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中小企業診断士 1次試験

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会社設立の基本フロー

経営法務 第17回

経営法務・会社法 00120分21秒2026年4月2日公開

「もし私が今日から会社を作りたいとして、現金の代わりに、実家のガレージで眠っている中古車を出資してもいいと聞いたらどう思いますか?」。動画はこんな問いかけから始まります。このページでは動画の流れにそって、会社設立の5つのステップ、定款の必須項目、変態設立事項と検査役の調査、発起設立と募集設立、出資者の責任、設立後の届出の期限をまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。

中古車で会社を作ると、何が起きる?

「もし私が今日から会社を作りたいとして、現金の代わりに、実家のガレージで眠っている中古車を出資してもいいと聞いたらどう思いますか?」。動画はこんな問いかけから始まります。講師の答えは「法律上は全く問題ない。ただし、日本の会社法の中で最も厳重に監視される、ものすごく変わった名前の法的プロセスが発動する」というものです。その名前は、あとで回収します。

今回のテーマは、会社法のうち会社設立の流れです。動画によると、会社法は設立から、株式や社債による資金調達、機関設計、企業再編、解散まで、会社に関するルールを定めた法律で、ただの暗記科目だと思って挑むと苦労するそうです。

丸暗記を減らす設計思想:遠くのステークホルダーを守る

動画が挙げる「裏技」は、会社法全体を貫く1つの設計思想です。会社から遠いところにいる利害関係者(ステークホルダー)を、どう守るかという見方です。身内だけで完結しているうちはルールもゆるく、関わる他人が増えるほど、彼らを守るために法律は厳しくなります。(補足:これは動画の整理の仕方で、条文の言葉ではありません。)

会社設立は5つのステップ

動画は、設立までの流れを次の5つで説明します。会話では、ゲームで新しい冒険に出る流れにたとえられ、会社を立ち上げることは新しいギルドを作るようなもの、最初の定款の作成はキャラクター作成と基本ルールの決定にあたる、と話が進みます。

1定款の作成ルールづくり(キャラクター作成)2出資を募るゴールドを集める3機関の選任取締役などを決める4登記法務局で登記して、正式に誕生5設立後の届出出生届のような手続き
設立は、この5つの順に進みます(株式会社の流れ)。

(補足:この5ステップは株式会社の流れです。合同会社などの持分会社の定款には、公証人の認証は不要とされています。)

ステップ1 定款の作成

定款は、会社の「憲法」にあたるルールブックです。作るのは発起人、つまり会社を立ち上げる人で、すでに存在している別の法人も発起人になれます。会社が会社を作ることもできるわけです。作った定款は、国の機関の代わりのような役割を持つ公証人の認証を受けて、初めて法的な効力を持ちます。この最初の定款を原始定款と呼び、最近は電子定款も普及しています。

設立後にルールを勝手に書き換えられると、出資者が大きな損害を受けかねません。そこで動画は、定款の変更には株主総会の特別決議という重いハードルがある、と説明します。(補足:特別決議は、原則として出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要です。会社法466条、309条2項11号。)

定款に必ず書く6項目

動画は、書かれていないと定款全体が無効になる必須項目を、6つ挙げています。

  • 目的:事業内容。
  • 商号:会社の名前。動画では、同一住所で同じ名前の会社は作れない、とされます。
  • 本店の所在地:拠点。
  • 設立に際して出資される財産の価額、またはその最低額:初期資金の規模。
  • 発起人の氏名または名称と住所:誰が立ち上げたか。
  • 発行可能株式総数:会社が将来発行できる株式の上限。
定款に必ず書く6項目(動画の整理)目的(事業内容)商号(会社の名前)本店の所在地出資される財産の価額またはその最低額発起人の氏名・名称と住所発行可能株式総数(成立の時まででよい)公証人の認証までに必要成立の時までに定める
動画は必須項目を6つ挙げ、最後の1つだけ時期が違うと説明します。

上の5つは会社を作る瞬間に必要そうですが、発行可能株式総数も、最初から決めておかないといけないのですか。

素晴らしい視点ですね。実は試験でも、そこがよく狙われるトラップです。最初の5項目は公証人の認証までに必要ですが、発行可能株式総数だけは、認証時ではなく会社の成立の時までに定めればよい、という特例になっています。

理由は、設立の直前まで、投資家といくら出資してもらうかの交渉が続くことがよくあるからです。ギリギリまで株式数を調整できるように、法律が柔軟性を持たせています。タイミングが違う背景を知っていれば、引っかけ問題も見破れる、と動画は言います。

(補足:条文の数え方とは少し違います。会社法27条の絶対的記載事項は、目的、商号、本店の所在地、出資される財産の価額またはその最低額、発起人の氏名または名称と住所の5つです。発行可能株式総数は37条で別に扱われ、定款に定めがなければ、成立の時までに発起人全員の同意で定款を変更して定めます。動画は、これを6つ目として数えています。「5つは認証まで、1つは成立の時まで」という中身は動画と同じです。なお、同じ本店所在場所に同じ商号の会社は登記できない、というのは商業登記法27条の定めで、住所が違えば同じ商号も使えます。)

変態設立事項:中古車の出資はなぜ厳重に監視されるのか

冒頭の質問に戻ります。現金の代わりに中古車を出資するのは、定款の相対的記載事項の一部である変態設立事項にあたります。なぜ、そこまで厳重に監視されるのでしょうか。

動画の例:水増しされる初期ステータス

市場価値が50万円しかないボロボロの中古車を、発起人が「1,000万円の価値がある」と言い張って出資したとします。帳簿上の初期資金だけが、差額の950万円も水増しされます。それを見た外部の投資家は「この会社は資金が潤沢だ」と信じて出資してしまうかもしれません。ここで、遠くのステークホルダーが被害にあいます。

そこで、発起人の権限の乱用を防ぐために、変態設立事項は定款に書かなければ無効になり、原則として裁判所に検査役を選任してもらって、本当にその価値があるのかを調べてもらいます。動画は、全部で4つだと説明します。どれも、発起人が会社のお金を自分に都合よく引き出せるリスクがある項目です。

  • 現物出資:現金以外の財産での出資。冒頭の中古車がこれです。
  • 財産引受:会社の成立後に特定の財産を買い取る約束。
  • 発起人の報酬や特別利益
  • 設立費用
変態設立事項(定款に書かないと無効)現物出資財産引受発起人の報酬・特別利益設立費用原則:裁判所の選任する検査役の調査調査が不要になる場合(現物出資・財産引受)① 定款記載の価額の総額が500万円以下② 市場価格のある有価証券③ 弁護士・会計士・税理士などの証明
4つとも、発起人が会社のお金を自分に都合よく動かせる項目です。

でも、毎回検査役を呼んでいたら、お金も時間もかかって企業のスピードが落ちませんか。

なので合理的な例外ルールも用意されています。たとえば対象となる財産の総額が500万円以下なら、検査役の調査は不要です。調査費用のほうが高くついて、かえって会社にマイナスになるからです。

動画が挙げる免除は、財産の総額が500万円以下、市場価格のある有価証券(すでに市場で客観的な価値が証明されている)、専門家の証明(弁護士、公認会計士、税理士などから適正な価格だという証明を受けた場合)の3つです。守るべきステークホルダーの被害額と、手続きのコストを天秤にかけている、という理解です。

(補足:条文に近づけて整理します。会社法33条10項によると、①この免除が使えるのは現物出資と財産引受だけで、発起人の報酬・特別利益と設立費用は対象外です。②500万円は、定款に記載した価額の総額で判断し、「500万円を超えない」場合が免除です。③専門家の証明は、弁護士、弁護士法人、公認会計士、監査法人、税理士、税理士法人によるもので、不動産のときは不動産鑑定士の鑑定評価も必要です。)

設例(補足・自作)

中古車(定款に記載した価額300万円)と機械(150万円)を現物出資すると、合計450万円で、500万円以下なので検査役の調査は不要です。機械が250万円だと合計550万円で500万円を超えるため、検査役の調査を受けるか、専門家の証明などを使うことになります。

譲渡制限株式:知らない人を勝手にパーティーへ入れない

仲間の1人が「自分の持ち分を通りすがりの人に売る」と言い出したら困ります。これを防ぐ仕組みが譲渡制限株式で、株式を他人に譲渡するときに会社の承認が必要になるルールです。全部の株式をこの譲渡制限にしている会社を非公開会社と呼びます。動画は、知らない人が入らないようにかける「ロック機能」にたとえます。

もしメンバーがどうしても売りたいと言ってきて、会社がダメだと決めたら、身動きが取れなくなりませんか。

そこで救済措置があります。会社自身が買い取るか、会社が指定した人(指定買取人)に買い取らせます。

(補足:この買取りは、株主が譲渡の承認を請求するときに、承認しないなら会社または指定買取人が買い取ってほしい、と併せて請求している場合の仕組みとされています(会社法138条)。また、会社法の「公開会社」は、一部でも譲渡制限のない株式を発行している会社をいい、上場しているかどうかとは別の話です。動画の最後の「株式公開」(上場)とは、言葉の意味が違います。)

ステップ2 出資:発起設立と募集設立

お金を集める方法は、大きく発起設立と募集設立の2つで、ここでも誰を守るかが鍵になります。

発起設立は、発起人だけがお金を出し合って全員が株主になる方法です。発起人は最低1株は引き受けます。ステークホルダーは身内だけなので、お金が振り込まれたことを証明する銀行発行の払込金保管証明書は不要です。

募集設立は、発起人以外の第三者からも出資を募る方法です。発起人は1株以上を引き受けますが、守るべき外部のステークホルダーが登場するので、払込金保管証明書が必須になります。あとから「実は発起人は出資していませんでした」と発覚したら大問題だからです。

発起設立募集設立出資する人発起人だけ出資する人発起人+第三者守る相手身内だけ守る相手外部の人も払込金保管証明書不要払込金保管証明書必要
外部の人が関わるかどうかで、ルールの厳しさが変わります。

試験本番で、払込金保管証明書が必要なのはどっちだっけと迷っても、外部の人が関わるかを考えれば導けますね。

そうですね。遠くの人を守るという原則で、募集設立だと一発で解けます。

(補足:募集設立では、株式を引き受けた人が集まる創立総会(会社法65条)を開くことも、発起設立との違いです。)

出資者の責任の重さ

責任の分け方は2つあります。1つめは、会社が倒産したとき、債権者にどこまで責任を負うか。個人の財産まで上限なく負うのが無限責任、出資した額を限度とするのが有限責任です。ゲームにたとえると、無限責任はギルドが崩壊したら現実の家まで借金取りが来る状態、有限責任は課金した分はあきらめるが現実の財布は痛まない状態です。

2つめは、債権者にどうやって弁済するか。債権者が出資者に直接請求するのが直接責任、弁済義務はあくまで会社が負い、出資者は会社に出資することで間接的に義務を果たすのが間接責任です。株式会社の株主は、有限責任で間接責任なので、安心して遠くから応援できるポジションだ、と動画はまとめます。

無限責任有限責任直接責任間接責任合名会社の社員(補足)合資会社の有限責任社員(補足)該当なし株式会社の株主合同会社の社員も同じ(補足)
株式会社の株主は、有限責任で間接責任です。

(補足:図の動画にない3つは補足です。会社法104条は、株主の責任は株式の引受価額を限度とすると定めています。合同会社の社員も有限責任・間接責任、合名会社の社員は無限責任・直接責任です。合資会社の有限責任社員は、出資額の範囲で、債権者に直接責任を負います。)

ステップ3・4 機関の選任と設立登記

お金が集まり、取締役などの機関も選任されたら、会社を正式に誕生させる登記です。動画では、機関の選任の中身は扱いません。会社は、法務局で設立登記をして、初めて法的な存在として誕生します。登記には、商号、目的、資本金の額など定款と同じ基本情報に加えて、次のものが載ると動画は説明します。

  • 本店だけでなく、支店の所在地。
  • 定款で後回しにしてよかった発行可能株式総数と、発行済株式の総数。成立時に、ここで確定します。
  • 代表取締役や取締役の氏名、機関設計の状況。
  • 公告方法:会社が重要なお知らせをする手段。定款で決めていなければ、官報に載せることになります。

(補足:登記で会社が成立する点は会社法49条に定めがあります。設立の登記は、検査役の調査などが終わった日、または発起人が定めた日のうち遅いほうから2週間以内に申請するとされています(会社法911条1項)。動画にない話です。)

ステップ5 設立後の届出:数字は「緊急度」で覚える

設立登記が済んでも、これで終わりではありません。人間の出生届や健康保険の加入手続きのように、新しい法人にも届出が必要です。動画は、ここも試験でよく狙われるポイントだと言い、数字は丸暗記せず、提出先の性質と緊急度から導けると説明します。

届出期限提出先
社会保険の新規適用届5日以内年金事務所
労働保険の保険関係成立届10日以内労働基準監督署・公共職業安定所
個人事業の開業届(個人事業の場合のみ)1か月以内税務署
法人設立届出書2か月以内税務署

入社1週間目の社員が仕事中にケガをしたとき、保険の手続きが終わっていなかったら大変です。人の命や生活に直結する手続きは一刻を争うので、5日や10日と短くなっている、と動画は説明します。一方、税務署への届出は、国があとで確実に税金を取るための把握ができればよいので、1か月や2か月の余裕があります。

人間の生活に関わるものは最短の5日や10日、国がお金を徴収するためのものは1か月から2か月。これなら本番でも間違えませんね。

誰をどう守るべきか、緊急度はどれくらいか。それをイメージできれば、数字はあとからついてきます。

(補足:この「緊急度」は動画の覚え方で、実際の期限は手続きごとの法令で決まっています。①社会保険は、法人の事業所なら従業員がいなくても(社長1人でも)強制的に適用されます。動画は「雇ったら」と言いますが、法人は雇用の有無を問いません。労働保険は労働者を使用したときが対象です。②動画は労働基準監督署と公共職業安定所に「保険関係成立届」を出すと簡略化しています。保険関係成立届は労働基準監督署に、雇用保険の適用事業所設置届は公共職業安定所(ハローワーク)に出し、期限はどちらも10日以内です。③都道府県や市区町村にも法人設立の届出があり、期限は自治体で異なります。)

まとめ

この回のまとめ

  • 設立の流れは、定款の作成、出資、機関の選任、登記、設立後の届出の5ステップ。動画の設計思想は、遠くのステークホルダーを守ること。
  • 定款は発起人が作り、公証人の認証を受ける。動画は必須項目を6つ挙げ、発行可能株式総数だけは成立の時までに定めればよいと説明する。
  • 変態設立事項は、現物出資、財産引受、発起人の報酬・特別利益、設立費用の4つ。定款に書かないと無効で、原則は検査役の調査が必要。現物出資と財産引受は、500万円以下などで調査が不要になる。
  • 全部の株式に譲渡制限をつけた会社が非公開会社。発起設立は払込金保管証明書が不要、募集設立は必要。株式会社の株主は有限責任で間接責任。
  • 設立後の届出は、社会保険が5日以内、労働保険が10日以内、開業届が1か月以内、法人設立届出書が2か月以内。

動画の最後は、会社が成長して不特定多数の一般市民が株を買える株式公開(上場)の段階になると、会社法のルールはどう進化するのか、という問いかけで終わります。上場後のルールは、ご自身のテキストで確かめてみてください、と締められています。

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