時事系問題の要点
経済学・経済政策 第47回
「試験が始まってすぐの最初の2、3問目、いきなり何のヒントもない時系列のグラフが出てきて、これ何を表してますかみたいな問題。あれ本当に焦りますよね」。動画は、こんな共感から始まります。このページでは動画の流れにそって、バブル景気、リーマン・ショック、東日本大震災、新型コロナの流行という4つの年と、その年に動くグラフの見分け方をまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。
最初のグラフ問題で焦らないために
「試験が始まってすぐの最初の2、3問目、いきなり何のヒントもない時系列のグラフが出てきて、これ何を表してますかみたいな問題。あれ本当に焦りますよね」。動画はこんな共感から始まります。中小企業診断士1次試験の経済学・経済政策の、いわゆる時事系の問題です。
動画では、日頃から経済関連のニュースに触れておきましょう、とよく言われるけれど、大切なのは「ニュースを見るだけでなく、それをどう試験に生かすか」だと話します。今回のテーマは、特に未知のグラフが出たときにどう対応するかです。
動画の答えはシンプルです。近年の主要な出来事が起こった年と、その影響をしっかり押さえておくこと。それがグラフを読み解く最大の糸口になる、と説明します。単なる年の暗記ではなく、経済のダイナミズムを読み解くストーリーとして理解する。グラフが大きく動くときには必ず理由がある、というわけです。
動画が挙げる4つの年
動画が転換点として取り上げるのは、次の4つです。年は動画の説明のとおりに並べています。
それぞれの年に何があり、どのグラフがどう動くのか。ひとつずつ見ていきましょう。
1986〜91年:バブルと崩壊
最初は、日本の経済グラフを語るうえで外せない極端な上昇の時期、バブル景気です。動画では1986年から1990年までの期間としています。その起点が、1985年のプラザ合意です。
プラザ合意って、要するに円高に誘導するって話ですよね。円高になれば海外のものが安く買えてハッピー、みたいな単純な話には聞こえないんですけど。
消費者目線ならそう感じるかもしれません。ただ、当時の日本は自動車や家電を世界に輸出して稼ぐ、超強力な輸出主導型の経済でした。そこに急激な円高が来ると、海外で日本の製品が割高になって売れなくなります。
ここで円高の影響を、自作の数字で確かめてみます(動画にない設例で、実際の為替レートではありません)。1ドル=240円のとき、24,000円の製品は現地で100ドルです。1ドル=160円まで円高が進むと、同じ24,000円を受け取るには150ドルの値札が必要になります。値札を100ドルのままにすれば、受け取る円は16,000円に減ります。どちらにしても輸出企業には逆風です。
動画では、このため政府や日本銀行は円高による不況を強く懸念し、それを防ごうとして金融緩和策を実施した、と説明します。金利を下げて、企業がお金を借りやすい環境を作ったのです。
ではなぜ、それがバブルにつながったのか。動画の説明はこうです。企業は安い金利でお金を借りられるようになりましたが、円高で輸出が厳しく、本業の設備投資には消極的になります。行き場を失った大量のお金は、値上がりを続ける不動産や株式市場に、投機資金として流れ込んでいきました。本業ではなくマネーゲームの方にお金が入った結果が、バブル景気だ、というストーリーです。
(補足:動画の説明は流れをつかみやすくした単純化です。バブルの要因は金融緩和だけではなく、複数の要因が重なったと説明されるのが一般的で、資料により整理の仕方が異なります。また、バブル景気の期間も、動画の「1986年から1990年」とは別の区切り方をする資料があります。試験では、問題文や資料に示された区切りに従ってください。)
終わり方も、自然に収まったわけではない、と動画は言います。政府や日本銀行が強烈なブレーキを踏みました。地価や株価の高騰を抑えるために、不動産融資の規制を行い、公定歩合も引き上げたと説明されています。聞き手は、銀行に「不動産にお金を貸すな」と直接制限をかけたわけですね、と言い換えます。これをきっかけに1991年にバブルは崩壊し、そこから現在に至るまで長期にわたって日本の景気が低迷することになった、というのが動画の流れです。
(補足:日本で1990年に行われた不動産向け融資の規制は、一般に、大蔵省の通達「土地関連融資の抑制について」(1990年3月)による、いわゆる総量規制を指します。不動産業向けの融資の伸びを、貸出全体の伸び以下に抑えるもので、1991年12月に解除されました。公定歩合(日本銀行が金融機関に貸し出すときの基準金利。2006年に「基準割引率および基準貸付利率」へ名称変更)は、1989年5月から1990年8月にかけて2.5%から6%まで5回引き上げられました。本文では、動画の言葉として「不動産融資の規制」とだけ書いています。なお、株価は1989年末に最高値をつけたあと1990年から下がり始めており、「1991年に崩壊」は景気後退や地価も含めた大まかな区切りです。内閣府の景気基準日付では、この景気拡張は1986年11月の谷から1991年2月の山までとされています。)
(補足:「現在に至るまで」は、動画が作られた時点の言い方です。その後の景気の評価は資料や論者により異なります。ここでは動画の言葉として引用しています。)
ここからグラフ問題への使い方が出てきます。動画によれば、1986年から91年にかけて異常な上昇の山を作り、91年以降に急降下してそのまま長期低迷している線があれば、高い確率で不動産や株価に連動する指標だと分析できる、とのことです。聞き手は、国内の政策で作られた山と谷ということですね、とまとめ、講師は「はい」と受けます。
(補足:「高い確率で」とあるとおり、これは目安です。地価・株価以外にも似た形を示す系列がありうるため、他の選択肢と合わせて判断する必要があります。)
2008年:リーマン・ショックは景気に敏感なリトマス試験紙(聞き手のたとえ)
次は、海の向こうからやってきた巨大なショックです。動画は、2008年のリーマン・ショックを取り上げます。米国のサブプライムローン問題をきっかけとした世界同時不況で、景気が急激に悪化し、株価が大きく下落し、GDPもマイナス成長になった、という説明です。
ここで聞き手が、もっともな疑問を出します。サブプライムローンはアメリカの住宅ローンの話なのに、なぜ日本のGDPをマイナスにするほどの威力があったのか。日本のバブル崩壊と違って、震源地はアメリカです。
動画の答えは、実体経済への波及です。金融機関の直接的なダメージというより、世界同時不況によって世界中の企業や消費者が一斉に買い物を控え、需要がパタッと止まった。そのため日本の強力な輸出品、車や家電が海外で売れなくなり、GDPがマイナス成長に引きずり込まれた、という説明です。
(補足:リーマン・ブラザーズの経営破綻(米連邦破産法11条の申請)は2008年9月15日です。動画は実体経済への波及を強調していますが、金融市場の動揺が株価などに及んだ面も資料では指摘されます。動画の説明は、輸出を通じた波及に絞った単純化と考えるのがよいでしょう。)
グラフ問題での使い方は、次のとおりです。2008年に鋭い谷がポコッとへこんでいるかどうかを見る。大きく反応しているなら、そのデータは景気の影響を非常に受けやすい性質のものだと判断する強力な根拠になる、と動画は言います。聞き手は、景気に敏感なリトマス試験紙のようなものですね、とたとえ、講師は「試験対策としては絶対に外せないポイントです」と応じます。
2011年:物理的なショックでは、動くグラフが変わる
第3のポイントは、景気や金融システムの話ではなく、もっと物理的なショックです。2011年の東日本大震災と、それに伴う福島第一原子力発電所の事故です。
動画によると、大きく動いたのは化石燃料の輸入額です。原子力発電が止まった分のエネルギーを火力発電で補う必要が出て、大量の燃料を海外から買わざるを得なくなりました。聞き手は、これは投資家のパニックのような心理の問題ではなく、物理的に避けられない大きな出費だった、と言い換え、講師は「はい」と受けます。その結果、経常収支のうち貿易・サービス収支が赤字に転落した、と説明しています。
聞き手は「ずっと黒字だった日本が貿易赤字になった」と言い、講師は「国の収支の構造そのものが強制的に変わってしまった非常に重要な出来事です」と応じます。
(補足:動画は「貿易・サービス収支」と言っていますが、一般には貿易収支(モノの輸出入)の赤字化として語られることが多く、資料により表現が異なります。また、経常収支は貿易以外に所得収支なども含むため、貿易収支が赤字になっても経常収支全体が赤字になるとは限りません。実際に、2011年の日本の経常収支は黒字でした(財務省の速報で約9.6兆円)。統計により、貿易赤字は1980年以来31年ぶり(貿易統計)、または1963年以来48年ぶり(国際収支統計)と言われます。「ずっと黒字」という部分も、動画のおおまかな言い方として受け取ってください。)
グラフ問題への使い方は、2011年を境に急激にマイナス、つまり赤字に沈み込んでいる線があれば、貿易や燃料輸入に関連する指標だと見抜ける、というものです。聞き手は「ショックの種類が金融から物理的なものに変わったから、動くグラフも株価やGDPから貿易収支に変わるんですね」と整理し、講師も、その本質を理解しておくと選択肢を絞り込めると応じます。原因が変われば、反応するメーターも変わる、というわけです。
2020年:沈む線と、跳ねる線
2011年から約10年後、今度は世界中のあらゆる産業を強制的に変えた出来事です。2020年の新型コロナウイルス感染症の流行で、緊急事態宣言などもあり、飲食や観光をはじめ、経済活動がかつてないほど制限されました。
動画は、これまでの危機と決定的に違うグラフの動きに注目します。多くの産業活動のグラフはどん底に向かうのに、国が対策に使うお金、つまり歳出のグラフだけは真上に跳ね上がるという点です。企業への給付金など、ダメージを受けた産業への支援策として歳出が増えた事実が、グラフにはっきり現れます。
つまり2020年のところでグラフが下に沈んでいるのか、上に跳ね上がっているのかを見るだけで、そのデータが「ダメージを受けた側の指標」か「対策として動いた側の指標」かが判別できる。動画は、この動きの向きを確認することは非常に強力な武器になる、と言います。
(補足:動画は歳出の増加を、支援策として国が使ったお金の動きとして語っています。ただし線が上に跳ねるのは歳出に限りません。たとえば感染対策に関連して需要が伸びた分野の指標など、ほかにも上向きに動く系列はありえます。向きは手がかりのひとつで、決め手と断定しないほうが安全です。)
試験会場での使い方と、年の覚え方
4つの年を実際の試験会場でどうツールとして使うのか。動画が挙げる鉄則は、問題を解く際に、大きな変化があった年に、グラフが大きく変化しているのかどうかを確認することです。景気に大きなマイナスの影響を与える出来事があった年の動きを見れば、そのデータが景気の影響を受けやすいのか受けにくいのかを、論理的に判断できます。
では、年をどうやって記憶に定着させるのか。動画は、無機質な数字として暗記しようとすると忘れてしまうので、主要な出来事が起こった年を、そのときの自分の年齢や思い出深いエピソードに関連付けることをすすめます。1991年や2008年と聞いたときに、自分は何歳だったか、何をしていたか。自分の人生のタイムラインと重ねるのです。
動画の中では、話し手の一人が、2008年はちょうど高校卒業ごろで、周りの大人の就職の話を聞いてすごく不安になったのを覚えている、と自分の記憶を語ります。聞き手が、ただの波線ではなく、自分が生きてきた時代の波だと思えれば、パニックにならず落ち着いて取り組める、と言い、講師も、個人的な感情や記憶と結びつくと忘れにくくなり、グラフがより身近なものに見えると続けます。
(補足:動画は、最初の時事系の問題は運任せの丸暗記ではなく「論理的なパズル」だと言います。ただし実際の出題は、ここで挙げた4つの年だけで解けるとは限りません。動画の鉄則は、あくまで糸口を見つけるための考え方として使うのがよいでしょう。)
最後の問いかけ:全く動かないグラフは何を意味する?
動画は最後に、視聴者へ1つの問いを残します。経済上大きな出来事があった年には、多くのグラフが上下に激しく動く。では、試験本番で、2008年や2020年のような大混乱の年でさえ全く微動だにせず、平坦なままのグラフに出会ったら、それは何を意味しているのか。どんな危機にも左右されない、景気の影響を受けにくいデータとは何なのか、という問いです。
動画自身は、この問いの答えを示していません。「次にあなたが何かの経済グラフを見る時、ぜひあなた自身の目でその答えを探求してみてください」と締めくくっています。
(補足:ここは動画が答えを出していない部分なので、自分なりの考えとして書きます。動画の論理にそえば、大きな出来事の年にも動かない線は「景気の影響を受けにくい性質のデータ」と読むのが筋です。具体的にどんな系列が当てはまるかは、グラフの中身を見て判断する必要があり、ここでは断定しません。)
まとめ
動画の内容を、動画の言葉にそって振り返ります。時事系のグラフ問題では、主要な出来事の年を物差しにして、グラフと対話するように読み解きます。
- 1986〜91年(バブルと崩壊):動画では、金融緩和で行き場を失ったお金が不動産・株に流れ、その後の規制で崩壊した、という流れ(聞き手のまとめは「国内の政策で作られた山と谷」)。地価・株価に連動する指標を示唆する。
- 2008年(リーマン・ショック):動画では、世界同時不況が実体経済に波及。この年に大きく動くかは、景気の影響を受けやすいかの手がかり。
- 2011年(東日本大震災):動画では、燃料の輸入額が増え、貿易・サービス収支が赤字に。物理的なショックでは、動くグラフが変わる。
- 2020年(新型コロナ):動画では、産業活動は沈み、歳出は跳ね上がる。動きの向きで、ダメージを受けた側か対策側かを見分ける。
年の覚え方は、自分の年齢や思い出と結びつけること。最後の「全く動かないグラフは何か」という問いは、景気の影響を受けにくいデータとは何かを自分で考える宿題になっています。
(補足:この回は時事系のため、統計の数値・年・直近の出来事は、動画の説明として書きました。動画の制作時点より後の出来事は含まれていません。令和8年4月1日現在の事実として断定するものではなく、内容は古くなりうるので、最新の出題範囲や資料で確認してください。)
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