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中小企業診断士 1次試験

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企業経営理論から中小企業政策まで、1次試験の論点を科目別の講義動画にまとめています。過去問の解説も1問ずつそろえています。

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外部不経済

経済学・経済政策 第18回

経済学・経済政策・ミクロ経済学 01817分30秒2026年3月20日公開

「企業が空気を汚染して製品を作っているのに、その汚染のコストが企業の決算書には一切乗らない。これってよく考えるとすごく不思議な状況だと思いませんか」。動画はこんな問いかけから始まります。このページでは動画の流れにそって、外部不経済、私的限界費用と社会的限界費用、死荷重、ピグー税・補助金・排出量取引・コースの定理の4つの対策をまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。

企業が汚したコストは、決算書に載らない?

「企業が空気を汚染して製品を作っているのに、その汚染のコストが企業の決算書には一切乗らない。これってよく考えるとすごく不思議な状況だと思いませんか」。動画はこの問いかけから始まります。今回のミッションは、なぜ市場は時に失敗し、それをどう解決するのかを耳だけで理解することです。

動画の説明を整理すると、こうなります。ふつう市場や取引というと、買う人(需要者)と売る人(供給者)の当事者同士の世界を想像します。ところが現実には、その当事者以外の第三者にまで影響が及ぶことがよくあります。これが外部効果です。

外部効果=取引の当事者以外への影響外部経済第三者にプラス例:技術革新が広まり、社会の生産性が上がる外部不経済第三者にマイナス例:公害、地球温暖化
今回の主役は、右側の外部不経済です。

外部効果には2つの向きがあります。ひとつは第三者にプラスの便益を与える外部経済で、動画の例は技術革新です。ある企業が画期的なテクノロジーを開発し、最初は自社の利益のためだったものが、広まることで社会全体の生産性を上げ、生活を便利にします。もうひとつが、第三者にマイナスの損害を与える外部不経済で、代表例は公害や地球温暖化です。動画では聞き手が「ここが今日の一番の山場になりそうですね」と受けて、ここをくわしく掘り下げていきます。

私的限界費用と社会的限界費用

ある工場が、製品を作る過程で有害な煙を出しているとします。本来なら、煙が周辺の環境や住民に与える悪影響、つまり外部費用も、製品を作る正当なコストとして工場が負担すべきです。ところが市場を放置すると、供給者はその費用を自腹で払わず、社会に押し付けてしまいます。ここで動画は、2つの概念を押さえるよう言います。

  • 私的限界費用(PMC):企業が自社の中だけで計算しているコスト。材料費や人件費などの内訳です。
  • 社会的限界費用(SMC):工場が社会に押し付けている迷惑の分まで含めた、社会全体が負担している本当のコスト。
  • 限界外部費用(t):その差額、つまり社会に押し付けた迷惑の量。動画では小文字のtで表されるとしています。

つまり、SMC=PMC+tです。工場は自社のレシートだけを見てビジネスをしているけれど、社会の側には隠された請求書が回ってきている、という状態です。当然、SMCのほうがPMCより金額は大きくなります。

動画のたとえ

工場は「自分のレシート」だけを見て生産量を決めます。社会には、見えない請求書(t)が回っています。企業のコストにtを載せると、社会の本当のコストになります。

規制がないと、どうなる? 作りすぎと死荷重

誰もストップをかけず、何の規制もしないと何が起きるのでしょうか。グラフを耳でイメージしてみましょう、と動画は進みます。工場は利益を最大にしたいので、自分たちだけのコストであるPMCの線と、消費者の「買いたい気持ち」を表す需要曲線が交わる点で生産量を決めます。この生産量をQPとします。

ところが社会にとって一番望ましい最適な生産量は、本当のコストであるSMCの線と需要曲線が交わる点で決まるべきです。これをQSとします。SMCはPMCより上にあるので、QSよりもQPのほうが大きくなります。動画の結論は、規制がないと外部不経済を発生させる製品は必ず作りすぎになる(これは標準的な完全競争の図での話で、独占市場など前提が違うと、作りすぎにならない場合もあります)、迷惑をかけているものほど市場にあふれるという皮肉な結果になる、というものです。

価格数量QSQP需要PMCSMC死荷重
企業はQPまで作りますが、社会にとってはQSが最適です。三角形が死荷重です(数値は説明用)。

この作りすぎによるダメージを、経済学では死荷重(デッドウェイトロス)、あるいは厚生上の損失と呼びます。動画では、教科書や参考書の図で濃いピンクの三角形として描かれている部分だと確認します。聞き手は、ふだんは図形として丸暗記しがちだけれど、あれは社会が抱えているダメージの総量を表していたのだと受け止め、講師も「そうなんです」と応じます。この死荷重があるということは、市場に任せているだけでは社会的に望ましい状態を実現できない、つまり市場の失敗だというわけです。

(補足:動画の音声は、死荷重の面積の説明の言い回しが崩れていて、聞き取れない部分があります。ここでは図のとおり、QSからQPの間で、SMCと需要曲線に挟まれた三角形として整理しました。図の色づかいは資料によって異なります。動画は、外部費用の総額が薄いグレーの平行四辺形で表されることもあると触れています。)

(補足:数値例で確かめます。需要を P=100−Q、PMCを P=10+Q、t=20として SMC=30+Q とします。市場に任せると 100−Q=10+Q で QP=45、価格は55です。社会的に最適なのは 100−Q=30+Q で QS=35、価格は65です。QP=45のとき、SMCは75、需要曲線は55で、差は20です。死荷重は 10×20÷2=100 になります。なお、動画は外部不経済の場合を扱っています。外部経済の場合は逆に、作られる量が社会的に望ましい量より少なくなるとされます。)

市場の失敗を直す4つのアプローチ

ここからが解決編です。暴走した生産量QPを、最適なQSに戻す方法として、動画は大きく4つのアプローチを紹介します(資料によって、整理の仕方や並べる手段は異なります)。

生産量を、行きすぎたQPから最適なQSへ戻す① ピグー税企業にtを課税(環境税など)② 補助金減産1単位ごとにtを支給③ 排出量取引排出に価格をつけ市場で売買する④ コースの定理当事者どうしの交渉で解決
動画が整理した4つのアプローチです。

対策1:ピグー税

ひとつ目はピグー税です。非常に直接的で分かりやすいアプローチで、代表例はガソリン税などの環境税だと動画は言います(補足:ガソリン税は、もともと道路の財源を目的とした税で、環境の外部費用に見合う額に設定された税ではありません。ピグー税の考え方に近い例として説明される、という位置づけです)。仕組みはシンプルで、企業が負担していない限界外部費用tと、まったく同じ額の税金を企業に課します。社会に押し付けていた迷惑の分を、税として強制的に払わせるわけです。

すると企業が負担するコストのPMCは、税tの分だけ強制的に引き上げられ、PMC+t=SMCとなります。企業のコスト感覚が社会のコスト感覚と一致するわけです。コストが上がれば企業は生産を控えるので、生産量は自然と最適なQSまで減り、死荷重の発生を防げます。

(補足:数値例では、t=20の税を課すと、企業の費用は 10+Q+20=30+Q となり、SMCと一致します。生産量は35、税収は 20×35=700 です。また、限界外部費用が生産量によって変わる場合、最適な税額は、社会的に最適な生産量QSのときの限界外部費用に等しい額とされます。動画は、tが一定の場合で説明しています。)

対策2:補助金は、なぜ効くのか

2つ目の対策に、動画の聞き手は自分の目を疑ったと言います。「補助金」と書いてあるからです。公害を出して社会に迷惑をかけている工場に、ペナルティどころかお金をあげるのか、それは解決策として間違っていないか、という疑問です。

公害を出している工場に、ペナルティを与えるどころかお金をあげるんですか? 解決策として完全に間違っていませんか?

直感的には理不尽に思えるかもしれません。しかし、ここが経済学の美しく、冷徹なメカニズムなんです。

補助金のルールを正確に言うと、企業が生産量を1単位減らすごとに、限界外部費用tの分の補助金を与えるというものです。工場の経営者の立場で考えてみます。ここで生産を増やすと、もらえるはずだった補助金がもらえなくなります。これを機会損失(機会費用)と呼びます。企業からすれば、補助金をあきらめてまで生産するのですから、実質的にコストがtだけ余計にかかっているのと同じです。

ピグー税1個作るごとにtを納めるコストがt増える補助金1個減らすごとにtをもらえる増産するともらい損ね(機会費用t)コストがt増えたのと同じPMC+t=SMC→ 生産量はQSに落ち着く
アプローチは逆でも、企業が感じるコストの上がり方は同じです。

税金として直接お金を奪うのも、もらえるはずのお金をちらつかせてあきらめさせるのも、企業のバランスシート上では「コストがt上がった」という同じ結果になります。補助金の形をとっても私的限界費用は実質的にtだけ上昇し、ピグー税のときと同じように生産量はQSに落ち着きます。聞き手は、人間のインセンティブをうまくハックしている感覚だと受け止めます。

(補足:生産量は同じでも、お金の流れは違います。数値例では、税なら政府に700の税収が入ります。補助金なら、生産を45から35に10単位減らした分として、政府が 20×10=200 を支払う形になります。動画は生産量が同じになる点を説明しています。)

対策3:排出量取引

3つ目は排出権取引です。CO2の排出権取引が典型で、税や補助金とは別の角度からのアプローチだと動画は言います。本来なら市場の調整メカニズムに乗らない外部不経済に、強引に価格のタグをつける手法です。空気の汚れや地球全体の温度のように、ふつうはお店で売買できないものに価格という概念を持ち込み、市場のメカニズムの中に載せてしまいます。すると企業の間で排出枠を売買する新しい市場が生まれ、結果として社会全体の排出量が調整されていく、という説明です。市場が機能していないなら、機能するような新しい市場のルールを作ってしまえ、という発想です。

(補足:排出枠の売買は、全体の排出量の上限を先に決め、その枠を売り買いさせる方式が一般的だとされています。価格を決める税と対比して、量を決める方式と説明されることがあります。資料により「排出量取引」「排出権取引」と表記が分かれます。)

対策4:コースの定理

最後の4つ目は、動画が最後に取り上げるコースの定理です。外部効果の問題に対して、当事者同士の交渉によって最適な資源配分が実現する、という定理だと動画は説明します。しかも、加害者と被害者のどちらに権利を与えても行きつく先は同じになる、という結論を持っています。

動画の例は、加害者が汚水を海に流す工場、被害者がその海で漁をする漁業の組合です。

ケース1:被害者に権利がある場合。組合は、工場に汚水の排出量に応じた補償金を請求できます。工場は排出するほど補償金を払う義務が生じるため、限界費用が上昇します。動画では、聞き手がこれはピグー税と同じ原理だと言い換え、講師も「お見事です」と応じます。コストが上がるから工場は汚水を減らします。

ケース2:加害者に権利がある場合。工場には汚水を流す権利があるので、一見すると海は死んでしまいそうです。ところが、ここで交渉が威力を発揮します。組合は工場に「汚水の排出を抑えてください。減産してくれた分だけ補償金を払います」とお願いに行きます。

被害者の側がお金を払うんですか? なんだか理不尽な気がしますが。

感情論はいったん脇に置いて、工場の視点で計算してみましょう。汚水を流し続ければ、もらえるはずの補償金を自分から蹴ることになりますよね。

権利があっても汚水を流し続ければ、もらえるはずの補償金を失います。つまり補償金が機会費用となって、企業のコストを引き上げます。先ほどの補助金とまったく同じメカニズムです。動画は、工場に権利があっても組合に権利があっても、交渉さえできれば工場はコスト(機会費用を含むコスト)に直面して、自発的に汚水を減らす、と結びます。

被害者に権利工場は排出量に応じて補償金を払う→ 限界費用が上がる加害者に権利組合が減産の見返りに補償金を払うと申し出る→ もらい損ねが機会費用になる交渉ができればどちらでも生産量はQS
動画の結論です。前提条件は本文の補足を見てください。

(補足:先ほどの数値例で確かめます。工場が35単位を超えて作る追加分が生む余剰は、需要曲線とPMCの差で 90−2Q です。Q=36では18です。一方、組合の被害は1単位20です。18<20なので、組合が補償金を払ってでも減らしてもらうほうが、両者合わせて得になります。この関係はQ=35で、余剰20=被害20になるまで続きます。)

(補足:動画は「どちらに権利を置いても同じ」と言いますが、同じになるのは効率的な生産量(資源配分)のことです。権利をどちらに置くかで、誰がお金を払い誰が受け取るかは変わります。また、この結論には前提があるとされます。資料によって挙げ方は異なりますが、取引費用がゼロ(実際には十分小さい)こと、権利(所有権)が明確に決まっていること、当事者が特定できて交渉できること、などです。動画も最後に、その限界に触れています。)

コースの定理の限界と、思考実験

動画の最後は、リスナーへの思考実験です。コースの定理は当事者同士の交渉で成立する、という話でした。では、地球温暖化のように被害者が現在の人類だけでなく未来の全人類に及ぶ場合、誰が被害者の代表として、加害者の企業と交渉のテーブルにつくのでしょうか。未来の人間は、今の交渉のテーブルには座れません。

当事者が多すぎたり、特定できなかったりする場合、コースの定理が前提とする交渉そのものが物理的に不可能になります。だからこそ、こうした巨大な外部不経済では、政府が介入するピグー税や、システムとして組み込む排出量取引などの他のアプローチが、現実的で重要になってくる、と動画は言います。理論の限界を知ることで、別の理論の存在意義が鮮明になる、と聞き手が受けて、動画は締めくくられます。

動画は、診断士試験では用語の意味だけが問われることもあるが、PMCがSMCにどう近づくのか、なぜ機会費用がコストとして働くのか、という理屈の根底を理解しておくことが応用問題に対処する武器になる、とも言っています。

まとめ

この回のまとめ

  • 外部効果は、取引の当事者以外に及ぶ影響。プラスが外部経済、マイナスが外部不経済。
  • SMC=PMC+t。企業はPMCだけで生産量QPを決めるので、外部不経済のもとでは最適なQSより作りすぎになる。
  • 作りすぎによる社会のダメージが死荷重。市場に任せたままでは解決しない、市場の失敗。
  • 動画の4つの対策は、ピグー税、補助金、排出量取引、コースの定理。
  • 税も補助金も、企業が感じるコストをtだけ引き上げる点は同じ。補助金では、もらい損ねが機会費用になる。
  • コースの定理は、交渉ができる前提のもとで、どちらに権利があっても生産量はQSになる。当事者が多い・特定できない場合は交渉が難しく、他の手段が必要になる。

どの対策も、企業に「本当のコスト」を認識させるという一点に向かっています。ニュースでピグー税や排出量取引の話題が出たら、PMCとSMCの動き、そして誰がコストを負担しているのかを思い出してみてください。

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