位なのでルートで元の単位に戻す、と説明されている。
  • 動画では、試験ではルートの手計算は求められにくく、表を左から右へ埋める方法が勧められている。

まとめ

  • リターンは、確率で重みづけした期待収益率。動画の設例(証券A)は8%。
  • 動画では、リスクは「危険」ではなく、期待収益率からのばらつき(収益率の変動)。
  • ばらつきを数値にする指標が標準偏差。偏差を出す、2乗する、確率をかける、足して分散、ルートで元の単位に戻す、の5ステップ。
  • 設例の分散は3、標準偏差は√3(約1.73%)。
  • 偏差をそのまま足すと相殺されるので2乗する。2乗したままでは単位が元の%とそろわないので、ルートで戻す。
  • (補足)標準偏差は上にずれる場合も下にずれる場合も数える。期待収益率が同じ証券なら、標準偏差が大きいほうがリスクは高い。
  • 動画は、状況・確率・収益・偏差・偏差の2乗・確率をかけた値を、左から右へ埋める表の作り方を勧めている。

動画は、リスクを「危険」ではなく「ばらつき」として論理的に測る視点は、試験の得点源にとどまらず、ビジネスパーソンとしての考え方そのものを引き上げる、と結びます。計算式の意味が見えると、数式がパズルのように感じられてきます。まずは動画を聞いて、表を頭の中で埋めてみてください。

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