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配当割引モデル(DDM)『ゼロ成長モデルと定率成長モデルの2パターンを解説』

財務・会計 第16回

財務・会計・資金調達・企業価値評価 0096分32秒2026年2月16日公開

「今回はですね、将来受け取る配当から現在の株式の価値をどう計算するのかというその核心に迫っていこうと思います」。動画はこんな切り出しから始まります。このページでは動画の流れにそって、配当割引モデルの考え方、ゼロ成長モデルと定率成長モデルの2つの式、株主の期待収益率の中身、最後の問いである前提の数字の置き方をまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。

将来の配当から、株の価値を計算する

動画は、将来受け取る配当から現在の株式の価値をどう計算するのか、その核心に迫っていく、という切り出しで始まります。取り上げるのは、企業の価値を評価するうえで大事な配当割引モデル(英語名の頭文字でDDM)です。聞き手が、株の価値は、その企業が将来どれだけ利益を株主に返してくれるか、その期待で決まる、というシンプルな原則に基づいていますよね、と整理すると、講師は「おっしゃる通りです」と受けます。

ここで使われるのが、ファイナンスのいちばん基本的な概念、時間価値です。聞き手が、未来の価値を現在の価値に割り引いて考える概念がここでも使われるわけですね、と確かめ、講師が「時間価値ですね」と応じます。そのうえで、これから紹介する2つのモデルは、その考え方を具体的な計算式に落とし込んだもので、試験対策としても実務でも基本になる重要な知識だ、と動画は位置づけます。

(補足:時間価値のイメージを、数字で確かめます。割引率を5%とすると、1年後の100円は100÷1.05=約95.24円、2年後の100円は100÷1.05の2乗=約90.70円の価値です。同じ100円でも、受け取る時期が遠いほど、今の価値は小さくなります。配当割引モデルは、この割り引きを毎年の配当に当てはめて、足し合わせる考え方です。)

このページでは、次の順に整理します。

  • ゼロ成長モデル:配当がこの先ずっと一定だと仮定する。
  • 定率成長モデル:配当が毎年一定の成長率で増え続けると仮定する。
  • どちらの計算の根っこにもある株主の期待収益率とは何か。
  • 最後に動画が投げかける問い:式に入れる数字をどう置くか。

(補足:動画の冒頭は、企業が利益を株主に返してくれるかどうかで株の価値が決まると言いますが、モデルで割り引く対象は、実際に株主へ支払われる配当です。利益のうち会社に残す部分は、将来の配当が増える形で株価に反映される、と考えるのが一般的な整理とされています。)

ゼロ成長モデル:配当がずっと一定なら

動画は、いちばんシンプルなケースから見ていきます。もし企業から受け取る配当の額が、この先ずっと変わらないとしたら、どう考えればいいのか。これがゼロ成長モデルの出発点です。配当が将来にわたって一定であると仮定したときに使います。計算式は、驚くほどシンプルです。

ゼロ成長モデルの式

P=D÷Re

株価Pは、年間の配当額Dを、株主の期待収益率Reで割るだけです。

記号意味
P求めたい株価(ここでは1株あたり)
D1株あたりの年間配当額
Re株主の期待収益率(投資家が、その株に投資するリスクに見合うと考えるリターン)
毎年の配当(ずっと同じ)100円1年後100円2年後100円3年後100円4年後100円5年後…株価 P = D ÷ Re100円 ÷ 0.05 = 2,000円
配当が変わらないなら、株価は「配当÷期待収益率」です。

例えば、投資家がこの株なら5%のリターンは欲しいと期待しているとします。その株から毎年100円の配当がもらえるなら、100円を5%、つまり0.05で割って、2,000円。この株の価値は2,000円だと評価する、ということですか。

まさにその通りです。その理解で完璧ですね。

聞き手は、期待収益率という基準で毎年の配当を割り引くことだと確かめています。式の各要素を正確に理解しておくことが大事だ、と動画は念を押します。Pは求めたい株価、Dは1株あたりの年間配当額、Reは株主の期待収益率です。

(補足:なぜ「割るだけ」でよいのかを、数字で確かめます。配当100円が1年後から毎年もらえ、Re=5%とします。1年後の100円は100÷1.05、2年後の100円は100÷1.05の2乗、と1回ずつ現在価値に直して足していくと、合計は下の表のように増えていきます。配当は年1回で、最初の受け取りは1年後、という置き方です。足し続けると、2,000円にだんだん近づきます。)

足した年数現在価値の合計(円)
10年約772
20年約1,246
50年約1,826
100年約1,985
200年約1,999.9

ゼロ成長モデルの考え方(動画の整理にそって)

  • 配当が将来にわたって一定、という仮定を置く。
  • 株価は、年間の配当を株主の期待収益率で割って求める。
  • 期待収益率は、投資家がその株のリスクに見合うと考えるリターンである。

定率成長モデル:配当が一定の割合で増え続けるなら

でも実際には、多くの企業は成長を目指しています。配当も増えていくことが期待されます。配当が増え続ける場合はどう計算するのか。ここで出てくるのが定率成長モデルです。配当が毎年一定の成長率で増え続けると仮定します。計算式は、少しだけ複雑になります。

定率成長モデルの式

P=D1÷(Re-g)

株価Pは、1年後の配当D1を、期待収益率Reから成長率gを引いたもので割ります。

動画では、1年後の配当をDt+1、成長率をGと読み上げています。このページでは、D1とgで書きます。

毎年の配当(年2%で増える)100D1102D2104D3106D4108D5…↑ 1年後の配当(現在の配当ではない)株価 P = D1 ÷ (Re - g)100円 ÷ (0.05 - 0.02) ≒ 3,333円
分子は「1年後の配当」。棒の伸びは見やすく大きめに描いた模式図です。

分母が「期待収益率マイナス成長率」になっている。ここが興味深いですね。

ここが重要なんです。まず分子のD1は、1年後に受け取ると予想される配当額です。現在の配当額じゃない、という点にまず注意が必要です。

Reは先ほどと同じ株主の期待収益率で、新しく出てきたgが配当の成長率です。そして動画は、このモデルが成立するための大事な条件を1つ挙げます。

定率成長モデルが成り立つ条件(動画の説明)

  • 株主の期待収益率Reが、配当の成長率gを必ず上回っている(Re>g)。
  • そうでないと分母がマイナスになり、株価がマイナスという現実的でない答えになってしまう。

(補足:動画にない設例です。1年後の配当D1が100円、Re=5%、g=2%なら、分母は0.05-0.02=0.03で、100÷0.03=約3,333円です。配当は1年後が100円、2年後が102円、3年後が約104円と増えていきます。上の表と同じように1年ずつ割り引いて足すと、10年で約839円、50年で約2,551円、100年で約3,150円、300年で約3,333円に近づきます。)

(補足:取り違えやすいのが、分子の配当です。いまの配当が100円で、gが2%なら、1年後の配当D1は100×1.02=102円です。この102円を使うと102÷0.03=3,400円です。現在の100円をそのまま分子に入れると約3,333円で、約67円ずれます。動画が「現在の配当額じゃない」と念を押すのは、このためです。)

(補足:Re=gなら分母が0で式が使えず、Re<gなら分母がマイナスです。式の上でも、動画の言う条件が必要だとわかります。また、g=0とすると、定率成長モデルの式は D1÷Re になり、ゼロ成長モデルの式と同じになります。ゼロ成長は、定率成長の特別な場合と見ることもできます。)

期待収益率Reとは何か:2つのリターンの合計

どちらのモデルでも、株主の期待収益率Reが鍵を握っています。そこで、結局のところ期待収益率とは一体何なのか。動画の答えは、株主が1年間の投資で得られると期待する総合的なリターンです。そして、それは2つの要素でできています。

要素中身
インカムゲイン(配当利回り)配当そのものから得られる、現金で直接もらえる利益
キャピタルゲイン(値上がり益)株価の上昇によって得られる、資産価値が上がることによる利益

つまり、現金で受け取る配当の利益と、資産価値そのものが上がることによる値上がりの利益、その合計だということですね。

お見事、その通りです。

期待収益率の式

Re=D1÷P0+(P1-P0)÷P0

P0は現在の株価、P1は1年後の株価です。前半が配当利回り、後半が値上がり益の率です。

期待収益率Re(1年間の合計リターン)インカムゲイン配当利回り 3%キャピタルゲイン値上がり益 2%合計 = Re = 5%Re = D1÷P0 + (P1-P0)÷P0(例:D1=100円、P0≒3,333円、P1≒3,400円)
期待収益率は、「配当の利回り」と「値上がり益の率」の合計です。

動画は、投資家がどんなリターンを期待しているかを理解することが、株価を評価するうえでの大前提になる、と言います。そして、ここまでの話を聞き手が次のようにまとめます。講師は「完璧なまとめ」と答えました。

配当が一定のゼロ成長モデルと、配当が成長していく定率成長モデルがある。そして、その両方の計算の根幹にあるのが、投資家が期待するリターン、つまり株主の期待収益率なんだ、ということですね。

はい、完璧なまとめです。

(補足:2つのモデルのつながりを、数字で確かめます。設例の株価は約3,333円で、D1=100円なので、配当利回りは100÷3,333=3%です。株価が配当と同じ2%で上がるなら、1年後の株価P1は約3,400円で、値上がり益の率は2%です。合計は3%+2%=5%で、確かにReと一致します。定率成長モデルは、値上がり益の率がちょうどgになる世界と読めます。ゼロ成長なら株価は動かないので、値上がり益は0で、配当利回りがそのままReです。動画の例では100÷2,000=5%です。)

(補足:期待収益率は、企業の側から見ると、株主資本コスト(自己資本コスト)にあたるとされます。見積もる方法には、CAPMや配当割引モデルがあります。)

1社の数字で通しで確かめる(動画にない設例)

ここまでの内容を、1社の数字で通して確かめます。動画にない設例です。1年後の配当が60円と予想される株で、株主の期待収益率Reは8%とします。

ケース式株価
ゼロ成長(配当は60円のまま)60÷0.08750円
定率成長(g=3%)60÷(0.08-0.03)1,200円

同じ配当60円でも、「ずっと60円」と考えるか「毎年3%ずつ増える」と考えるかで、株価は750円と1,200円に分かれます。差の450円は、配当の成長への期待を織り込んだぶんです。

次に、逆向きの使い方です。市場で株価が1,000円、D1=60円、g=3%だとします。期待収益率は、配当利回りが60÷1,000=6%、値上がり益の率が3%で、合計9%です。確かめると、60÷(0.09-0.03)=1,000円となり、株価と一致します。株価と配当の予想から、市場が織り込んでいる期待収益率を逆算することもできます。

動画の最後の問い:前提の数字をどう置くか

動画は、ここで重要な問いが浮かび上がる、と言います。これらのモデルは、将来の成長率gや期待収益率Reといった、いわば予測にもとづいて計算されます。計算そのものは、公式に当てはめれば誰でもできます。大事なのは、前提となる数字を自分でどう設定して、その根拠をどう説明するのか。そこが、コンサルタントやアナリストとして最も腕の見せ所になる部分なのかもしれない、と動画は言います。

その数字の置き方1つで、全然違う答えが出てきちゃいますもんね。

まさに、だからこそ、その前提をどう置くかというストーリーがすごく大事になってくるんです。

(補足:「全然違う答え」を、設例で数字にしてみます。D1=100円、Re=5%のまま、gだけを1%から4%まで動かすと、株価は約2,500円、約3,333円、約5,000円、約10,000円と、gがReに近づくほど急に大きくなります。分母のRe-gが小さくなるからです。たとえばgが3%から4%へ1%動くだけで、約5,000円が約10,000円と2倍になります。)

Re=5%、D1=100円で、gだけを変える2,500円g=1%3,333円g=2%5,000円g=3%10,000円g=4%
gが少し動くだけで、株価は大きく変わります。

(補足:今度はgを2%に固定して、Reだけを動かします。Reが高いほど、株価は小さくなります。)

Reg株価(円)
4%2%約5,000
5%2%約3,333
6%2%約2,500

ReとgのどちらもDDMでは予測値です。計算は機械的でも、前提の数字の根拠を説明できるかが大事だ、というのが動画の結びです。

まとめ

  • 配当割引モデルは、将来の配当を現在の価値に割り引いて、株の価値を求める考え方。
  • ゼロ成長モデルは、配当が一定のとき。P=D÷Re。動画の例は、100円÷0.05=2,000円。
  • 定率成長モデルは、配当が毎年一定の率で増えるとき。P=D1÷(Re-g)。分子は1年後の配当。
  • 定率成長モデルはRe>gが条件。そうでないと分母がマイナスになる。
  • 期待収益率Reは、インカムゲイン(配当利回り)+キャピタルゲイン(値上がり益)の合計で、株主が1年間に期待する総合的なリターン。
  • 計算は誰でもできる。腕の見せ所は、gやReという予測の数字をどう置き、どう説明するか。

動画の最後のメッセージは、公式に数字を入れるだけなら誰でもできる、ということです。前提の数字にどんなストーリーがあるのかを説明できてこそ、評価として意味を持ちます。式の形と条件をおさえたうえで、数字の置き方まで考える習慣をつけましょう。

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