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中小企業診断士 1次試験

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パレート最適

経済学・経済政策 第16回

経済学・経済政策・ミクロ経済学 0169分25秒2026年3月15日公開

中小企業診断士の一次試験、経済学の科目で必ずと言っていいほど直面する重要な概念、パレート最適について。動画はこんなあいさつと予告から始まります。このページでは動画の流れにそって、パレート最適の定義と、AさんとBさんのピザの思考実験、公平性は関係しないという引っかけポイントをまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。

パレート最適は「呪文」に見えて、実は単純

動画は、電車の中や作業中に耳を傾けているリスナーへのあいさつから始まります。今日の題材は、中小企業診断士の一次試験、経済学の科目で必ずと言っていいほど出てくる重要な概念、パレート最適です。机に向かって暗記する必要はなく、会話を通して経済学特有の論理を頭に染み込ませていこう、というスタイルです。

まず定義です。動画で読み上げられたのは、次の一文でした。

他の誰かの効用を低下させることなしには、誰の効用も増やすことができない状態

試験問題でも、こうした少し硬い、呪文のような表現で出題されます。本番の緊張の中で読むと、「あれ、どっちだっけ」と混乱する人が多いそうです。動画は、その混乱の大きな原因の一つが「効用」という言葉の扱いにあると言い、手触りのある言葉に置き換えることを勧めます。シンプルに、取り分や満足度と読み替えるのです。

定義(試験の言い方)他の誰かの効用を下げずには誰の効用も増やせない状態読み替え(動画の言い方)他の誰かの取り分を減らさずには自分の取り分を増やせない状態
「効用」を「取り分」に置き換えると、定義がぐっと身近になります。

こう置き換えると、「誰かの取り分を削らないと自分の取り分が増やせない、ギリギリのバランスで釣り合っている状態」というイメージが浮かびます。動画では、聞き手が、誰も損をせずに誰かが得をする、そんな都合のよい余地がもう存在しない状況ですね、と言い換え、講師が「まさに」と受けます。

(補足:効用は、経済学で満足の度合いを表す言葉です。「取り分」への読み替えは、ピザのように、量が多いほど満足も増えると考えられる場面での言い換えです。厳密には、ピザの量と満足度は別のものです。)

思考実験:AさんとBさんで1枚のピザを分ける

この抽象的なルールを腹落ちさせるために、動画は具体例を出します。AさんとBさんの2人で、1枚のピザを分ける思考実験です。ピザの分け方を3つの状態に分け、それぞれがパレート最適かどうかを定義に照らして調べていきます。

状態1:余りがあるAさんBさん余り余りあり → パレート最適ではない状態2:ぴったり半分AさんBさん余りゼロ → パレート最適状態3:99対1の極端な分け方Aさん(99%)Bさん(1%)余りゼロ → パレート最適
ピザ1枚の設例では、見るのは余りがあるかどうかです。

状態1:余りがあれば、パレート最適ではない

最初のシナリオは、ピザにまだ手をつけていない余りがある状態です。もしBさんがもう少し食べたいと思って、自分の取り分(効用)を増やすには、どうすればよいでしょうか。

それはもうシンプルに、その余っているピザを取って食べればいいだけですよね。

そのとおりです。Aさんのお皿からピザを奪う必要は全くありません。Bさんは、Aさんの取り分を一切減らさずに、余っている部分から自分の取り分を増やせました。

つまり、誰の効用も下げずに誰かの効用を増やせる余地があります。だから状態1はパレート最適ではない、と動画は断言します。これが1つ目のチェックポイント、「余りがある場合はパレート最適ではない」です。

(補足:パレート最適でない状態から、誰の効用も下げずに誰かの効用を増やせる変化を、一般にパレート改善と呼びます。状態1でBさんが余りを食べるのが、パレート改善にあたります。パレート改善がもう残っていない状態が、パレート最適です。この言葉は動画には出てきません。)

状態2:ぴったり半分でも、パレート最適

次は、ピザがAさんとBさんでちょうど半分ずつに分かれていて、余りがゼロの状態です。ここからAさんが自分の取り分をさらに増やそうとすると、余りがない以上、Bさんのお皿から奪ってくるしかありません。つまりBさんの効用を低下させることになります。これは定義とぴったり重なります。他の誰かの効用を低下させることなしには、誰の効用も増やせない状態ですから、状態2はパレート最適です。

動画も、これ以上改善の余地がない、無駄がない状態だと言い、半分ずつでパレート最適になるのは感覚的にもしっくりくる、と進めます。ここまでは多くの人がすんなり理解できる部分です。

(補足:「最適」という名前から、いちばん望ましい分け方のように思えるかもしれません。動画も最後に、パレート最適は「無駄がないという意味で最適」で、公平性は担保されないと述べています。パレート最適は効率性の基準で、2人にとってちょうどよい分け方という意味ではありません。この区別が、次の状態3を理解するカギになります。)

状態3:99対1でもパレート最適

ここからが動画の「本番」です。Aさんがピザの99%を取って山盛りにし、Bさんは耳の切れ端の1%しか取っていない、あるいは0かもしれない。そんな極端な分け方を考えます(動画は「一方」「もう一方」と言います。ここではAさんが99%、Bさんが1%の場合として図にしました)。動画は、これが試験でもっとも引っかけられやすいポイントだと言います。

余りはなく、全部お皿に乗っています。動画は、この極端な状態3も経済学的にはパレート最適だと解説します。

ちょっと待ってください。99対1の分け方ですよ。これが最適なんですか?どう考えても不公平じゃないですか?

そこがまさに罠なんです。不公平でバランスがおかしいから最適ではない、と考えるのは自然な感覚です。でも定義に立ち返ってみてください。極端でも、余りがない以上、一方の取り分を増やすにはもう一方の取り分を奪うしかありません。

Bさんの効用を低下させることなしには、Aさんの効用を増やせない。定義にきっちり当てはまります。どんなに偏っていても、奪い合わないと自分を増やせないギリギリの状態であることに変わりはありません。動画は、ここで次のように強調します。

動画が強調するポイント:公平性は関係ない

  • 動画では、パレート最適かどうかの判断に、分け方の公平性は関係ないとされています。
  • 極端な分け方でも、余りがなく、他人の取り分を奪わないと自分の取り分を増やせなければ、パレート最適です。
  • 聞き手は「一部の人に集中していて不平等だからパレート最適ではない」という選択肢を例に挙げ、講師は、道徳観や公平性の感覚を揺さぶるのが出題者の常套手段だと注意しています。
ピザの余りは残っているか?ある→ 最適ではないない他人を減らさず増やせる?できない→ パレート最適分け方が公平かは判定に使わない
判断の材料は「余り」と「奪わずに増やせるか」。公平かどうかは出てきません。

この図の流れを、動画の言葉で言い直すとこうなります。まず、ピザに余りがあるかを見ます。余りがあれば、誰かが余りを取るだけで誰も損せずに得をできるので、その時点でパレート最適ではありません。余りがなければ、次に、他の人の取り分を奪わずに自分の取り分を増やせるかを見ます。増やせなければ、パレート最適です。このとき、分け方が半々か、99対1かは、判断にまったく関係しません。本番では、問題文に「不平等」「偏り」といった言葉が出てきても、定義に立ち返ってこの2段階だけで判断すればよい、というのが動画の伝えたいことです。ピザのイメージさえ頭にあれば、迷わずに答えられるはずです。

図で見ると:余りゼロの分け方はいくつもある

ピザの分け方を、Aさんの取り分とBさんの取り分の組み合わせとして図にしてみましょう。余りゼロの分け方は、右下がりの線の上にずらりと並びます。状態2も状態3も、この線の上の点です。状態1は線の内側にあり、上や右へ動けば、誰も損をせずに得をする人が出ます。

Aさんの取り分Bさんの取り分線の上=余りゼロ線の内側=余りあり状態1状態2状態3
余りゼロの線の上なら、どこでもパレート最適です。内側の点だけが「改善できる」状態です。

(補足:動画の判定は、「ピザは多いほど満足が増える」という前提に立っています。たとえばBさんがお腹いっぱいで、これ以上食べても満足が増えず、手放しても満足が減らないなら、BさんからAさんへ回すだけでAさんが得をします。この場合は、余りがなくてもパレート最適ではありません。また、動画はピザという1つの財だけを分けましたが、財が複数ある場面では、余りがなくても財を交換して双方が得をする余地が残ることがあります。その場合もパレート最適ではありません。動画の「余りがなく、奪わなければ増やせない」という判定は、ピザ1枚の設例での判断として受け取ってください。)

練習:別の設例で「余り」を探してみる

動画の考え方が身についたかを確かめるために、書き手が別の設例を作ってみました。クッキー12個を、AさんとBさんの2人で分けます。分け方は次の4通りです。動画の判断手順どおり、まず「余りがあるか」を見てください。

  • 6個と6個:12個すべて配り切っています。余りなし。どちらかを増やすには、もう一方から取るしかないので、パレート最適です。
  • 10個と2個:偏っていますが、余りなし。奪わないと増やせないので、パレート最適です。
  • 5個と5個:2個が余っています。余りの2個をどちらかが食べても、もう一方は減りません。パレート最適ではありません(たとえば7個と5個にできます)。
  • 12個と0個:極端ですが、余りなし。Bさんに1個渡せばAさんが減るので、パレート最適です。

見た目の公平さでは、6個と6個、5個と5個が目立ちますが、この設例では、判定を分けたのは「余りがあるか」だけでした。公平そうに見える5個と5個のほうが、パレート最適ではないのです。(検算:配り切る分け方は、Aさんが0個から12個までの13通りあり、そのどれもが、どちらかを増やすともう一方が減ります。余りのある5個と5個だけが、誰も損せずに改善できます。)

(補足:効率性と公平性は別の物差しです。パレート最適は効率性の基準で、誰にどれだけ配るかという公平性は、別に考えます。)

動画のまとめと、最後の問いかけ

動画の総まとめは、3点でした。まず、ピザに余りがある状態はパレート最適ではない。次に、半々でも極端な分け方でも、余りがなく、他人の取り分を奪わなければ自分の取り分を増やせない状態はパレート最適である。そして最後に、そこに公平性は関係ない。このピザのイメージを持っていれば、本番で迷うことはない、と動画は励まします。

動画は最後に、学習ステップへ進む前の問いかけを置きます。パレート最適は無駄がないという意味で経済学的には最適とされましたが、公平性は担保されていません。では、実際のビジネスや社会では、この無駄のなさと道徳的な公平性のどちらを優先すべき場面が多いでしょうか。動画は答えを示さず、試験の枠を超えて、あなた自身の考えを巡らせてみてほしい、と投げかけます。

(補足:パレート最適は、無駄のない状態を示す基準であり、「望ましい分け方」を決める基準ではありません。どの分け方を選ぶかは、公平性をどう考えるかという価値判断にかかわるため、資料により扱いが異なります。また、教科書では、一定の条件のもとで完全競争市場の均衡はパレート最適になるとされています(厚生経済学の第1基本定理)。第2基本定理もありますが、動画では扱われていません。)

まとめ

  • パレート最適は、他の誰かの効用を低下させることなしには、誰の効用も増やすことができない状態。動画は、効用を「取り分」「満足度」に読み替えることを勧めている。
  • ピザの設例では、余りがある状態1はパレート最適ではない。余りを食べれば、誰の取り分も減らさずにBさんの取り分を増やせるから。
  • ぴったり半分の状態2は、余りがなく、増やすには他人から奪うしかないのでパレート最適。
  • 99対1の極端な状態3も、余りがなく奪わないと増やせないので、パレート最適。
  • 動画では、パレート最適かどうかの判断に公平性は関係ないとされる。「不平等だから最適ではない」という選択肢は引っかけだと動画は注意している。
  • (補足)余りゼロの分け方は無数にあり、どれもパレート最適。ただし「多いほど満足が増える」ことなど、ピザ1枚の設例の前提がある。
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