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中小企業診断士 1次試験

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企業経営理論から中小企業政策まで、1次試験の論点を科目別の講義動画にまとめています。過去問の解説も1問ずつそろえています。

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課税の効果と弾力性

経済学・経済政策 第6回

経済学・経済政策・ミクロ経済学 00610分26秒2026年3月12日公開

「中小企業診断士の一次試験に向けて学習しているあなた、ミクロ経済学の無数のグラフや数式がなかなかとっつきにくいですよね」。動画はこんな問いかけから始まります。このページでは動画の流れにそって、課税の3つのパターンと供給曲線の動き、弾力性の考え方、同じ直線上での弾力性の違い、短期と長期の違いをまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。

ミクロ経済学は「暗記」だけの科目ではない

ミクロ経済学は、グラフや数式が次々に出てきて、とっつきにくいと感じやすい分野です。動画は、ただの暗記科目として片づけてしまうのはもったいない、と話を始めます。価格の決まり方や税の負担のしくみを、筋道を立てて理解するための道具になるからです。

この回のミッションは2つです。1つめは課税の効果、つまり税がかかると供給曲線がどう動くか。2つめは弾力性、つまり消費者が価格や所得の変化にどれくらい敏感に反応するか、です。

課税の効果:3つの税のパターン

動画では、課税の効果を大きく3つのパターンに分けます。聞き手が挙げる例は、酒税のような従量税、消費税のような従価税、固定資産税のような定額税です。

税の種類動画で挙げた例供給曲線
従量税酒税上へ平行移動
従価税消費税傾きが急になる
定額税固定資産税変わらない

(補足:実際の税制は、この3分類にきれいには収まりません。たとえば固定資産税は、課税標準(原則として固定資産課税台帳に登録された価格)に税率(標準税率1.4%、地方税法349条・350条)を掛けて税額を決める仕組みです。ここでは「販売量にも価格にも関係なく、一定額がかかる税」のたとえとして使われている、と考えてください。)

従量税:そのまま上へ平行移動

従量税は、販売量に比例して1単位あたりt円かかる税です。縦軸が価格、横軸が供給量のグラフでは、供給曲線は税額の分だけ、そのまま上に平行移動します。

理由は限界費用で説明できます。動画の流れはこうです。課税後の費用は、元の費用に税金を足した C(x)+tx になります。限界費用は費用を微分したものなので、課税後の限界費用は、元の限界費用 C′(x) にtを足した C′(x)+t です。元のグラフに一律でtが足されるので、平行移動になります。

設例:自作の数字で確かめる

費用が C(x)=x² なら、限界費用は 2x です。1単位あたり3円の従量税がかかると、限界費用は 2x+3 になります。x=5 なら10円が13円、x=10 なら20円が23円で、どちらも3円だけ上がります。

従価税:価格の割合だから傾きが変わる

従価税は、価格に比例する税です。動画によると、課税後の供給曲線は、元の供給曲線を縦方向に(1+t)倍したグラフになり、平行移動ではありません。課税前の価格pが、課税後は p(1+t) になるため、結果として傾きが急になります。(補足:ここでは、税抜価格にt%を上乗せする税を想定しています。)

価格が高いほど税額も大きくなるので、グラフの右のほうへ行くほど上に引っ張られる、というイメージです。

設例:自作の数字で確かめる

同じ限界費用 2x に、tが0.2(20%)の従価税がかかるとします。課税後は 2x×1.2=2.4x です。x=5 なら10円が12円(2円アップ)、x=10 なら20円が24円(4円アップ)。価格が高い右側ほど、上がり幅が大きくなります。

従量税従価税数量価格数量価格+t課税前課税後課税前課税後そのまま上へ平行移動価格が(1+t)倍で傾きが急に
従量税は上へ平行移動、従価税は傾きが急になります。

動画は、試験本番で「平行移動か、傾きの変化か」を取り違えやすいと指摘し、語呂合わせを紹介します。従価の「か」は傾きの「か」というものです(動画の聞き取りにくい部分は、前後の説明から補いました)。従量税が平行移動、従価税が傾きの変化、と結びつけるのが狙いです。

従価の「か」が傾きの「か」なら、迷ったときに思い出しやすいですね。

そうですね。ここは混乱しやすいので、語呂合わせで固めておくのが実用的です。

定額税:供給曲線は動かない

販売量にも価格にも関係なく、一定額がかかる定額税はどうなるでしょうか。動画では、直感に反するかもしれませんが、供給曲線は変化しないと説明されます。税金を取られるのにグラフが動かない、と聞き手も驚いています。

え、税金を取られるのにグラフが動かないんですか?なんだか不思議な気がします。

ここでも限界費用が鍵になります。固定額の税金がかかった場合を式で見てみましょう。

ここでも限界費用が鍵です。定額tがかかると課税後の費用は C(x)+t で、xがつきません。微分すると定数tは消えるので、限界費用は課税前と変わりません。追加で1個作るコストに影響しないので、供給曲線は動かない、という流れです。(補足:限界費用は変わらないので供給曲線は動きませんが、固定費は増えるため、利潤は減ります。)

ただし動画は、ここを試験の引っかけポイントだと言います。限界費用は変わらないけれど、平均費用は上方にシフトする。この違いを正確に押さえておく、というわけです。

数量費用平均費用(課税前)平均費用(定額税の後)限界費用(課税前も後も同じ)
限界費用は動かず、平均費用だけが上へ移ります。ずれは数量が少ないほど大きくなります(概念図)。

(補足:動画では「平均費用は上方にシフト」とだけ説明されます。細かくいえば、平均費用は C(x)/x+t/x になるので、上がる幅は t/x です。つまり一定の幅の平行移動ではなく、数量が少ないほど大きく上がります。設例で、C(x)=x²、定額税30円とすると、平均費用は x=5 で5円から11円(6円アップ)、x=10 で10円から13円(3円アップ)です。)

試験の注目点(動画の整理)

  • 動画では、従量税は平行移動、従価税は傾きの変化、定額税は限界費用が変わらず平均費用は上がる、と整理されます。
  • 動画は、平行移動か傾きの変化かを取り違えやすい点と、定額税で限界費用と平均費用を混同しやすい点を、引っかけとして挙げています。

弾力性:消費者の反応度をはかる

話題は、供給側から消費者の反応へ移ります。動画は、所得や価格の変化が需要量に与える影響の度合いを数値にしたものが弾力性だと説明します。大きく分けて、所得の変化に対する需要の所得弾力性と、価格の変化に対する需要の価格弾力性の2つです。

需要の所得弾力性

所得が1%変化したとき、需要が何%変化するかを示すものです。動画では、需要の変化分ΔDを所得の変化分ΔMで割り、M÷Dを掛ける式として紹介されます。式にすると次のとおりです。記号は、D=需要量、M=所得、P=価格、Δ=変化分です。

所得弾力性 = (ΔD÷ΔM) × (M÷D)

設例:自作の数字で確かめる

所得が400万円から440万円(10%増)になり、需要が50個から56個(12%増)になったとします。所得弾力性は 12%÷10%=1.2 です。

(補足:弾力性を表す記号は、動画では聞き取りにくい箇所があったため書いていません。記号は教材によって異なります。)

需要の価格弾力性:頭にマイナスをつける

価格が1%変わったとき、需要が何%変わるかを示すものです。動画が強調する大事なルールは、式の頭にわざとマイナスをつけることです。通常は価格が上がると需要は減るため、そのまま計算すると値がマイナスになります。そこで値を正にして扱いやすくするため、マイナスをつけて打ち消している、と説明されます。

価格弾力性 = −(ΔD÷ΔP) × (P÷D)

設例:自作の数字で確かめる

価格が100円から110円(10%上昇)になり、需要が200個から190個(5%減少)になったとします。価格弾力性は −(−5%)÷10%=0.5 です。

グラフで見る弾力性:傾きは逆に読む

需要曲線のグラフで考えると、動画では、傾きが急な曲線は弾力性が小さく、価格を変えても需要があまり変わらない状態、と説明されます。逆に傾きが緩やかな曲線は弾力性が大きく、少しの価格変化で需要が大きく動く状態です。急な傾きほど反応が鈍い、と覚えるのがよい、という話でした。

需要量D価格P急:弾力性は小さい緩やか:弾力性は大きい
同じ点で比べると、急な曲線は弾力性が小さく、緩やかな曲線は大きくなります。

ここで動画が注意を促すのが、縦軸と横軸の関係です。縦軸が価格P、横軸が需要Dなので、数学で習う「横軸の変化に対する縦軸の変化」とは見方が逆になる、という点です。弾力性は「価格が変わったときの需要の変化」を見るので、グラフでは横軸の動きを縦軸の動きで割るイメージになり、錯覚しやすいと動画も言っています。

(補足:「傾きが急だと弾力性が小さい」は、同じ点(同じ価格・同じ需要量)で2本の曲線を比べるときの話です。弾力性は、傾きの逆数にP÷Dを掛けたものとして表せるので、点が違えば同じ曲線でも値が変わります。次の話がまさにそれです。)

同じ直線でも、場所によって弾力性は違う

直線なら傾きはずっと一定だから、弾力性も同じなんじゃないですか?

実は違うんです。直線の需要曲線上であっても、地点によって弾力性は異なります。

動画は、ここで問いを出します。1本の直線の需要曲線上なら、弾力性はどこでも同じでしょうか。聞き手は「傾きが一定だから同じでは」と答えますが、講師は「実は違う」と訂正します。

理由は、式の後半にあるP÷Dです。グラフの左上は、需要Dが小さく価格Pが高い状態なので、P÷Dが大きくなり、弾力性も大きくなります。逆に右下は、Dが大きくPが低いのでP÷Dが小さく、弾力性も小さくなります。

設例:自作の数字で確かめる

需要曲線を D=100−2P とします。このとき弾力性は 2P÷D です。P=40 のとき D=20 で弾力性は4、P=25 のとき D=50 で1、P=10 のとき D=80 で0.25になります。同じ直線なのに、4から0.25まで変わります。

需要量D価格P大きい(4)ちょうど1小さい(0.25)
同じ直線でも、左上は弾力性が大きく、右下は小さくなります(数値は本文の設例)。

(補足:この設例で弾力性がちょうど1になるのは、直線の真ん中の点です。動画では触れていません。)

短期と長期:時間がたつと弾力性は大きくなる

弾力性は、時間の長さでも変わります。動画の例はガソリン代の高騰です。聞き手は、短期的には明日から急に車に乗らないわけにいかず、生活のために消費は減らしにくいので、弾力性は小さいと答えます。講師はそれを受けて、長期ではどうなるかを問います。

何年も高いままなら、次に車を買い換えるときに燃費のいい車にでき、消費を大きく減らせます。つまり弾力的に反応できるようになります。動画は、ほとんどの財では需要の価格弾力性は短期より長期のほうが大きくなる傾向がある、と説明し、この違いは試験でもよく問われると述べています。

需要量D価格P短期:急(小)長期:緩やか(大)
ほとんどの財では、長期のほうが需要曲線は緩やかになる(カッコ内は弾力性の大小)、と動画は説明します。

明日から急に車に乗らないわけにはいかないので、短期的には消費は減らしにくいです。つまり弾力性が小さいですね。

その通りです。しかし長期的にはどうでしょうか。

試験の注目点(動画の整理)

  • 動画では、需要曲線の傾きと弾力性の関係、同じ直線上でも場所で弾力性が変わること、短期と長期の違いが、押さえどころとして挙げられています。
  • 動画は、短期と長期の違いは試験でもよく問われる重要なポイントだと述べています。

(補足:「長期のほうが大きい」はあくまで傾向で、すべての財に当てはまるわけではないとされています。たとえば自動車のような耐久財では、価格が上がると買い替えを先送りできるため、長期より短期のほうが弾力的になることがあるとされています。)

まとめ

動画の整理

  • 課税の効果は3パターン。従量税は供給曲線が上へ平行移動、従価税は(1+t)倍で傾きが急に、定額税は供給曲線が変わらない(限界費用は変化なし)。
  • 定額税では限界費用は変わらないが、平均費用は上方にシフトする。この違いが引っかけになる、と動画は述べる。
  • 弾力性は、需要の所得弾力性と価格弾力性の2つ。価格弾力性は式の頭にマイナスをつけて値を正にする。
  • 需要曲線の傾きが急だと弾力性は小さく、緩やかだと大きい。縦軸が価格なので、数学の傾きの見方とは逆になる。
  • 同じ直線上でも、左上は弾力性が大きく、右下は小さい。式の後半のP÷Dが理由。
  • 短期は弾力性が小さく、長期は大きくなる傾向がある。

動画の最後には、問いかけがあります。もし自社の製品が、短期的には価格弾力性が小さいが、長期的には極めて大きくなるとわかっていたら、5年間の価格戦略をどう立てるか。目の前の利益を取るか、将来の顧客離れを防ぐか。試験の知識を現実のビジネスにつなげて、自分なりの答えを考えてみてください。

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