従業者証明書と宅建士証の違い|携帯させる義務・提示・従業者名簿を比較
「お店に来た営業の人が『うちの会社の者です』と名乗ったとき、それを何で確認しますか?」。動画は、こんな問いかけから始まります。名刺は自分で作れてしまうので、これだけでは決め手になりません。そこで宅建業者は、従業者に従業者証明書を携帯させます。このページでは動画の流れにそって、従業者証明書と宅建士証、従業者名簿の違いを表と図でまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。
3行でいうと
- 従業者証明書は、「この人はこの宅建業者の従業者です」と証明する書類です(宅建業法48条)。宅建業者は、従業者に携帯させなければ、その人を業務に従事させられません。違反すると50万円以下の罰金です。
- 持たせる相手は、社長(代表者)、非常勤の役員、パート・アルバイト、一時的な事務の補助者まで全員です。取引の関係者から請求があったら、従業者は提示しなければなりません(48条2項)。
- 従業者証明書は、宅建士証や従業者名簿とは別物で、代わりにはなりません。「従業者かどうか」を聞かれたら従業者証明書、「宅建士かどうか」を聞かれたら宅建士証を見せます。
従業者証明書はなぜ必要?お客さんが相手を確認するための制度
動画は、「お店に来た営業の人が『うちの会社の者です』と名乗ったとき、それを何で確認しますか?」という問いかけから始まります。名刺は自分で作れてしまうので、それだけでは本当にその会社の人かどうかまでは分かりません。不動産の取引でも、同じ問題が起こります。動画は、事務所に関するルールの最後のテーマとして、この従業者証明書の制度を取り上げています。
不動産の取引は、車を買うよりも大きな金額が動き、トラブルにもなりえます。そのとき、目の前の人が本当にその宅建業者の従業者なのかが分からないと、責任の所在もあいまいになります。そこで、宅建業者と従業者の関係を一般のお客さんにはっきり示すために、この制度があります。お客さんを守るための制度です。
宅建業法48条1項は、宅建業者は、国土交通省令の定めるところにより、従業者に、その従業者であることを証する証明書を携帯させなければ、その者を業務に従事させてはならない、と定めています。つまり証明書を持たせるのは会社の義務で、違反して罰則の対象になるのは宅建業者側です。罰則は50万円以下の罰金です(83条1項2号)。
証明書を持たせないと、そもそも仕事をさせてはダメなんですか?
そこがポイントです。「携帯させなければ業務に従事させてはならない」という書き方なので、証明書を持たせることが、業務に就かせる条件になっています。
補足:罰金のほか、48条1項に違反すると、免許権者から業務の停止を命じられることもあります(65条2項2号)。
誰が持つ?社長もアルバイトも全員
動画が「この制度の一番面白いところ」としているのが、対象になる人の範囲の広さです。代表者、つまり社長にも携帯させなければなりません。そのほか、非常勤の役員、パートやアルバイト、単に一時的に事務の補助をするだけの人にも携帯させます。その宅建業者の業務に従事する以上、短期のアルバイトの学生にも必要です。
社長さんくらい偉い人なら、証明書がなくても分かりませんか?
初めて会うお客さんから見れば、目の前の人が本当にその会社の社長かどうかは、名刺だけでは分かりません。立場が上でも下でも、確認したい相手という点では同じなので、例外を作らずに全員を対象にしています。
補足:この対象の範囲は、48条1項の条文に書かれているものではなく、国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(第48条第1項関係)による整理です。それによると、携帯させるべき者の範囲は、代表者(いわゆる社長)を含み、「法第31条の3第1項で定める従事者の範囲」に、非常勤の役員と、単に一時的に事務の補助をする者を加えるものとされています。
証明書に書かれていること
動画は、記載事項を次のように説明しています。従業者の氏名と生年月日、従業者証明書番号。宅建業者の商号または名称、免許証番号、主たる事務所の所在地、代表者の氏名。実際に業務に従事する事務所の名称と所在地。そして証明書の有効期間です。代表者の氏名は、従業者本人の氏名とは別に、会社の代表が誰かを一目で分かるようにするために載ります。
補足:様式は、施行規則17条が定める様式第八号です。動画で挙がった項目のほかに、写真欄があります。従業者証明書番号は、最初の2けたに雇用された年の西暦の下2けた、次の2けたに雇用された月、5けた目以下にその従業者ごとの重複しない番号を付けるきまりです。たとえば2026年4月に雇われた人なら、番号は「2604」から始まります。また、証明書の有効期間は5年以下とされています(いずれも様式第八号の備考)。
一時的に従事する人の証明書と、従業者名簿への記載
動画の最後の補足は2点です。1つ目は、単に一時的に業務に従事するにすぎない人に携帯させる証明書は、他の従業者と扱いが異なり、実際に業務に従事する期間に限って発行する、という点です。短期のアルバイトなら、働く期間の分だけの、期間限定の証明書になります。2つ目は、従業者証明書を発行した人は、すべて従業者名簿にも記載する、という点です。証明書を渡して終わりではなく、会社側でも記録を残します。
補足:この2点も、条文ではなく、先ほどの「解釈・運用の考え方」(第48条第1項関係)に書かれた取扱いです。従業者名簿そのものを備える義務は、48条3項にあります。
携帯させる義務と提示する義務は別のルール
48条1項は携帯させる義務、2項は提示する義務です。1項は、会社が従業者に持たせる義務。2項は、従業者が、求められたら見せる義務です。持っているだけでは足りず、請求されたら見せなければなりません。名札を首から下げているだけでなく、「見せてください」と言われたら、ちゃんと見せるイメージです。
請求できるのは取引の関係者です。つまり、お客さんの側から「証明書を見せてください」と言ってかまいません。自宅に訪ねてきた営業の人が「うちの会社の者です」と言ってきたときも、名刺だけで納得せず、証明書を確認するのが、この制度の正しい使い方です。
見せてくださいと言うのは、失礼になりませんか?
条文が「取引の関係者の請求があつたとき」と書いているとおり、請求するのはお客さんの側でかまいません。少しでも不安なら、遠慮なく見せてもらいましょう。
比べてみよう:従業者証明書・宅建士証・従業者名簿
動画は、ここで受験生が混同しやすいポイントとして、従業者証明書は、以前学んだ従業者名簿や、あとの章で学ぶ宅建士証とは全く別のものだと整理しています。3つを横に並べます。
| 観点 | 従業者 証明書 | 宅建士証 | 従業者 名簿 |
|---|---|---|---|
| 役割 | 従業者の証明 | 宅建士の証明 | 従業者の帳簿 |
| 根拠 | 48条1項・2項 | 22条の2〜22条の4、35条4項 | 48条3項・4項 |
| 誰が出す | 宅建業者 | 都道府県知事 | 宅建業者 |
| 置き場所 | 従業者が携帯 | 宅建士が持つ | 事務所に備えつけ |
| 見せる場面 | 関係者の請求提示 | 請求・重要事項説明提示 | 関係者の請求閲覧 |
| 有効期間 | 5年以下 | 5年 | なし10年保存 |
義務に違反したときの扱いも、3つで違います。従業者証明書は、携帯させない宅建業者に50万円以下の罰金です(83条1項2号)。宅建士証は、重要事項説明のときに提示しないと10万円以下の過料です(35条4項、86条)。従業者名簿は、備えつけない・記載しないと50万円以下の罰金です(83条1項3号の2)。
表のうち、動画で説明されたのは、従業者証明書の内容と、3つが別物であることです。宅建士証と従業者名簿の欄は、条文から補った部分です。
宅建士証とは
宅建士証は、宅建士であることを示す証で、登録をしている都道府県知事が交付します。登録を受けている者が交付を申請し(22条の2第1項)、交付の申請前6か月以内に行われる講習を受けます(試験に合格した日から1年以内に交付を受けようとする場合は不要。同条2項)。有効期間は5年で(同条3項)、申請により更新します(22条の3)。
宅建士証を見せる場面は2つです。1つは、取引の関係者から請求があったとき(22条の4)。もう1つは、重要事項説明をするとき、説明の相手方に対してです(35条4項)。重要事項説明のときは、請求がなくても提示しなければならず、違反すると10万円以下の過料です(86条)。
補足:動画は、宅建士でもある従業者は、宅建士証と従業者証明書の両方を「携帯」する、と整理しています。従業者証明書は、48条1項が宅建業者に携帯させる義務を課しています。一方、宅建士証については、宅建業法と施行規則に「携帯しなければならない」と定めた条文は見当たりません。定められているのは、請求があったとき、また重要事項説明のときに提示する義務(22条の4、35条4項)です。提示するには手もとに持っている必要があるので、実際には持ち歩くことになりますが、試験では「携帯させる義務」と「提示する義務」を分けて整理しておきましょう。
補足:宅建士証を提示するとき、住所欄にシールを貼ってから見せてもよいとされています。ただし、シールは容易にはがせるものとし、宅建士証を汚損しないように注意します(解釈・運用の考え方 第22条の4関係)。
従業者名簿とは
従業者名簿は、事務所ごとに備えつけておく帳簿です(48条3項)。従業者の氏名と、従業者証明書の番号などを記載します。取引の関係者から請求があったときは、閲覧に供します(同条4項)。動画の言葉でいえば、名簿は事務所に据え置く帳簿、証明書は従業者が実際に携帯する証明書で、役割がまったく違います。
補足:名簿に記載する「その他の事項」は、主たる職務内容、宅建士であるか否かの別、その事務所の従業者となった年月日、従業者でなくなったときはその年月日です(施行規則17条の2第1項)。名簿は、最終の記載をした日から10年間保存します(同条4項)。
具体例:運転免許と社員証でたとえる
動画のたとえ
動画は、宅建士証と従業者証明書を、運転免許と社員証にたとえています。運転免許は、運転できる資格があるかを証明するもの。社員証は、その会社の人間かどうかを証明するもの。免許だけ持っていても、その会社の人間だとは証明できません。逆に、社員証だけでは運転できる資格は示せません。宅建士証は宅建士であることを、従業者証明書は従業者であることを示す、別々の書類です。1枚にまとめて代わりにすることはできません。
まとめ
- 48条1項:宅建業者は、従業者に証明書を携帯させなければ業務に従事させられない。違反は50万円以下の罰金。対象は社長も非常勤の役員もパート・アルバイトも全員。48条2項:取引の関係者の請求があれば提示する
- 証明書には、従業者の氏名・生年月日、証明書番号、業者の商号・免許証番号・主たる事務所の所在地・代表者の氏名、働く事務所の名称・所在地、有効期間を記載する。一時的な従事者の証明書は従事する期間に限って発行し、発行した人は従業者名簿にも記載する(運用)
- 従業者証明書・従業者名簿・宅建士証は別物。宅建士でもある従業者は、聞かれた内容で使い分ける。宅建士証は、請求があったときと重要事項説明のときに提示する
試験ではここに注目
- 証明書を携帯させる義務は宅建業者にあり、違反すると業者が50万円以下の罰金。提示する義務は従業者にあり、請求できるのは取引の関係者
- 携帯させる範囲は、代表者・非常勤の役員・パート・アルバイト・一時的な事務の補助者まで含む。「社長は除く」「常勤の従業者だけ」は誤り
- 従業者証明書で宅建士証は代用できず、宅建士証で従業者証明書も代用できない。宅建士でもある従業者は両方を使い分ける
- 宅建士証の有効期間は5年(22条の2第3項)。重要事項説明では、請求がなくても宅建士証を提示する(35条4項)。従業者証明書の提示は請求があったとき
- 従業者名簿は事務所ごとに備えつけ、取引の関係者の請求があれば閲覧に供する。従業者証明書は従業者が携帯する。名簿と証明書を取り違えない
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