クフウヤ聞き流しラボWebテキスト(無料)NEW
中小企業診断士 1次試験

7科目を、聞き流しで一周する。

企業経営理論から中小企業政策まで、1次試験の論点を科目別の講義動画にまとめています。過去問の解説も1問ずつそろえています。

科目別の講義動画過去問完全解説ファイナルペーパーメンバーシップ
診断士 聞き流しラボ

寡占市場の3つのモデル

経済学・経済政策 第14回

経済学・経済政策・ミクロ経済学 01416分16秒2026年3月14日公開

「経済学という科目は、どうしても無機質な暗記になりがち」。動画はこんな語りかけから始まり、寡占市場の定義と、企業の3つの代表的な行動モデルを整理していきます。このページでは動画の流れにそって、完全競争・独占との違い、クールノー、ベルトラン、シュタッケルベルグの3モデル、そして語呂合わせをまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。

寡占市場って、どんな市場?

動画は、移動中や合間の時間に勉強している人への呼びかけから始まります。経済学はどうしても無機質な暗記になりがちですが、実は、企業が現実のビジネスの裏側でどう戦略を練っているのかを読み解く、エキサイティングな思考ツールでもある。そう語ったうえで、今回のテーマが示されます。寡占市場の定義と、そこで企業がどう振る舞うかを示す3つの代表的な行動モデルです。

完全競争市場は、無数の企業が競争する市場。独占市場は、たった1社が支配する市場。でも現実には、無数のライバルがいるわけでも、完全な独り占めでもない状況が圧倒的に多い、と動画は言います。限られた少数のプレイヤーがお互いを牽制し合っている。それが寡占市場です。

動画の定義は、少数の供給者によって占められた市場。数えるほどしかプレイヤーがいない世界です。その特徴を、両極端にある2つの市場との比較で浮き彫りにしていきます。

完全競争無数の企業価格は受け入れるだけ寡占少数の企業価格支配力あり競合は無視できない独占たった1社競合なし自社の都合で決める企業の数が多い ←→ 少ない
寡占は、完全競争と独占のあいだにある市場です。

完全競争市場との違い:価格支配力がある

1つ目の比較は完全競争市場です。完全競争市場では、無数の企業が競争していて、市場全体で決まった価格をただ受け入れるしかありません。これに対して寡占市場の企業は、自分たちの意思で価格に何らかの影響を与える力、つまり価格支配力を持っています。

独占市場との違い:競合が存在する

では、好き勝手に値段を吊り上げられるのでしょうか。ここで動画には、そんな疑問が出てきます。

価格支配力があるということは、好き勝手に値段を吊り上げて、利益をコントロールできるということですか?

そこが独占市場との決定的な違いです。寡占市場は、少数ではあっても競合が存在します。ライバルがすぐ横にいるので、その存在を無視して価格や戦略を決めることはできません。

たった1社の独占企業なら、自分たちの都合だけで全部を決められます。寡占市場の企業は、価格支配力という武器を持っていても、それを無防備に振り回すわけにはいかない。常に競合がどう動くかを注視し、その動きを見ながら自分たちの行動を決める必要があります。聞き手はこれを、相手の出方をうかがいながら一手一手を決めていく、緊迫したゲームのような状況と言い換え、講師は競合の動きを見ながら行動を決定することが最重要キーワードだと受けます。

(補足:動画にない話です。このように、自社の最善の行動が相手の行動しだいで変わる状況を分析する道具として、ゲーム理論が使われます。今回の3つのモデルも、その考え方で整理されることが多いとされています。)

経済学では、この相手ありきのゲームで企業がどんな前提で行動するのかを、論理的なモデルとして整理しています。代表的なのが、クールノーモデル、ベルトランモデル、シュタッケルベルグモデルの3つです。動画は、前提条件の違いによって、企業の立ち回り方が明確に変わると予告します。

クールノーモデル:同質の財、相手の生産量を見て量を決める

第1のモデルはクールノーモデルです。動画の説明では、財の品質が同質の市場において、競合の生産量を前提にして、自社の生産量を決定するモデルです。

動画は、ここで「なぜ価格ではなく生産量を基準に戦うのか」を問いかけます。価格支配力はあるはずなのに、という疑問です。カギは「財の品質が同質」という前提でした。競合とまったく同じ品質で、区別のつかないものを提供している状態を想像してみてください。自社だけが少しでも高い価格をつければ、お客さんは全員、安いほうのライバルから買ってしまいます。高いほうを選ぶ理由が1つもないからです。

そこで動画は、財の品質が同質である以上、市場における価格は変えることができない、という考え方がここでは取られている、と説明します。価格というカードが使えない企業に残された手は、どれくらいの量を作るかだけです。相手がこれくらいの量を作って出してくるだろうと予測し、そのうえで自社はこれくらいの生産量にしておこう、と決める。品質が同質だからこそ、量の決定が唯一の戦略になる。これがクールノーモデルのロジックです。

(補足:動画の「価格は変えることができない」は簡略化した言い方です。クールノーモデルでは、各社が選ぶのは生産量で、価格は各社の生産量の合計と市場の需要から決まる、と説明されるのが一般的です。ここでの「変えられない」は、自社だけ高い価格をつけることができない、という意味にとらえると整理しやすくなります。)

数字で見てみよう(補足・自作の設例)

動画にない数値例です。2社が同じ財を売り、需要が「価格=100-総生産量」、1個あたりの費用(限界費用)が10、固定費はないとします。1社目の生産量をq1、2社目をq2とすると、1社目の利益は(90-q1-q2)×q1です。相手がq2を作ると予測したとき、これを最大にするのはq1=(90-q2)÷2になります(相手の生産量に対する自社の最適な生産量の式で、反応関数と呼ばれます)。2社目も同じ考え方なので、お互いの予測が当たる点を探すと、q1=q2=30です。総生産量は60、価格は100-60=40、利益は(40-10)×30=900で、2社とも同じになります。

ベルトランモデル:差別化された財、相手の価格を見て価格を決める

第2のモデルはベルトランモデルです。動画は、クールノーモデルとは見事に対比される関係にあると言います。財の品質が異質の市場において、競合の価格を前提にして、自社の価格を決定するモデルです。「同質から異質へ、量から価格へ」と、言葉が入れ替わっています。

前提は、財の品質が異質、つまり他社製品と明確に差別化されていること。商品に独自の価値や違いがあるので、クールノーモデルのときのような「価格を変えられない」という縛りがなくなります。競合より少し高くても、うちの製品はここが違うからとお客さんに納得してもらえる余地がある。だから市場における価格を変えることができます。

すると最適な行動は、相手の提供する財の価格に対応して、自社の財の価格を決めることになります。動画のたとえでは、「相手がこの価格で来るなら、うちはこの機能をつけてこの価格で勝負しよう」という具合です。価格の設定そのものが最も重要な戦略のカードになる。それがベルトランモデルです。

(補足:資料により異なる点があります。もともとのベルトランモデルは、同質の財で価格を競う場面を考えたものとされ、その場合は価格が限界費用まで下がる、と説明されることが多いようです。たとえば上の設例で、2社の限界費用がともに10の同質財を価格だけで競うと、価格は10、利益はゼロになる、という結果です(ベルトランのパラドックスと呼ばれます)。動画や試験向けの整理で言う「差別化された財の価格競争」は、財が差別化されている場合に広げた形です。動画の言い方で覚えるのが基本ですが、別の本で同質財と書かれていても、戸惑わないようにしてください。)

ここまでをまとめると、一口に寡占市場と言っても、自分たちの財がライバルと同質なのか、差別化された異質なのかという前提の違いだけで、企業が注視すべきポイントが量になるか価格になるか、戦い方がまったく変わる、というのが動画の整理です。

クールノーベルトランシュタッケルベルグ財が同質財が差別化リーダーとフォロワー生産量価格生産量クールな量ベルトの価格…フォロー
動画の整理を1枚にまとめた図です(語呂は動画のもの)。

シュタッケルベルグモデル:リーダーとフォロワー

第3のモデルはシュタッケルベルグモデルです。クールノーとベルトランが財が同質か異質かという性質に向き合っていたのに対して、これは市場にいる2社の間の影響力という構造そのものに焦点を当てます。企業はリーダーとフォロワーという2つの立場に分かれます。

  • リーダー:相手の生産量に影響を与えることができる存在。自分からの行動で、相手の動きをコントロール、あるいは限定させられる立場。
  • フォロワー:相手の生産量には影響を与えられない存在。リーダーが「うちはこれだけ作る」と生産量を決めて市場に影響を及ぼすのを待つしかなく、リーダーの決定に追従する形でしか行動を決められない。

聞き手は、最初の2つのモデルを「お互いが横並びで相手の出方をうかがっているような印象」と言い、講師は役割がはっきり違うと続けます。動画は、このリーダーとフォロワーの2社によって生産量が決定されるモデルだとまとめ、寡占市場では企業同士が常に対等な力関係にあるとは限らない、という現実を描いていると説明します。

(補足:動画では触れていませんが、一般には、リーダーが先に生産量を決め、フォロワーがそれを見てから自分の生産量を決める、という順番で説明されます。「影響を与えられる」とは、この先に決める立場のことだと考えると分かりやすいです。クールノーが「同時に決める」のに対し、シュタッケルベルグは「順番に決める」という違いもあります。)

(補足・自作の設例)需要は価格=100-総生産量、限界費用10として、確かめましょう。フォロワーは、リーダーの生産量q1を見て、自分の生産量をq2=(90-q1)÷2に決めます。リーダーはそれを織り込んで利益を最大にするので、q1=45になり、q2=22.5です。総生産量は67.5、価格は32.5。利益はリーダーが(32.5-10)×45=1012.5、フォロワーが(32.5-10)×22.5=506.25です。クールノーでは2社とも900でしたから、先に決められるリーダーが有利になっています。

リーダー先に生産量を決めるフォロワーその生産量を前提に決める設例:リーダー45、フォロワー22.5利益はリーダー1012.5、フォロワー506.25
リーダーが先、フォロワーが後。順番は補足の説明です。

数字で比べてみる(補足・自作の設例)

同じ需要・同じ費用で、市場の姿だけを変えるとどうなるでしょうか。動画にない比較ですが、寡占の位置づけが数字で見えてきます。

市場の姿総生産量価格
完全競争9010
シュタッケルベルグ67.532.5
クールノー6040
独占4555
価格(設例)完全競争10シュタッケルベルグ32.5クールノー40独占55
同じ需要・同じ費用でも、競争の姿で価格は変わります(自作の設例)。

この設例では、寡占の2つのモデルは、価格が完全競争より高く、独占より低くなりました。動画の言う「価格支配力はあるが、競合は無視できない」という立ち位置が、数字にも表れています。ただし、数値は私が置いた条件での結果で、どのモデルでも必ずこの順になる、という意味ではありません。

語呂合わせで3つのモデルを結びつける

3つのモデルを学んでも、試験の緊張した空気のなかで「価格を前提にするのはどっちだっけ」と混乱してしまうことがあります。そこで動画が紹介するのが、「ベルトの価格はクールな量で…フォロー」という語呂合わせです。(「フォロー」の前の言葉は、「と」の有無も含めて確定できませんでした。以下は、動画の分解の説明にそって書いています。)

  • ベルトの価格:ベルト=ベルトランモデル。ベルトランは価格を決めるモデル、と引き出せます。
  • クールな量:動画では、言葉遊びになっていると説明されます。クールノーモデルは量を決めるモデルです。
  • …フォロー:最後の「フォロー」で、シュタッケルベルグモデルがリーダーとフォロワーの2社によって決定されるモデルだと捉えます。
ベルト価格ベルトランクール量クールノー…フォローリーダーとフォロワーシュタッケルベルグ
動画の語呂合わせを、3つのモデルに結びつけた図です。

動画は、このフレーズを1つ引き出せば、ベルトランは価格、クールノーは量、シュタッケルベルグはリーダーとフォロワーというコアの情報が確定すると言います。そこから「なぜクールノーは量なのか。財が同質で価格が変えられないからだ」というように、先ほどのロジックを逆算して思い出せる。暗記フレーズを起点に、論理のネットワークを呼び覚ます、という使い方です。

まとめ

寡占市場の3つのモデル

動画では、次のように整理されていました。

  • 寡占市場は少数の供給者で占められ、企業は価格支配力を持つ。ただし競合がいるので、無視はできず、相手の動きを見て行動を決める。
  • クールノーモデル:財が同質で、市場の価格を変えられないという前提のもと、競合の生産量を前提に自社の生産量を決める。語呂は「クールな量」。
  • ベルトランモデル:財が差別化され、価格を変えられるという前提のもと、相手の価格に対応して自社の価格を決める。語呂は「ベルトの価格」。
  • シュタッケルベルグモデル:相手の生産量に影響を与えられるリーダーと、与えられないフォロワーの2社によって生産量が決まる。語呂は最後の「フォロー」。

補足として、クールノーの「価格は変えられない」は簡略化した言い方であること、ベルトランは資料によって同質財で説明されること、シュタッケルベルグはリーダーが先に決める順番の話であること、の3点を覚えておくと、別の教材で見ても戸惑いません。数値の設例は、私が置いた条件の計算です。

最後に、動画は問いを残して終わります。あなたの会社の製品は、競合と同質ですか、異質ですか。その前提に立つと、競合の生産量を注視すべきか、相手の価格に対応して価格を調整すべきか。あるいは、市場のリーダーとして影響を与えに行くのか、フォロワーとして立ち回るのか。身近なビジネスに当てはめると、無機質に見えた経済学のモデルが、生きた知恵に見えてくるはずです。

LISTEN

動画で聞く

NEXT

続けて読む