聞き流しラボby kufu-yaWebテキストNEW
中小企業診断士 1次試験

7科目を、聞き流しで一周する。

企業経営理論から中小企業政策まで、1次試験の論点を科目別の講義動画にまとめています。過去問の解説も1問ずつそろえています。

科目別の講義動画過去問完全解説ファイナルペーパーメンバーシップ
診断士 聞き流しラボ

組織再編のパターン

経営法務 第34回

経営法務・会社法 01921分20秒2026年4月5日公開

「ある朝ニュースを見たら、全財産をつぎ込んで株を持っていた会社が、跡形もなく消滅していた」。動画はこんな想像から始まります。このページでは動画の流れにそって、合併、株式交換、株式移転、株式交付、会社分割の5つの手法を、消滅か存続か、全部か一部かという軸でまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。

目覚めたら会社が消えていた?

動画は、こんな想像から始まります。ある朝ニュースを見ると、全財産をつぎ込んで株を持っていた会社が、跡形もなく消えていた。倒産ではなく、一夜にしてライバル企業に丸のみされ、持っていた株は自分の意思と関係なく現金に変えられていた。まるで乗っ取りのようですが、動画はこれを、ビジネスの世界でごく当たり前に行われる、法的に認められた標準的な手法だと説明します。

組織再編とは、ロゴやオフィスを変える表面的な話ではなく、会社が吸収されたり、事業だけが手術のように切り離されたりする構造変化のことです。今回の動画は、合併・株式交換・株式移転・株式交付・会社分割の5つを扱います。

動画のねらいは暗記ではありません。それぞれの手法で、消える会社と残る会社はどれか、株主はどうなるのか、そしてなぜ企業はその手法を選ぶのか。定義(What)だけでなく、戦略的な意図(Why)まで押さえるのが目標です。

吸収合併:大きな魚が小さな魚を飲み込む

合併には吸収合併と新設合併の2種類があります。まずは吸収合併です。A社がB社を吸収する場合、消滅するB社の全部の権利と義務を、合併後に存続するA社に承継させます。B社の資産も借金も、すべて丸ごとA社のものになります。

会社が消滅したら、元のB社の株主は、どうなるんですか? いきなり、放り出されてしまうんでしょうか?

放り出されるわけではありません。B社の株主だった人は、存続するA社の株主になります。B社の株は、なくなりますが、代わりにA社の株を受け取るわけです。

ここで動画は、もうひとつ大事な点を挙げます。消滅するB社の株主に渡す対価は、原則として株式です。しかし、財産的な価値のあるものなら、株式以外でも対価にできます。つまり現金で支払うこともできます。冒頭の「強制的に現金に変えられた」は、このケースでした。

動画は、その狙いをこう説明します。自社の株式を渡すと、新しい株主に経営へ口を出されるリスクが生まれます。現金などを対価にすれば、少数株主を排除し、100%の支配権を保ったまま吸収できる、という説明です。聞き手は「相手の家を解体して土地だけ奪い、住人には立ち退き料を払うようなもの」と受け止めていました。

(補足:動画にない話です。対価を株式以外にできるのは会社法のルールですが、株主が一方的に追い出されるわけではありません。合併は、原則として合併する会社それぞれの株主総会の特別決議で承認します。特別決議は、議決権の過半数を持つ株主が出席し、その3分の2以上の賛成が必要です。反対する株主には、会社に株式を公正な価格で買い取るよう求める株式買取請求権があります。債権者も合併に異議を述べられます。規模の小さい合併などには、総会を省ける例外もあります。)

新設合併:二人が結婚して新しい苗字の家をつくる

もうひとつの新設合併は、A社とB社の全部の権利と義務を、合併によって新しく設立するC社に承継させます。A社の株主もB社の株主も、新しくできたC社の株主になります。つまり、A社もB社も両方が消滅して、新しいC社に生まれ変わります。

吸収合併A社(存続)B社(消滅)A社が存続B社の権利義務を承継新設合併A社(消滅)B社(消滅)新会社C社全部の権利義務を承継
吸収合併は片方が残り、新設合併は両方が消えて新会社ができます。

聞き手のたとえ

聞き手は、吸収合併は大きな魚が小さな魚を丸ごと飲み込み、飲み込まれた方は消えてしまうイメージ、新設合併は二人が結婚してまったく新しい苗字の家をつくり上げるイメージ、とたとえ、講師も同意します。

両方とも会社をつぶして、ゼロからC社をつくるのは、手続きもコストも莫大ですよね。なぜ片方がもう片方を吸収する合併にしないんでしょうか?

おっしゃる通り、実務ではコストや手続きの面から、圧倒的に吸収合併が選ばれます。それでもあえて新設合併を選ぶ背景には、企業のプライドや対等の精神があることが多いんです。

動画の例はこうです。歴史ある大企業どうしの合併で片方が消滅すると、その側の社員や顧客が「敗者として吸収された」と抵抗感を抱きかねません。そこで両者がいったん解散し、対等な立場で新会社をつくる、という説明です。

会社を溶かさずに支配する:株式交換

ここまでは会社が消滅して溶け合う手法でした。しかし動画は、相手を手に入れたいが溶かし合わせたくない場合も多いといいます。理由は2つです。B社が強力なブランドや独自の企業文化を持ち、吸収するとその良さが薄れかねない場合。もうひとつは、B社が将来大きな負債を抱えるおそれがあり、A社の本体に直結させたくない、という防御的な理由です。

そこで登場するのが、会社自体は存続させたまま100%の親子関係をつくる手法で、まず株式交換です。B社が発行済み株式の全部をA社に取得させます。株式交換のあとは、A社がB社の全部の株式を持つので、B社はA社の子会社になります。合併と違って、B社はそのまま存続します。

B社の株主は、持っていたB社の株式をA社の株式と交換し、A社の株主になります。A社はB社の株を100%握る完全な親になりますが、B社は名前もオフィスもそのままで営業を続けます。動画は、経営陣の統合はA社で行いながら、現場の事業はB社として独立して回せる、スマートな手法だと話します。

聞き手のたとえ

聞き手は、合併が「結婚して戸籍をひとつにする」ことなら、株式交換は「養子縁組をして、別々の戸籍のまま親子になる」ようなものだ、とたとえ、講師も同意します。

数値例(このページの自作)

B社の発行済み株式が1,000株、交換比率が「B社1株につきA社0.5株」とします。B社の株主は、1,000株すべてをA社に渡し、合計500株のA社株を受け取ります。A社はB社の株式を1,000株、つまり100%持つことになります。

(補足:動画の説明に、条文の内容を2点加えます。第一に、株式交換で完全親会社になれるのは株式会社か合同会社、完全子会社になるのは株式会社です。第二に、対価はA社の株式に限られず、金銭などでもかまいません。動画は株式と交換する場面を説明しているので、対価の柔軟さは合併と同じだと覚えておくとよいでしょう。)

株式移転:自分でつくった会社が親になる

次の株式移転は、言葉が株式交換と似ていて、聞き手は、試験でも引っかかりやすい点だと言い、講師も「よく混同されます」と応じます。株式移転は、1つまたは2つ以上の会社(A社とB社)が、発行済み株式の全部を新設するC社に取得させる手法です。C社がA社とB社の全部の株式を持つので、A社とB社はC社の子会社になります。A社とB社自体は存続します。

聞き手は、つくったばかりの会社がいきなり自分たちの100%親会社になるのは逆転現象のようで不思議だ、と首をかしげます。動画の答えは、これが持ち株会社(ホールディングス)をつくるときの典型的な手法だ、ということです。A社とB社という独立した家をそのまま残し、その上空に巨大な屋根としてC社を共同で立てるイメージです。屋根のC社が経営戦略を決め、A社とB社は事業に専念します。意思決定と事業運営を切り分けるために、上に新しい親をつくるのです。

A社とB社の株主は、持ち株会社であるC社の株主になります。また、2社以上が共同で株式移転をして新会社をつくるときは、共同で株式移転計画を作成する必要があります。動画は、これも重要なルールとして押さえるよう伝えています。

株式交換A社(既存)B社(存続)全部を取得株式移転C社(新設)A社・B社全部を取得株式交付A社(既存)B社(存続)一部を取得矢印の向きは「株式を取得する」側から相手へ
全部を取るか一部を取るか、親になるのが既存の会社か新設の会社かで区別します。
株式交換株式移転
親になる会社既存の会社新設する会社
子会社になる会社存続する存続する
元の株主親会社の株主に新しい親会社の株主に
使いどころ(動画)相手を完全子会社にしたい持ち株会社(ホールディングス)をつくる

(補足:動画の例は2社ですが、株式移転は1社だけでも行えます。新設する親会社は株式会社で、元の株主には、その新会社の株式が割り当てられます。)

株式交付:一部だけ取得して子会社にする

聞き手は、もうひとつ気になる用語として株式交付を挙げます。親子関係をつくる点は同じに見えますが、何が違うのか。動画の答えはこうです。株式交付は、ある会社(A社)が、子会社となる会社(B社)の株式の一部のみを取得する手法です。発行済み株式の全部を取得させる株式交換とは、ここが決定的に異なります。

一部で子会社といえるのか。動画によれば、子会社にするのに100%の株式は要らず、議決権の過半数など実質的な支配権を握れる一部を取得すればよいのです。B社は存続します。動画は、コストを抑えて必要十分なコントロールだけを握る、ピンポイントな買収手法だと整理します。

株主の動きも違います。B社の株主のうち、A社に株式を譲渡して手放した人だけが、B社の株式とA社の株式を交換し、A社の株主になります。手放さなかった人は、そのままB社の株主であり続けます。

数値例(このページの自作)

B社の発行済み株式が1,000株、議決権は1株に1個とすると、過半数は501個以上です。手放した株主が合計600株分いて、交換比率が「B社1株につきA社0.5株」なら、A社は300株を交付してB社の議決権の60%を得ます。残る400株の株主は、そのままB社の株主です。

(補足:株式交付は、令和元年の会社法改正で新しくできた制度で、令和3年3月1日に施行されました。株式会社を子会社にするために使う制度です。株式交換との違いも補っておきます。株式交換は、株主総会の決議で子会社になる会社の株主全員が対象になります。株式交付は、株主が個別に譲渡を申し込むので、応じなかった株主は対象外です。動画の「手放した人だけ」は、この違いを表しています。なお、子会社かどうかは会社法施行規則3条で定められており、議決権の50%超を持つ場合が基本です(40%以上でも一定の要件を満たせば支配とされます)。株式交付計画で定める取得株式数の下限は、効力発生日に子会社となる数でなければなりません(会社法774条の3第2項)。)

会社分割:特定の事業だけを切り出す

ここまでは会社まるごとが対象でした。特定の事業だけを動かしたいときはどうするか。聞き手は、自動車メーカーが社内で育てたAI自動運転ソフト部門だけを切り離したい、という例を出します。会社全体を合併したり子会社にしたりするのは大げさ、というときに使うのが会社分割で、吸収分割と新設分割の2つがあります。

吸収分割は、分割する会社が、特定の事業に関する権利義務の全部または一部を、他の既存の会社に承継させる方法です。聞き手はケーキの切り分けにたとえます。切り分けた1切れを、他の会社のお皿にひょいと乗せるイメージです。新設分割は、権利義務を、新しく設立する会社に承継させる方法で、全く新しいお皿を用意して載せるイメージです。

吸収分割分割会社残る事業切り出す事業既存の会社新設分割分割会社残る事業切り出す事業新設する会社分割会社が新会社の株式を取得することが多い
会社ごとではなく、事業だけを既存の皿か新しい皿に移します。

新しくできたC社は、いったい誰のものになるんですか? 事業が宇宙空間に飛んでいくわけではないですよね。

ただ切り離して終わりではありません。新設分割のあとは、元の会社であるA社が、新設したC社の親会社になります。

聞き手は、これを「別のカプセルに包んで外に出しつつ、リモコン(親会社としての支配権)は握り続ける」と言い表しました。動画の例では、自動運転ソフト部門は成長の可能性も大きい一方、法的なトラブルや開発失敗のリスクも巨大です。本体の中にあると会社全体が倒産しかねませんが、別会社にすればリスクを隔離でき、支配は続けるので、成果は本体に還元されます。

(補足:動画の「分割会社が親会社になる」は、分割会社が新会社の株式を受け取って持ち続ける、典型的な形の説明です。分割会社が受け取った株式を、そのまま自社の株主に配る形の分割もあり、この場合は分割会社が親会社にはなりません。また、承継できるのは「事業」そのものに限らず、事業に関して持っている権利義務の全部または一部です。債権者の保護や従業員の扱いは、ひとつ前の回(事業譲渡と組織再編)で扱っています。)

見取り図:消滅か存続か、全部か一部か

動画は最後に、会社が消滅するのか存続するのか、対象が全部なのか一部なのか、という2つの軸で整理します。そのうえで、株主がどこへ移り、どの会社が親になるのかを論理的に追えるようにするのが、知識を確固たるものにする鍵だと話します。

会社が消滅会社が存続会社まるごと(全部)一部(株式・事業)合併吸収・新設株式交換株式移転―株式交付会社分割
動画の「消滅か存続か・全部か一部か」の軸に当てはめた見取り図です。
手法消える会社元の株主の行き先
吸収合併B社(吸収される側)存続するA社の株主(対価は現金などのこともある)
新設合併A社とB社の両方新設するC社の株主
株式交換なし親になるA社の株主
株式移転なし新設する親会社C社の株主
株式交付なしA社に株式を譲渡した人だけ、A社の株主

動画は最後に、企業再編のニュースを見たら「なぜ手っ取り早い合併でなく、株式交換で相手を存続させたのか」「なぜ会社全体でなく、会社分割で特定の事業だけを切り出したのか」と問いかけてみよう、と呼びかけます。経営者の戦略的な意図を想像することが、暗記を生きた知恵に変える第一歩だという締めくくりです。

まとめ

このページのまとめ

  • 合併は会社が消えて溶け合う手法。吸収合併は片方が存続し、新設合併は両方が消えて新会社ができる。
  • 吸収合併の対価は原則株式だが、現金など株式以外もよい。動画はこれを少数株主を排除する戦略として説明した(手続きは株主総会の特別決議など)。
  • 株式交換は、株式の全部をA社に取得させる。B社は存続して子会社になり、B社の株主はA社の株主になる。
  • 株式移転は、株式の全部を新設するC社に取得させる。持ち株会社をつくる典型的な手法で、共同で計画を作成する。
  • 株式交付は、株式の一部だけを取得して子会社にする。手放した人だけがA社の株主になる。
  • 会社分割は、特定の事業の権利義務を、既存の会社(吸収分割)か新設する会社(新設分割)に承継させる。リスクの隔離にも使われる。
LISTEN

動画で聞く

NEXT

続けて読む