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貨幣の時間的価値『NPV(正味現在価値)投資判断』

財務・会計 第20回

財務・会計・貨幣の時間的価値 00115分39秒2026年2月15日公開

「今日の100円と1年後の100円。もしどちらかを選べるとしたら、あなたはどちらを選びますか」。動画はこんな問いかけから始まります。このページでは動画の流れにそって、将来価値と現在価値、割引率の3つの呼び方、現価係数、フリーキャッシュフロー、そしてNPV(正味現在価値)による投資判断をまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。

今日の100円と、1年後の100円

動画は、こんな問いかけから始まります。「今日の100円と1年後の100円、もしどちらかを選べるとしたら、あなたはどちらを選びますか」。ほとんどの人は今日の100円を選びます。今すぐ銀行に預ければ、1年後には利息がついて、たとえば101円に増えているかもしれないからです。

当たり前のようでいて、実は奥が深い話だと動画は言います。同じ金額でも、時点が違えば価値が違う。この考え方が、3,000億円の工場を建てるような大きな投資判断の根幹にあるのです。講師は、これを単なる机上の理論ではなく、「その投資は、将来生み出す利益を考えても、本当に今やる価値があるのか」を判断する実践的な物差しだと説明します。今回のゴールは、今のお金と将来のお金を同じ尺度で比べる考え方と計算方法を身につけて、最終的にたった1つの数字で投資の是非を判断するところまで進むことです。

将来価値:今の100万円は、あとでいくらか

最初に出てくるのは将来価値(フューチャーバリュー、FV)です。今持っている100万円を年利5%で1年間運用すると、利息は5万円で、元本と合わせて105万円になります。これが「現在の100万円の1年後の将来価値」で、式にすると100万円×(1+0.05)です。

今(現在)100万円1年後105万円×(1+0.05)将来価値FVを求める÷(1+0.05)現在価値PVを求める同じ金額でも、時点が違えば価値が違う
上の矢印が「ふやす」計算、下の矢印が「割り引く」計算です。

では3年間、複利(利息にも利息がつく計算)で運用するとどうなるでしょうか。1年後が105万円、2年目はその105万円に5%がかかるので、計算が少しややこしくなります。そこで次の式を使います。

将来価値の式

FV=PV×(1+R)のN乗

FVが将来価値、PVが現在価値、Rが利率、Nが年数です。

動画の例は100万円×1.05の3乗で、約115.8万円です。100×1.05×1.05×1.05=115.7625で、動画の約115.8万円と一致します。

元本100万円利息(利息の利息を含む)100今1051年後110.252年後115.763年後年利5%・複利(単位:万円。3年後は約115.76)
利息にも利息がつくので、ふえ方は年ごとに少しずつ大きくなります。

黄色い部分が利息の積み上がりです。2年目の利息は5万円ではなく、105万円の5%で5.25万円になります。この式さえ覚えておけば、何年先でも計算できます。

Rには3つの顔がある:割引率・期待収益率・資本コスト

ここで出てきたRは、さっきは利率と言いましたが、資料には割引率とも書いてあります。どう違うのですか。

良い質問です。誰の視点から見るかで呼び方が変わるだけで、本質は同じものなんです。

視点呼び方意味
投資家期待収益率この投資から最低でもこれくらいは稼ぎたい、という率
お金を調達する企業資本コスト資金を集めるためのコスト
将来のお金を現在にするとき割引率この後の現在価値の計算で使う率

動画の説明では、銀行から借り入れれば利子を払い、株主から出資を受ければ配当で応えなければなりません。そのコストが5%だとします。聞き手が、投資家の期待と企業のコストが同じ1つの数字Rで表されるのですね、と受け止めると、講師は、企業の意思決定ではこの2つは表裏一体として扱われると言います。投資家が期待するリターン、つまり資本コストを上回る価値を生み出せない投資は、企業価値を高めないと判断される、という流れです。

(補足:動画は出資者へのコストを「配当」で説明していますが、株主資本のコストは、実際に払った配当の額そのものではなく、株主が求める利回りとされています(資料により説明の仕方は異なります)。また、借入と出資の両方で資金を集めるときは、それぞれのコストを資金の割合で重みづけした平均(加重平均資本コスト)で考えるのが一般的とされています。)

現在価値:将来のお金を「割り引く」

ここから、視点を逆にして現在価値(プレゼントバリュー、PV)を見ていきます。「1年後に確実に105万円あげます」という約束があるとします。割引率、つまりあなたの期待収益率が5%だとすると、この約束は今のあなたにとっていくらでしょうか。

聞き手は、今100万円あれば5%で運用して1年後に105万円にできるのだから、約束の今の価値はちょうど100万円だと答えます。講師は「その通りです」と認め、計算式を示します。

現在価値の式

PV=FV÷(1+R)のN乗

動画の例:105万円÷(1+0.05)=100万円

将来のお金の価値を、現在の価値に割り引いて評価する。講師はこれをファイナンスの思考法の根幹と呼びます。聞き手が、将来にもらえるお金は今すぐもらえるお金より価値が低いから、その分を差し引いて考えるイメージですね、と言い換えると、講師は「完璧です」と応じます。

この考え方の強みは、複雑な収益計画でも、すべて「今の価値」にそろえられることです。動画の例は、5年後に1,000万円、10年後に2,000万円もらえるという計画です。それぞれを現在価値にして合計すれば、最初に必要なお金と比べて、本当に割に合うかを冷静に判断できます。

(補足:この例を割引率5%で計算すると、1,000÷1.05の5乗+2,000÷1.05の10乗=約2,011万円です。)

計算の近道:複利現価係数と年金現価係数

割引率5%で10年後の100万円の現在価値を、試験中に電卓で1.05を10回も割るのは、考えただけで焦ります。何か近道はありませんか。

もちろんあります。そんな面倒な計算を受験者にさせるわけにはいかないので、試験では便利な係数が与えられるんです。

  • 複利現価係数:1÷(1+r)のn乗を、あらかじめ計算して表にしたもの。将来の特定の1時点のお金(一時金)に使う。動画の例は、割引率5%・10年で0.614。100万円×0.614=61.4万円。
  • 年金現価係数:各年の複利現価係数をあらかじめ合計したもの。毎年同じ金額を受け取る年金形式のキャッシュフローに使う。動画の例は、割引率5%・3年で2.723。毎年100万円×2.723=272.3万円。
一時金(1回だけ)複利現価係数10年後の100万円割引率5%・10年:0.614100万円×0.614=61.4万円年金(毎年同額)年金現価係数毎年100万円を3年割引率5%・3年:2.723100万円×2.723=272.3万円年金現価係数は、各年の複利現価係数の合計0.952 + 0.907 + 0.864 = 2.723(1年目+2年目+3年目・割引率5%)
お金の流れが「1回」か「毎年」かで、使う係数を切り替えます。

年金の場合も、1年後・2年後・3年後の100万円を、それぞれの複利現価係数で計算して、最後に足し合わせれば出せますよね。

それでも正解は出せます。ただ、もっと賢い方法があります。

まさか、その3年分の複利現価係数を全部足したものが用意されているとか。

ご名答です。それが年金現価係数です。

聞き手は、学習のポイントとして、問題文をしっかり読んで、お金の流れが1回きりの一時金なのか毎年続く年金なのかを見極め、どちらの係数を使うか瞬時に判断する訓練を積むことだ、とまとめます。

(補足:割引率5%の複利現価係数は1年目0.952、2年目0.907、3年目0.864(小数第4位を四捨五入)で、合計は2.723です。10年の係数は1÷1.05の10乗=0.6139…で、動画の0.614は四捨五入した値です。なお、年金現価係数は、各年のお金が年末に入る前提の係数です。また、動画は「試験では必ず与えられる」と言いますが、係数が与えられる形は問題によって異なりうるので、問題文で確認しましょう。)

フリーキャッシュフロー:自由に使える現金

次は実際のビジネスの現場です。フリーキャッシュフロー(FCF)は、講師によれば、会社が本業で稼ぎ、事業を維持・成長させるための投資もすべて終えたあとに、最終的に手元に残った自由に使える現金です。誰に対して自由かといえば、お金を出してくれた株主や、貸してくれた銀行などの債権者に対してです。配当に回しても借金の返済に充てても、会社の好きにしてよい。企業が生み出した価値そのものといえる現金だと説明されます。

それは、損益計算に出てくる利益とは違うのですか。

全く違います。会計上の利益はいろいろなルールに基づいて計算されるので、必ずしも手元の現金の額とは一致しません。FCFは現金にこだわった指標なんです。

資料には、税引後営業利益に減価償却費を足し戻すとあります。減価償却費は費用ですよね。なぜ足し戻すのですか。

減価償却費は会計上は費用として計上されますが、実際にその金額のお金が会社の外に出ていきましたか。

出ていっていないですね。昔買った機械の価値が帳簿上で減っていくだけです。

その通りです。帳簿上は費用でも現金は減っていない。こうした費用を非資金費用といいます。

利益を計算するときに一度引かれた減価償却費は、現金が減っていないので、足して元に戻します。そのうえで、運転資金の増減や新たな設備投資額などを調整して、最終的にFCFを求めます。聞き手は、あくまでリアルな現金の出入りを計算するための調整なのですね、と納得します。

(補足:数字のイメージです。動画にない設例で、単位は万円です。)

項目金額
税引後営業利益60
+減価償却費(現金は出ていない)+40
−設備投資−30
−運転資本の増加−10
FCF60(60+40−30−10)

(補足:FCFの式は、資料によって項目の分け方や名前が異なることがあります。ここでは、動画が挙げた項目だけを並べました。)

NPV:すべてがつながる最終形

いよいよクライマックスです。これまでの現在価値・係数・FCFが、NPV(ネットプレゼントバリュー、正味現在価値)で1つにつながります。動画の設例は、新しい工場を10億円で建てるプロジェクトです。完成後10年間、毎年どれくらいのFCFを生むかを予測します(1年目は1億円、2年目は1.5億円、というように)。

その予測したFCFを、先ほどの現在価値の考え方で1つずつ今の価値に割り引き、10年分を合計します。そこから、最初に必要だった10億円の投資額を引いた残りが、NPVです。

将来のFCFを予測(1年目〜n年目)現在価値に割り引く(係数など)現在価値の合計−最初の投資額NPV(正味現在価値)NPV>0実行(ゴー)NPV<0見送り(ノーゴー)
これまでの部品が、NPVという1つの数字にまとまります。

これまでの話は、全部このNPVという最終的な投資の成績を出すための、部品集めだったんですね。

ええ、全てがここにつながります。NPVを使った投資の判断基準は、驚くほどシンプルでパワフルです。

投資判断の基準(動画の整理にそって)

  • NPVがプラス(0より大きい)なら、投資額を上回る価値を将来生み出す。実行すべき(ゴー)。
  • NPVがマイナスなら、投資額分の価値も生み出せない。見送るべき(ノーゴー)。
  • 複数の投資案があるなら、NPVがいちばん大きいものを選ぶ。講師はこれを、投資意思決定の王道中の王道と言われる考え方だと説明する。

(補足:動画は触れていませんが、NPVがちょうど0なら、投資額を回収したうえで、割引率ぶんのリターンがちょうど得られる状態です。また、「いちばん大きいものを選ぶ」は、同時には実行できない案どうしを比べるときの話と考えると整理しやすいです。)

NPVの判断基準のあと、講師は、全体を貫くキーワードは割り引くという行為だと言います。将来の不確実なお金の価値を、現在の物差しに換算して評価する。この感覚をつかむことが、この分野を理解するうえで何よりも重要だと言えるでしょう、という話です。

設例で確かめる(補足)

(補足:ここは動画にない設例です。投資額300万円の機械を買い、毎年末にキャッシュフローが入る場合を考えます。単位は万円です。)

まず案Aは、毎年100万円が3年続く場合です。年金現価係数を使うと、割引率が高いほど現在価値が小さくなり、NPVは悪くなります。

割引率現在価値の合計NPV(−300)
3%(係数2.829)282.9−17.1
5%(係数2.723)272.3−27.7
8%(係数2.577)257.7−42.3
10%(係数2.487)248.7−51.3

案Aは、どの割引率でもNPVがマイナスなので、見送りです。次に案Bは、毎年の金額が変わる場合で、1年目100、2年目120、3年目150とします。年金ではないので、各年に複利現価係数をかけて足します。割引率5%なら、100×0.952+120×0.907+150×0.864=95.2+108.8+129.6=約333.6(係数を小数第3位に丸めた値で計算しています。丸めずに計算すると約333.7)で、NPVは約+33.6(丸めずに計算すると約+33.7)。実行です。同じ案Bでも、割引率を8%にすると、現在価値は約314.5、NPVは約+14.5に縮みます。

動画の最後の問い:割引率はずっと同じでいい?

講師は最後に、考えを深める問いを投げかけます。ここまでは、プロジェクトの期間中、割引率は一定(たとえばずっと5%)という前提でした。しかし現実には、立ち上げたばかりの事業の1年目のキャッシュフローと、軌道に乗った5年目のキャッシュフローで、不確実性、つまりリスクは本当に同じでしょうか。リスクが年々変わるなら、企業はその変化をどう割引率に反映して、より適正な投資判断をしているのでしょうか。動画は答えを示さず、問いのまま終わります。

(補足:動画にない話です。一般に、リスクが高いお金ほど高い割引率で割り引く、つまり現在価値を小さく見積もる、と説明されます。上の設例のとおり、割引率が高いほどNPVは小さくなります。リスクが年ごとに変わる場合の扱い方には、年ごとに割引率を変える、予測するキャッシュフロー側でリスクを織り込む、などいくつかの考え方があり、資料により説明が異なります。なお、動画の設例は「確実に105万円もらえる」としながら、投資家の期待収益率5%で割り引いていました。割引率は、そのお金のリスクに見合った率を選ぶものだと覚えておくと、この問いにもつながります。)

まとめ

  • 同じ金額でも、時点が違えば価値が違う。これが貨幣の時間的価値で、投資判断の根幹。
  • 将来価値は FV=PV×(1+R)のN乗。100万円を年利5%・複利で3年なら約115.8万円。
  • 現在価値は PV=FV÷(1+R)のN乗。将来のお金を割り引いて今の価値にそろえる。
  • Rは、投資家から見れば期待収益率、企業から見れば資本コスト、計算では割引率。動画は表裏一体と整理する。
  • 複利現価係数は一時金用、年金現価係数は毎年同額用。年金現価係数は各年の複利現価係数の合計。
  • FCFは、事業に必要な投資を終えたあとに残る自由な現金。減価償却費は現金が出ない費用なので足し戻す。
  • NPV=将来のFCFの現在価値の合計−最初の投資額。プラスなら実行、マイナスなら見送り。
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