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中小企業診断士 1次試験

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IS-LM分析

経済学・経済政策 第40回

経済学・経済政策・マクロ経済学 02014分14秒2026年3月24日公開

動画は、巨大なシーソーの片側に財、もう片側に貨幣が載っている、という想像から始まります。このページでは動画の流れにそって、IS曲線とLM曲線、財政政策・金融政策によるシフト、曲線の傾きと政策の効き目、クラウディングアウト、ビルトイン・スタビライザーをまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。

巨大なシーソーで、経済のバランスを見る

動画は、こんなイメージから始まります。巨大なシーソーの片側には、私たちが日々売り買いしているモノやサービス、つまり財が載っています。もう片側には、世の中をぐるぐる巡っているお金、つまり貨幣が載っています。この2つがどうやって釣り合いを見つけているのか。それを読み解く道具がIS-LM分析です。

動画の狙いは、アルファベットだらけの式を暗記することではありません。式の裏側にある「政府や中央銀行は、経済をどうコントロールしようとしているのか」というストーリーをつかむことです。丸暗記に頼らない理解は、試験でも強い武器になる、と動画は話しています。

IS曲線とLM曲線、そして均衡点

グラフは、横軸に国民所得Y、縦軸に利子率iをとります。ここに2本の線を引きます。

  • IS曲線:財市場の需要と供給が一致するような、国民所得Yと利子率iの組み合わせを描いた線。右下がり。
  • LM曲線:貨幣市場で、世の中に出回るお金の量と、人々が手元に持っておきたいお金の需要が一致するような組み合わせを描いた線。右上がり。
国民所得Y利子率iISLM均衡点Y*i*IS:財市場の均衡LM:貨幣市場の均衡
右下がりのISと右上がりのLMが交わる点で、2つの市場が同時に均衡します。

2本の線が大きなバツ印を描くように交わります。この交点が、財市場と貨幣市場が同時に均衡する点です。聞き手は「同時に、というのがミソですね」と受けます。このときの国民所得をY*(ワイスター)、利子率をi*(アイスター)と呼びます。ここで初めて、経済全体が落ち着く場所が決まります。

(補足:動画はLM曲線を「お金の量と需要の一致」と説明しています。教科書では、物価水準Pで割った実質的なお金の量M/Pと、貨幣需要が一致する条件として式に書くのが一般的です。動画の後半でPが出てくるのは、このためです。)

数式はサウンドボードのスライダー

テキストを開くと、小文字や大文字が入り乱れた長い式やマイナス記号が並んでいます。ここで動画は、読者を代弁する形で「あれを見るとテキストを閉じたくなる」という本音を出します。その答えがこちらです。

あの式、丸暗記しないとダメですか?

一言一句の丸暗記は必要ありません。式は、経済のエンジンルームを開けて、中の構造を見せているようなものです。

講師は式を「エンジンルームを開けて中の構造を見せているようなもの」と言い、聞き手がスタジオのサウンドボード(音響ミキサー)にたとえて、式の文字はつまみやスライダーだと言い換えます。限界消費性向のc、投資の利子感応度のb(動画は「投資の利子率弾力性」と呼びます)、マネーサプライのMなど。つまみを動かすと、グラフの傾きが変わったり、切片(グラフのスタート地点)が動いたりします。IS-LM分析では、「式の中の数が変わったとき、曲線の傾きや切片がどう変わるか」を見るのだ、と動画は整理します。

財政政策と金融政策で、どちらの線が動く?

では、つまみを動かしてみます。まず、政府が景気をよくしようと新しい公共事業に予算を注ぎ込んだとします。政府支出Gを増やす拡張的な財政政策です。式を見るとGが大きくなればIS曲線の切片が大きくなり、グラフ全体が右にシフトします。右下がりの線が右に動くので、交点は右上へ。国民所得Yは増え、利子率iも上がります。

次に、中央銀行がマネーサプライMを増やす拡張的な金融政策です。今度はLM曲線のスライダーが動きます。Mが大きくなると式のマイナスの部分が大きくなり、切片が小さくなって、線は右(下向き)にシフトします。交点は右下へ。国民所得Yは増え、利子率iは下がります。

拡張的な財政政策YiISLMISが右へ拡張的な金融政策YiISLMLMが右へ
どちらも国民所得は増えますが、利子率は財政で上がり、金融で下がります。

動画は、ここで大事な気づきを示しています。財政政策も金融政策も、国民所得を増やす方向には働きますが、利子率の動きが逆になります。政策によって利子率が上がるか下がるかが、この分析の鍵だ、というわけです。

動画の中で、テキストの整理として挙がっていたシフトの条件を表にまとめます。

動きこうなると理由・備考
ISが右へGの増加、Tの減少、独立消費C0・独立投資I0の増加動画ではcの減少も挙げる(下の補足)
LMが右へMの増加拡張的な金融政策
LMが左へMの減少、物価水準Pの上昇緊縮的な金融政策など。動画はhの増加も挙げる(上の補足)

(補足:動画は、限界消費性向cが小さくなったときも、IS曲線が右にシフトするとしています。これは切片だけに注目した整理です。cが変わると傾きも変わるので、図で見ると少しややこしくなります。仮の設例(C0=20、T=10、I0=30、G=20、b=5)でISの式を作ると、利子率はc=0.8のとき、Y=0で12.4、Y=100で8.4。c=0.7では、Y=0で12.6、Y=100で6.6です。切片は少し上がりますが、Yが大きいところでは線が下に来ます。LM曲線のhも同じです。hが大きいと、式の切片は大きくなります(動画の「左シフト」はこの見方)。しかしM/Pを一定にして同じ利子率で比べると、貨幣需要が利子率に反応しやすいぶん、均衡する所得は大きくなり、傾きはなだらかになります。たとえばk=0.5、M/P=100のとき、利子率4%で均衡する所得は、h=10なら280、h=20なら360です。切片だけを見る整理か、傾きの変化まで含める整理かは資料により異なります。試験では、テキストの表の整理に従うのが安全です。)

線の傾きが、政策の効き目を変える

ここで動画は、さらにサウンドボードの感度の話に進みます。IS曲線やLM曲線の傾きが、政策の効果を大きく変えます。

なだらかな線なだらかになる条件大きく効く政策
IS曲線b(投資の利子感応度)やc(限界消費性向)が大きい金融政策
LM曲線貨幣需要の所得に対する係数kが小さい、利子感応度hが大きい(動画はどちらも弾力性と呼ぶ)財政政策

理由は、動画の説明が分かりやすいです。IS曲線がなだらかということは、金利の変化に敏感に反応する状態です。少し金利が下がっただけで投資が一気に増えます。だから、LM曲線を右にシフトさせて金利を下げると、国民所得が大きく増えます。逆に、LM曲線がなだらかなときは、IS曲線を右に動かしても利子率があまり上がりません。投資が邪魔されずに、国民所得がスムーズに伸びます。聞き手は、経済の体質によって財政政策という薬が効くか金融政策という薬が効くかが変わる、と言い換え、講師も「そういうことです」と応じます。

(補足:数字で確かめておきます。IS:Y=C0+c(Y−T)+I0−b・i+G、LM:M/P=kY−h・i と置き、C0=20、c=0.8、T=10、I0=30、G=20、k=0.5、M/P=100 とします。bの実験ではh=10、hの実験ではb=5 とします。bを10にしたなだらかなISで、Mを100から120に増やすと、Yは231.4から260.0へ、約28.6増えます。bを2.5にした急なISでは、267.7から283.1へ、約15.4です。LMについては、h=40のなだらかな場合、Gを20から30に増やすとYは283.8から321.9へ約38.1増え、h=5の急な場合は231.4から245.7へ約14.3です。いずれも、動画の説明と同じ向きになりました。)

クラウディングアウト:政府が民間を押し出す

財政政策には、先ほどの「利子率が上がる」という副作用があります。これがクラウディングアウトという現象を引き起こします。直訳すると「押し出す」という意味です。

順に見ます。政府が、今の国民所得Y*から、目標のもっと高いY1まで経済を成長させようと財政政策を行い、IS曲線を右にシフトさせます。ところが、利子率が当初のi*から新しいi1に上昇します。金利が上がると、借り入れの利息が高くなるので、民間企業は新しい投資を控えます。つまり投資が減ります。その結果、国民所得は目標のY1には届かず、途中のY2までしか増えません。このように、利子率の上昇によって政府支出の効果が小さくなることを、クラウディングアウトといいます。

国民所得Y利子率iIS'ISLMY*Y2Y1i*i1目標のY1に届かず、Y2で止まる
利子率が上がって民間投資が減るぶん、目標のY1には届きません。

聞き手のたとえは、町おこしです。政府が予算で巨大なイベント会場を作ります。人が溢れると期待したのに、人が来すぎて周辺の道路が大渋滞。その渋滞を嫌がって、地元の常連客がお店に行かなくなります。民間の需要が減って、町全体で見ると、期待したほど売上は伸びなかった、という話です。

動画は、このクラウディングアウトの影響はLM曲線の傾きが急なほど大きいと説明します。国民所得が1単位増えたときの金利上昇が大きいので、少し景気が上向いただけで金利の大渋滞が起き、民間投資がすぐに冷え込んでしまうからです。

(補足:仮の設例で数えてみます。上の式と同じ値で、h=10、b=5とします。政府支出を10増やしたとき、利子率が動かないと仮定した単純な乗数効果では、10÷(1−0.8)=50だけ国民所得が増えるはずです。一方、IS-LMで均衡を解くと、Yは248.9から271.1へ、増加は約22.2にとどまります。利子率は2.44から3.56に上がります。この差が、クラウディングアウトで失われた分に当たります。数値はあくまで仮の例です。)

ビルトイン・スタビライザー:自動で景気を安定させる

手動で舵取りをするのは、難易度が高すぎます。そこで動画が紹介するのが、いちいち政府が介入しなくても、景気の変動を自動的に抑える機能、ビルトイン・スタビライザーです。「あらかじめ組み込まれた安定化装置」という意味で、代表例は累進課税と失業保険(雇用保険)だと動画は話します。

  • 好景気のとき:所得が増えると、累進課税によって税が自動的に高くなります。民間から政府へ所得が移り、経済の過熱を抑えます。
  • 不況のとき:失業者が増えますが、失業保険(雇用保険)によって政府から民間へ所得が移り、経済の落ち込みを下支えします。
好景気所得が増える→累進課税で税が増える民間から政府へ所得が移る不況失業者が増える→雇用保険の手当が出る政府から民間へ所得が移る景気の過熱を抑える(冷房)景気の落ち込みを支える(暖房)
誰も操作しなくても、制度が自動で温度調節をしてくれます。

聞き手は、エアコンのサーモスタットにたとえます。部屋が熱くなりすぎたら自動で冷気を出し、寒くなったら暖気を出す。誰もリモコンを操作しなくても、組み込まれたシステムが極端な温度変化を防いでくれます。動画は、現実の経済は、この自動安定化機能と、政府や中央銀行による裁量的な政策の両輪で支えられている、とまとめています。

(補足:動画の「失業保険」は、現在の日本の制度では雇用保険にあたります。失業した人に出る「失業手当」は、雇用保険法10条の求職者給付のうちの基本手当です。「失業保険」は、雇用保険法が失業保険法に代わる前の呼び名で、今も一般に使われています。)

最後の思考実験:利子率がこれ以上下がらないとき

動画の最後は、リスナーへの問いかけです。ビルトイン・スタビライザーが自動のエアコン、IS-LM分析が政府のマニュアル操作だとします。もし縦軸の利子率が、これ以上下がらない限界のところまで来たら、どうなるでしょうか。どれだけお金を増やしても金利が下がらない極限状態で、経済のエアコンやマニュアル操作は、今まで通り機能するのか。動画は答えを出さず、「テキストの数式を眺めながら想像してみてください」と締めています。

(補足:動画は名前を出していませんが、これは一般に流動性のわなと呼ばれる状況に当たります。LM曲線が水平になり、お金を増やしても利子率が下がらず、金融政策の効果が弱まる状態だと説明されるのが一般的です。)

まとめ

この動画の流れ

  • IS曲線は財市場、LM曲線は貨幣市場の均衡を表す。2本の交点で、2つの市場が同時に均衡する。
  • 式のc、b、M、hなどは「つまみ」。変えるとグラフの傾きや切片が動く。
  • 動画の整理では、財政拡張でISが右へ動き、Yも利子率iも増える。金融緩和でLMが右へ動き、Yは増え、iは下がる。
  • 動画の整理では、ISがなだらかなら金融政策、LMがなだらかなら財政政策が大きく効く。
  • 財政拡張で利子率が上がり、民間投資が減って効果が小さくなることを、クラウディングアウトという。動画ではLMが急なほど影響が大きいとされる。
  • 累進課税や失業保険(雇用保険)は、景気を自動で安定させるビルトイン・スタビライザー。

テキストの表(動画では「13の7」)を見ながら、シフトの方向と傾きの効果を、動画のたとえとあわせて思い出してみてください。数式を丸暗記するより、「どのつまみを動かすと、どの線がどちらに動くか」を理屈で言えるようになるのが、動画の狙いです。

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