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中小企業診断士 1次試験

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譲渡制限株式の仕組みと承認手続

経営法務 第30回

経営法務・会社法 01513分29秒2026年4月1日公開

「長年、家族や信頼できる仲間たちと手塩にかけて育ててきた会社に、ある朝、見知らぬスーツ姿の人物が現れて、『今日から私がこの会社のオーナーです』と言い出したら。想像してみてほしいんですけど」。動画はこんな問いかけから始まります。このページでは動画の流れにそって、譲渡制限株式と非公開会社、会社への承認請求、承認を決める機関、2週間以内の通知、買取請求と指定買取人までをまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。

ある朝、見知らぬ人が「今日から私がオーナーです」と現れたら

動画は、こんな想像から始まります。長年、家族や信頼できる仲間と手塩にかけて育ててきた会社に、ある朝、見知らぬスーツ姿の人物が現れます。「昨日、あなたの親族のAさんから株を買い取ったので、今日から私がこの会社のオーナーです」。さらに、会社の帳簿をすべて見せるよう要求してくる。経営者にとっては悪夢です。

とはいえ、株式会社では、株主は自分がお金を出して買った株を自由に売り買いできるのが大前提です(会社法127条)。この悪夢をどう防ぐのか。そこで登場するのが、動画が中小企業にとって「最強の防波堤」と呼ぶ譲渡制限の仕組みです。今回は、この仕組みと、株を売りたいときの承認手続を、Aさんと会社の攻防として追っていきます。

譲渡制限株式とは:定款に書いた「入居審査」

譲渡制限株式とは、株式を譲渡するときは会社に申請して承認を受けなければならない、と定款(会社のルールブック)で定めた株式のことです。自分の持ち物なのに自由に売れないのは不思議ですが、聞き手はこれを会員制の高級クラブや、厳格な審査があるシェアハウスにたとえました。動画では「分かりやすい」と受けています。

誰でも勝手に入居できるわけじゃなくて、今住んでいるメンバーの許可が必要なシェアハウスみたいなイメージですね。

まさにそのイメージです。知らない人が勝手にリビングに座っていたら、みんな落ち着かないですよね。だから、そのルールを定款に明記することが重要なんです。

口約束ではだめなんですね。

動画が強調するのは、ここからです。発行している全部の株式が譲渡制限株式である会社を、非公開会社と呼びます。一部だけではなく、全部に制限がかかっているからこそ「要塞」になる、と動画はいいます。

株式の中身に「譲渡制限」があるかすべての株式が譲渡制限つき非公開会社(動画の「要塞」)制限のない株式が1種類でもある公開会社(上場とは別の話)制限の定めは定款に書く(口約束は不可)
「全部」に制限があるか、「1つでも」ないものがあるかで分かれます。

(補足:公開会社は、法律上は「発行する全部または一部の株式の内容として、譲渡による取得に会社の承認を要する旨の定款の定めを設けていない株式会社」です(会社法2条5号)。上場しているかどうかとは関係がありません。一部の株式にだけ制限があっても、制限のない株式があれば公開会社になります。動画の「全株式が制限されていてはじめて非公開会社」は、この裏返しの言い方です。)

(補足:譲渡制限は、全部の株式の内容として定める方法(107条1項1号)と、種類株式の内容として定める方法(108条1項4号)があります。また、動画は「承認されればBさんへの譲渡は有効」と説明しますが、承認を受けないまま譲渡した場合の扱いは動画にありません。一般には、当事者間では有効でも会社には認めてもらえない、と説明されることが多いようです。資料により整理が異なるため、細かい扱いは参考書で確認してください。)

株を売りたいとき:会社への譲渡承認請求

では、非公開会社の株主Aさんが、自分の株を見知らぬBさんに売りたくなったらどうなるでしょう。社長を飲みに誘って直談判、というわけにはいきません。動画の説明では、Aさん単独、またはAさんと譲り受けようとするBさんが共同で、会社に対して譲渡承認の請求を行います。

聞き手が「単独でも共同でもいいなんて不思議」と驚くと、講師は取引の性質で説明します。Aさんは現在の株主なので、自分の財産を処分する一環として、単独で会社にお伺いを立てる権利があります。一方のBさんはこれから会社のオーナーの1人になろうとする人です。「こういう合意に至ったので承認してください」とAさんと連名でアピールするほうが、取引の透明性を示すことにもなる、という説明でした。

(補足:条文では、請求の場面が2つに分かれています。株式を譲り渡そうとする株主Aは、会社に対して単独で、Bが取得することの承認を請求できます(136条)。これに対して、すでに株式を取得したBが請求する場合は、法務省令で定める場合を除き、株主名簿上の株主A(またはその相続人等)と共同でしなければなりません(137条)。動画の「A単独、またはAとBの共同」は、この2つを一つにまとめた言い方で、共同請求のBは「これから」ではなく、すでに取得したあとの立場です。どちらの請求でも、承認しない場合に会社か指定買取人に買い取ってほしい旨を、あらかじめ請求しておけます(138条)。)

承認を決めるのは誰か:総会か取締役会か

請求を受け取った会社側は、誰が承認するかどうかを決めるのでしょうか。動画の説明では、原則は会社の意思決定機関である株主総会で譲渡の可否を決めます。ただし、全株主に招集をかけて日程を調整していると時間がかかります。Aさんは早く売って現金化したいでしょう。そこで、スピードを重視して、取締役会設置会社の場合は原則として取締役会で決議する、と講師は説明します。

承認するかを決めるのは誰か取締役会を置いていない会社株主総会取締役会を置いている会社取締役会どちらも定款で別に決められる(動画の例:取締役会の会社が総会に戻す)
法律の初期設定を、定款で上書きできます。

ここで終わらないのが、法律の面白いところだと動画はいいます。取締役会設置会社でも、定款で定めれば、株主総会で譲渡の可否を決議できるのです。わざわざ遅くなる方法をなぜ選ぶのか、という聞き手の疑問に、講師は、誰を新しい仲間として迎え入れるかは会社の命運を左右する出来事なので、スピードよりも既存の株主全員の考えを確かめたいケースがある、と答えています。閉鎖的な中小企業ならなおさらです。

定款の力って絶大ですね。法律のデフォルト設定をカスタマイズできるんだ。

基本はスピーディな取締役会でよいけれど、自分たちの会社は株主全員でじっくり決めたい、というなら、定款でルールを上書きしてもいい。そういう柔軟な選択肢が残されています。

動画は、試験で「取締役会があれば常に取締役会で決める」という単純な引っかけに乗らないよう注意を促します。決議の舞台がどこであれ、承認されればBさんへの譲渡は有効になり、一件落着です。

(補足:条文は、承認の決定を、取締役会を置かない会社では株主総会、取締役会設置会社では取締役会とし、「定款に別段の定めがある場合は、この限りでない」としています(139条1項)。「別段の定め」の中身は株主総会に戻す場合に限られず、たとえば代表取締役に決定を委ねる定めなども考えられる、と説明されることが多いようです。動画は株主総会に戻す例だけを挙げていました。)

否決されたら、会社には2週間のタイムリミットがある

ここからが、動画のいう「最もスリリングな部分」です。株主総会または取締役会で譲渡が否決された場合、会社は「だめです」と内部で決めるだけでは終わりません。会社は、請求の日から2週間以内にAさんへ通知する必要があります。そして、この通知がなされなかった場合、Aさんは、なんとBさんへ株式を譲渡できてしまうのです。

承認請求の日2週間(14日)期限(目安)期限内に不承認を通知→ 否決が確定通知がない→ 承認したとみなされる会社の「何もしない」が負けになる
期限内の通知がないと、会社は防衛に失敗します。

会議を開いて明確に否決したのに、たった2週間を過ぎただけで、否決が無効になるんですか。

会社の不作為に対するペナルティとして、自動的に譲渡が可能になります。Aさんからすれば、自分の財産を売りたいのに会社から返事が来なければ、ずっと身動きが取れなくなってしまいますよね。

確かに生殺し状態です。自分の資産が凍結されたのも同然ですね。

だから法律は、会社側に迅速な手続を求めている、というのが講師の説明です。請求を受け取った瞬間から時計の針が進み始め、14日のうちに会議を開いて決議し、通知書を作り、Aさんに確実に届けなければなりません。聞き手は、この2週間をAさんの権利と会社の防衛権がせめぎ合う、ぎりぎりのデッドラインだと言い表しました。「2週間以内」は、動画が何度も繰り返す最重要キーワードです。

期間の数え方の目安を、設例で確かめましょう(自作の設例です)。民法の原則では期間の初日は数えません。たとえば3月1日に請求を受けたとすると、翌日の3月2日が1日目、3月15日が14日目で、そこが2週間の区切りの目安です。会議の招集、決議、通知書の発送を、この間に済ませなければなりません。

(補足:条文では、会社が承認請求の日から2週間(これを下回る期間を定款で定めた場合はその期間)以内に、承認するか否かの決定の内容を通知しなかったときは、承認の決定をしたものとみなされます(145条1号。会社と請求者の合意で別段の定めをした場合は除く)。期限を短くする定めは定款でできますが、長くはできません。さらに、あらかじめ買取請求があって不承認を通知した場合でも、その通知の日から40日以内(指定買取人は10日以内)に、買い取る旨の通知をしなければ、やはり承認したものとみなされます(同条2号)。動画の「通知がなければAさんは譲渡できる」は、この「みなし承認」を平易に言ったものです。なお、通知がいつ有効になるか(出したときか、届いたときか)は資料により説明が分かれる可能性があります。実務では余裕をもって発送し、確実に届ける運用が望ましいといえます。)

否決されたAさんの救済:あらかじめ買取請求

会社が期限内に否決を通知すれば、会社は防衛に成功です。でも、Aさんは株を売って現金化したかったのに、Bさんには売るなと言われてしまいました。このままでは、会社に縛りつけられて身動きが取れません。もしAさんが何も対策をしていなければ、引き続きAさんが株主のまま、つまり現状維持です。

では、Aさんはどうすればよかったのか。動画の答えは、譲渡が否決された場合に備えて、あらかじめ買取請求を行っておくことです。「Bさんへの譲渡を承認してください。でも否決するなら、会社か指定買取人が私の株を買い取ってください」と、最初から請求にセットしておくのがポイントです。否決されてから慌てて「会社が買ってよ」と言っても手遅れだ、と動画は強調します。

Aさんの請求は「セット」で出す①Bさんへの譲渡を承認して ②否決なら株を買い取って会社が譲渡を否決会社が買い取る(自社株)指定買取人が買い取るAさんは現金化して抜けられる
「あらかじめ」セットで請求しておくのがポイントです。

あらかじめ買取請求をしていた場合、Aさんの株式は、会社または指定買取人が買い取ることになります。Aさんは無事に株を現金化して抜け出せます。会社に究極の二択を突きつける形です。

指定買取人:会社のお金を減らさずに、信頼できる人を迎える

会社が買い取るのは、いわゆる自社株です。では指定買取人とは何でしょうか。会社が買い取りたくても、手元に十分な現金がない場合があります。中小企業では、常にキャッシュが潤沢とは限りません。かといって、現金がないからBさんの介入を許すしかないのでは、せっかくの要塞が意味を失います。

現金がなければ、結局Bさんの介入を許すしかないんですか。

いえ、そんなときは、会社のお金は出せないけれど、代わりに社長個人や、信頼できる別の役員に買い取ってもらうよう指名できます。それが指定買取人です。

会社のお金を1円も減らさずに、見ず知らずのBさんの参入を完全にブロックし、さらに信頼できる人物を新たな株主として迎え入れることができる。動画は、これが指定買取人の本当の存在意義だと述べ、防波堤の穴を自軍の最も信頼できる兵士で埋めるようなもの、と表現します。会社にとってもAさんにとっても、完璧な落としどころです。

(補足:動画にない話として、あらかじめ買取請求があった場合に不承認とすると、会社は対象株式を買い取らなければなりません(140条1項)。会社が買い取るには株主総会の特別決議が必要で、請求した株主は議決権を行使できません(同条2項・3項、309条2項1号)。この買取りには、分配可能額の範囲内という財源規制もあります(461条1項1号)。会社の代わりに指定買取人を指定すれば、会社が買い取らずに済みます(同条4項)。指定は、取締役会設置会社では取締役会の決議で、それ以外では株主総会の特別決議で行います(同条5項。定款に別段の定めがあればそれによる)。「会社の現金がないと買い取れない」という動画の説明は、この財源の問題を背景にしたものと考えられます。)

あなたが非公開会社の経営者だったら

動画は最後に、考えてみてほしい場面を出します。あなたが非公開会社の経営者で、Aさんから見ず知らずのBさんへの譲渡承認の請求が来ました。当然、否決したい。ところがAさんからは、「それなら会社が買い取ってくれ」とあらかじめ買取請求も出されています。しかも会社には、株を買い取る十分な現金がありません。2週間のタイムリミットは刻一刻と迫っています。

聞き手は、指定買取人を誰にするか、という実務的な判断が迫られる、と応じます。誰にお願いすれば会社を守れるのか。暗記ではなく、このひりつくようなリアリティを頭の片隅に置きながら学習してほしい、そうすれば定款の事前の整備がいかに重要かが分かるはずだ、というのが動画の結びでした。

まとめ

動画の最後の振り返りにそって、全体を一本の流れとして整理します。

① 定款で譲渡制限② 会社へ承認請求③ 総会・取締役会で決定④ 2週間以内に通知⑤ 否決なら買取り
5つの段階を、誰が何のために動くかで追います。

ここだけは押さえる(動画の振り返りより)

  • 全部の株式が譲渡制限株式の会社が非公開会社。制限は定款に書く。
  • AさんからBさんへの譲渡は、動画の説明ではA単独またはAとBの共同で会社に承認請求。決議は原則、株主総会。取締役会設置会社なら取締役会。ただし定款で株主総会に戻すこともできる。
  • 否決の場合、会社は請求の日から2週間以内に通知しないと、譲渡が成立してしまう。
  • あらかじめ買取請求をしていれば、会社か指定買取人が買い取る。していなければ、引き続きAさんが株主。
  • (補足)請求者の整理、承認機関の「別段の定め」、2週間は「みなし承認」という形で条文に出てくる点は、参考書の条文で確認する。
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