債券価格の計算『割引債と利付債の価格計算ロジック』
財務・会計 第11回
中小企業診断士試験に向けて耳で覚える徹底解剖をお届けする。テーマは債券価格の計算。動画はこんな呼びかけから始まります。このページでは動画の流れにそって、割引債と利付債の違い、割引債の価格の式、利付債の長い公式の読み解き方、最後の問いである金利と債券価格の関係をまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。
数式に圧倒されない:丸暗記より腹落ち
動画は、中小企業診断士試験に向けて耳で覚える徹底解剖をお届けする、という呼びかけで始まります。テーマは債券価格の計算です。数式や専門用語が出てくると圧倒されてしまう人も多い、と動画は言います。そこで今回のミッションは、債券の2つのタイプと、価格を導く計算式の構造を、丸暗記ではなく、「だからそういう数式になるのか」という腹落ちとともに身につけることです。動画では、丸暗記したものは緊張で飛んでしまうが、論理で理解したものは一生の知識になる、とも話されます。
- 債券の2つのタイプ、割引債と利付債は何が違うのか。
- 割引債の価格は、どうやって計算するのか。
- 利付債の長い公式は、割引債の計算とどうつながるのか。
- 最後に動画が投げかける問い:金利が急上昇したら、債券の価格はどうなるのか。
(補足:動画は音声なので「さいけん」と聞こえますが、ここで扱うのは、国や企業がお金を借りるときに発行する証書である債券です。お金を返してもらう権利を指す「債権」とは別の字です。)
(補足:言葉を3つだけ確認しておきます。額面は債券に記された金額、償還は満期に額面を返すこと、現在価値は将来受け取るお金を今の価値に直した金額です。動画は、額面(額面価格)を償還価格とも呼んでいます。)
この動画は、耳で聞くだけで式の構造をイメージできることを目指して作られています。ですから、このページも計算の細かい練習問題を並べるのではなく、「なぜその式になるのか」の筋道を追うことを中心にまとめます。式の意味が頭に入っていれば、数字が変わっても、問われ方が変わっても、落ち着いて対応できるからです。
債券の2つのタイプ:途中で金利をもらえるか
債券は、大きく割引債と利付債の2つに分かれます。動画は、2つの最大の違いを「満期が来るまでの間に金利を受け取れるかどうか」だと整理し、ここを切り分けることが第一歩だと言います。
まずは割引債の定義から教えてもらえますか。
割引債は、満期が来るまで一切の金利を受け取れないタイプです。その代わり、満期に額面、つまり償還価格だけを最後に受け取ります。
最後にまとめてドーンと受け取るわけですね。
その通りです。もう1つの利付債は、満期までの一定期間ごとにコツコツと金利を受け取れて、満期には額面も一緒に受け取ります。
| タイプ(別名) | お金の受け取り方 |
|---|---|
| 割引債(ゼロ | 途中の金利は0。満期に額面(償還価格)だけを受け取る |
| 利付債(クーポン債) | 満期まで一定期間ごとに金利を受け取り、満期に最後の金利と額面を受け取る |
満期までに受け取る金利のことを、専門用語でクーポンと呼びます。動画は、金利が0(ゼロ)だから割引債の別名がゼロクーポン債、金利があるから利付債の別名がクーポン債、と言葉を結びつけます。この用語のつながりが、あとの価格の計算で重要になると動画は言います。
(補足:動画は割引債を「金利を受け取れない」債券と説明しますが、利息の形で受け取らないという意味です。割引債も、買ったときの価格より多い額面を満期に受け取るので、その差が投資家の利益になります。)
割引債の価格:将来のお金を割り引く
聞き手は、リスナーの代弁者として、最後にしかお金がもらえない割引債の現在の価格はどう計算するのかを尋ねます。まず、公式を作る部品を1つずつ整理します。
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| N | 満期が来る時期(N期の「N」) |
| PN | 満期に受け取る額面(償還価格) |
| R | 金利 |
| P0 | いま知りたい、現在の割引債の価格 |
割引債の価格の式
P0=PN÷(1+R)のN乗
動画は、将来もらえる額面PNを、金利Rを加えた値で、期間N乗分だけ割り算していると説明します。
割り算ですか。増やすときの掛け算の逆ですね。
その通りです。ここで、将来もらえるお金を今の価値に引き直すには、どうすればいいと思いますか。
将来のお金には、これからつく金利が含まれてしまっているから、その分を取り除かないといけないですよね。
ええ、だから金利を加えた数で割って、将来の価値を現在の価値に割り引くんです。
割り引く。ああ、だからこの債券は割引債なんですね。
まさにそこがリンクするんです。
動画の例では、最後に100万円もらえる権利でも、今の価値に割り引けば90万円とか85万円といった安い価格になります。今の価値に割り引かれた価格で買うから割引債です。式の割り算の構造と債券の名前がつながりました。聞き手は、今の価値に戻すのだから金利の分で割り算をするのだと整理し、講師は、この論理さえ腹落ちしていれば大丈夫だと応じます。
式の「N乗」は、満期までの期間の数だけ割り算を繰り返す、という意味です。1期後にもらうお金なら1回、2期後にもらうお金なら2回、(1+R)で割ります。1期ごとに金利がつくので、2期後のお金には2期ぶんの金利が含まれているからです。割り算は、増やすときの掛け算の逆です(聞き手が言い換え、講師が「その通りです」と応じた場面です)。つまり、今の価格P0に(1+R)を期間の数だけかけていくと、満期の額面PNに戻ります。
(補足:数値例で確かめます。額面100万円・2年後・R=5%なら100÷1.05の2乗で約90.7万円、3年後なら約86.4万円、R=6%の3年後なら約84.0万円です。満期が遠いほど、Rが高いほど、価格は安くなります。逆算も確かめると、約90.70万円に1.05を2回かけると、100万円に戻ります。なお、動画は「金利R」とだけ言いますが、債券の価格計算では、市場でその債券に求められる利回り(割引率)を指すとされています。資料により呼び方は異なります。)
(補足:もう少し数字で見てみます。額面100万円、R=5%の割引債の価格は、満期までの年数によって次のように変わります。動画の「90万円とか85万円」に近い価格は、2年後から4年後のあたりに出てきます。)
| 満期までの年数 | 割引債の価格(万円) |
|---|---|
| 1年 | 約95.24 |
| 2年 | 約90.70 |
| 3年 | 約86.38 |
| 4年 | 約82.27 |
| 5年 | 約78.35 |
割引債の考え方(動画の整理にそって)
- 将来もらえるお金を、今の価値に直したい。
- 将来のお金には金利の分が含まれているので、その分を取り除く。
- 取り除くには、金利を加えた数(1+R)で、期間の数N回ぶん割る。
- 今の価値に割り引いて買うから、割引債という名前になる。
利付債の価格:割引債の積み木
もう1つの主役、利付債は、一定期間ごとにクーポンを受け取るので、公式が少し長くなります。動画は、最初に見ると圧倒されそうな式として、次のように読み上げます。第1期はクーポンC÷(1+R)、第2期はC÷(1+R)の2乗、と続いていき、最後の第N期には(C+PN)÷(1+R)のN乗となります。
利付債の価格の式
P=C÷(1+R)+C÷(1+R)の2乗+…+(C+PN)÷(1+R)のN乗
Cは毎期のクーポン、PNは満期の額面です。
全く新しい概念ではない、とは、どういうことですか。
この長い公式は、実はただの割引債の論理の繰り返しに過ぎないんですよ。
第1期にもらうクーポンCは1年後に入るので、1期分の金利で割って現在の価値にします。これが最初のC÷(1+R)です。第2期のクーポンは2期分の金利で割るので、C÷(1+R)の2乗です。各期のクーポンを、それぞれ別々の割引債とみなして、割引債とまったく同じ論理で現在価値に割り引いているだけです。
1個1個のクーポンの受け取りを、別々の割引債として計算しているんですね。
ええ。そして最後の第N期には、どうなるか分かりますか。
最後のクーポンCに加えて、額面の償還価格PNも一緒に戻ってくる。だから、その2つを足したものをまとめて現在価値に割り引く。
まさにそれです。それが式の最後にある、C+PNを(1+R)のN乗で割る部分です。
それぞれの時期にもらえるお金を現在の価値に割り引いて、最後にすべて足し合わせる。式の途中にあるプラスの記号は、その意味です。巨大に見えた公式も、割り算の積み木にすぎませんでした。聞き手は、複雑な記号の羅列だと思っていたものが1つ1つのパーツに分解され、頭の中でビジュアルとして組み上がった、と受けます。
利付債の考え方(動画の整理にそって)
- 1回ごとのお金を、時期の順に並べる。
- それぞれを、時期の数だけ(1+R)で割って、現在の価値にする。
- 最後の期は、クーポンと額面を足してから割る。
- 全部を足し合わせると、利付債の価格になる。
(補足:ここは動画にない設例です。単位は万円。額面100、3年、毎年のクーポン3、R=5%とします。クーポンCは、発行時に決まる支払額で、額面に表面利率をかけた額とされます。市場で変わるRとは別のものです。)
| 時点 | 受け取る額 | 現在価値 |
|---|---|---|
| 1期後 | 3 | 3÷1.05=約2.86 |
| 2期後 | 3 | 3÷1.05の2乗=約2.72 |
| 3期後 | 3+100 | 103÷1.05の3乗=約88.98 |
| 合計 | 約94.55 |
表を見ると、各期のクーポンは受け取る額が同じ3でも、時期が遠くなるほど現在価値が少しずつ小さくなっています。割り引く回数が増えるからです。また、価格のほとんどは、満期の額面(とクーポン)の現在価値が占めています。クーポンの1回ぶんは小さな積み木で、最後の期の積み木がいちばん大きい、というイメージです。
(補足:クーポン3回分の現在価値は約8.17、額面100の現在価値は約86.38で、合わせて約94.55です。Rがクーポン率と同じ3%なら、価格はちょうど100になります。また、ここでは利払いが年1回の形で計算しました。実際の債券には、年2回払いのものもあるとされています。さらに、利付債の式でクーポンCを0にすると、最後の項は PN÷(1+R)のN乗だけが残り、割引債の式と一致します。割引債は、利付債の特別な場合と見ることもできます。)
動画の最後の問い:金利が急上昇したら
動画は、式を理解した今だからこそ、と重要な問いを投げかけて終わります。現在の価格Pは、金利Rで割り算して決まります。分母にRがいる構造です。債券を買ったあとで、世の中の金利が急上昇したら、分母のRが大きくなります。割り算の答え全体はどうなるのか。動画は答えを言わず、リアルな金融市場のダイナミズムについて、ご自身で探求してみてください、と結びます。式が現実のマーケットとつながる瞬間だ、という言い方もされています。
(補足:ここは動画にない答えです。分母が大きくなると、割り算の答えである価格は下がります。逆に金利が下がれば、価格は上がります。すでに持っている債券の受け取る額は変わりませんが、その価値は市場で割り引き直されます。上の設例の利付債(額面100・クーポン3・3年)で、Rを変えて価格を求めたものが下の図です。)
(補足の続き:図を見ると、Rがクーポン率と同じ3%のときに、価格がちょうど額面の100になります。Rがそれより低い1%なら額面より高い約105.88に、高い5%や7%なら額面より安い約94.55、約89.50になります。利付債は、クーポンの額が発行のときに決まっていて動かないので、市場の金利が動くと、そのぶん価格のほうが動いて調整されるのです。)
(補足:割引債でも確かめます。額面100で、Rが3%から5%に上がると、満期まで1年なら約97.09から約95.24へ約1.9%の下落です。満期まで10年なら約74.41から約61.39へ約17.5%も下がります。満期が長いほど、金利の変動の影響が大きくなる、と一般にいわれています。)
まとめ
- 債券は、満期までに金利(クーポン)を受け取れない割引債(ゼロクーポン債)と、受け取れる利付債(クーポン債)に分かれる。
- 割引債の価格は P0=PN÷(1+R)のN乗。将来の額面を、金利の分で割って現在の価値に割り引く。
- 利付債の価格は、各期のクーポンを割引債と同じ論理で割り引いて足し合わせたもの。最後の期は(クーポン+額面)をまとめて割り引く。
- 式の「N乗」は、満期までの期間の数だけ割り算を繰り返す、という意味。
- Rが大きくなると、割り算の答えである価格は下がる。動画は問いのまま終わるが、補足の数値例では、利付債も割引債も価格が下がった。
動画では、聞き手が、複雑な記号の羅列だと思っていた式が1つ1つのパーツに分解されて頭の中で組み上がった、と感想を述べ、講師は、この構造さえイメージできていれば数式に対するアレルギーはなくなるはずだ、と応じます。丸暗記ではなく、式の意味を筋道で理解することが、この回の狙いでした。
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